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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第八章 独立国家リターニア

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第八十六話 王宮と、ファイスと。

騎士たちは、手際よくドラゴンを解体していく。

硬いウロコに苦戦をしていたが、手慣れたものだ。


「君たちは——この国の民ではないな?」

騎士たちを指揮しながら、ウォラフは俺に言った。


「はい。何で分かったんですか?」

俺は答える。


「この国の高位指揮者は、ほとんど王宮付きだ。ドラゴンを倒すほどの式者なら、私たちも把握してるはずだ。──もっとも、そんな式者は……今のリターニアにはいないがな」

ウォラフは答えた。


「俺たち、王宮行っても大丈夫なんですか?その……リターニアは他国と距離を取ってるって聞いたんで」

俺は恐る恐る聞いた。


「命の恩人ともあれば、話は別だ。礼には礼を以て尽くす。それがリターニアの流儀だ」

ウォラフは答えた。


どうやら、義理堅い国民性のようだ。


「なんでみんなはドラゴンと戦ってたの?」

キセキが聞いた。


「つい最近、近くの集落がドラゴンによって壊滅してな。国として討伐にやってきた。——だが、想像以上だった」

ウォラフは悔しそうな顔をする。

「式術だけでなく、剣でも——君たちの方が上だった。

我々はリターニアを背負っているというのに……不甲斐ない」


騎士としてのプライドというやつだろう。

唇を噛んでいる。

「……ドラゴンは大体解体できたようだ。先導する。ついてきてくれ。馬車はあるのか?」

ウォラフの問いに、俺は頷いた。


俺たちは馬車に乗ってウォラフたち騎兵団について行った。

騎兵団はアルカディアにもいたが、どちらかと言えば治安維持が中心だった。


昔は魔獣討伐もしていたらしいが……何しろ魔獣の被害なんてほとんど聞かない。


だが、リターニアではそれが日常なんだろう。


馬車で一時間ほど。だんだんと集落が見える。

街という規模ではない。集落。村。

そんな表現が正しいだろう。


田園に、井戸。自給自足の生活のようだ。

騎士団が通るたびに、子どもたちが声を上げる。

ウォラフは手を振って応えていた。


王宮に着くと、ウォラフは兜を脱ぎながら言った。

「リターニアでは、騎士団は子どもたちの憧れなんでな。君たちに助けられた立場としては恥ずかしい限りだが、声援には応えてやらないと」

そのまま、王宮の中へ進んでいく。


王宮の作りは──テオロッドのそれに似ていた。

懐かしさを覚える。


このところ、最新科学の建物ばかり見ていたので、落ち着くな。


応接室のような場所に通されると、一番奥に王らしき人が座っていた。


「ガラム王。こちらの方々がドラゴンを討伐してくれました」

ウォラフが報告する。


王は、ゆっくりとこちらを見る。

立ち上がると、頭を下げた。


「リターニア国王として、心より感謝を申し上げる。

ガラム=リターニアだ」

そう名乗ると、微笑みを浮かべた。


紫の髪。立派な口髭。

いわゆる王のたたずまいだが、その表情に──どこか見覚えがある気がした。


「ユグラシアより来ました。十八将、エイナ=ウィザロッドです」

俺が回答に困っていると、エイナが前に出て名乗った。

その方が、通りがいいと判断したのだろう。助かる。


「正直だな。ユグラシアから、ということは密航ということ。

──そうまでして、どうしてリターニアに」

少し目が動いた気がしたが、表情は変えない。

さすが、王ということだろうか。


「紫帝──ファイスに会いに来ました。ノーザリィへ向かう途中でした」


「……なるほど。だとしたらここに立ち寄ったのは正解だ」


「どういうことです?」


「ノーザリィまで行く必要はない。──王宮でファイスと交信できるからだ」


……まさかの近道発見だ。


「本来、他国の人間に交信施設を使わせることはないが──君たちはドラゴンを討伐した英雄だ。その恩に報いることとしよう」


「それは、大変ありがたいお話ですね。──ガラム王。一つ聞いてもいいですか?」

エイナが言った。ガラムは頷く。

「リターニアは独立国家を貫いているのに、なぜファイスの存在を許容しているのでしょうか?ファイス──紫帝は、アーカーシャ帝国に任命されています」


エイナの質問に、ガラムは少し顔をしかめた。

「うむ。その点については何とも回答が難しいが……リターニアは、ファイスを紫帝として見ていない。国家の行く末を指示する──いわば、指南役と捉えている」


「指南役?」


「これまで、ファイスは数々の災害を予知してきた。私が王になるより、はるか昔からだ。古来、リターニアはファイスに助けられてきているのだ。

ユグラシアとの国交を断ったのも……ファイスの助言だ」


……どういうことだ?

アーカーシャ帝国に属するはずの紫帝──ファイスが、リターニアとユグラシアを分断している?


「……分かりませんね。なぜそんなことをするんでしょう。紫帝は──アーカーシャ帝国の維持や発展に寄与することが責務のはずです」

エイナが、指を顎に当てた。


「真意は分からない。だが──この国は何百年もそうしてきた。ファイスがいつから存在するのかは分からない。私も直接会ったことはない」


「直接聞いてみるがいい。紫の式者はいるか?」


「──半分なら」

キセキが手を上げた。

その髪の色を見て、王は目を細めた。


「その髪の色は……生まれつきか?見たことのない色だ。隣の君も。

ユグラシアでは普通なのか?」

ガラムはキセキと俺の髪の色を見比べている。


「ユグラシアでも見たことはありません。話すと長くなるので、まずファイスに合わせてもらえませんか」

エイナが事務的に話した。


助かる。

説明が大変だし、俺たち自身もよく分かっていない。


王は立ち上がり、ついてくるように言った。


何千年の悠久の時を生きると言われる、紫帝ファイス。


一体──どんなやつなんだろうか。


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