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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第七章 海洋国家シードラ

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第八十一話 プルークの友、ヤンセン。

フェリーを降りて、更に車で半日。

俺たちはシードラの北西部に来ていた。

そこには——かつて港町だったであろう、ゴーストタウンがあった。


「人が住んでる気配がないぞ……」

俺は呟いた。


「ここに船を持っているやつがいるのか?」

ラウルが聞いた。


「師匠に一度連れて来られたことがあります。師匠の友人で海の相談相手がここに住んでいました」

エイナが答える。


廃墟の中を歩いていく。

少し肌寒い気がする。


「なんか、お化けでも出そうだね」

キセキが言った。


「出てきたら斬ってやるわよ」

メイが剣を握る。


……なんでも斬れると思ってるのかこいつは。


人気のない町を歩くと、一軒だけ電気のついた家が見えた。


メイがドアをノックする。

中から、立派な白髭を蓄えた老人が出てくる。


「誰だ」

訝しげな顔をする。


「以前、プルーク様と一緒に訪れた、エイナです。

ヤンセンさん」


「……ああ。あの時のお嬢ちゃんか。プルークはどうした?」


「先日、息を引き取りました。老衰です」


「……そうか。まぁ、お互い生きすぎたからな。とりあえず、中に入れ」

ヤンセンは、俺たちを招き入れた。

人嫌い、というわけではないようだ。


なぜこんな場所で暮らしているのだろう。


ヤンセンは、俺たちにお茶を淹れてくれた。


「こんな場所に何の用だ?わざわざプルークの死を伝えに来ただけでもないだろう」


「はい。単刀直入に言えば、船をお借りしたいんです」

エイナが言った。


「船……?どこにいくつもりだ」


「リターニアへ。紫帝に会いにいくつもりです」


「俺の持っているのは帆船しかない。

リターニア大陸は目と鼻の先だが、潮流が厳しい。

素人には渡れないぞ」

ヤンセンが答えると、ラウルが言った。


「おいおい。爺さん。俺を舐めてもらっちゃ困るぜ」


「なんだ?小僧。船乗りか?日焼けをしているが」


「三歳から船に乗ってる。海の風も潮の流れも体が覚えてる」

ラウルは胸を叩いた。


「……どうせ自動航行の機械船だろう。帆船は、勝手が違う。帆の張り方、風がない時の操舵。奥が深いんだ。俺もまだまだ修行の身だ」

ヤンセンがため息をつくと、ラウルが立ち上がり、胸をドン、と叩いた。


「俺は帆船の専門家だ。証拠を見せてやる。船を見せてくれ」


ラウルがいつになく生き生きしている。

——この所、車にフェリーと、機械の乗り物続きだった。

心から帆船に飢えていたのだろうか。


俺たちは、港に停めてあるというヤンセンの船に向かった。

ラウルとヤンセンは、船を見ながら何やら話している。

その横で、キセキがメモを書きながら色々と計算している。


俺は、それを見ながらエイナに聞いた。

「ヤンセンさんは、プルークさんの友達なのか?」


「友人であり、相談役でしょう。海の流れは、科学の計算よりヤンセンの方が正確だ、と言っていましたから。

師匠が心を許していた、数少ない方です」

エイナが言った。


「ねぇ、なんか盛り上がってるわよ」

メイがラウルたちを指差した。


そちらを見ると——ラウルとヤンセンが、取っ組み合って殴り合っていた。






「ヤンセンさん。あなたはもう百五十歳でしょう。恥ずかしくないんですか」

エイナはラウルとヤンセンにヒーリングをかけながら言った。

切れた方から流れる血が止まる。


「うるせえ。男には殴り合わなきゃわからないこともあるんだ」

ヤンセンは笑ってそう言った。


「その点は同意だ。海の男は言葉じゃなくて拳で話すんだよ」

ラウルの腫れた頬が引いていく。


「……何でいきなり殴り合いになるんだよ。ラウル、要因はなんだ?」

俺は聞いた。


「帆の張り方と船体のバランスを見て直す所を教えてやったら、いきなりヤンセンがブチギレたんだよ。やられたから殴り返しただけだ」


「小僧のくせに生意気な。俺がどれだけ苦労して帆船を作ったと思ってる」

ヤンセンが言い返す。


「あ?どうせ本でも見ながら見よう見まねで作ったんだろ?機械船ばっかり乗ってるのはどっちだよ、って話だな」


「なんだと?もう一度やるか?」

ラウルとヤンセンが立ち上がる。

すると、キセキが呟いた。


「まぁ、二人とも間違えてるけどね」


「あぁ!!?」

海の男が、二人揃って声を上げる。


「二人の話を聞いてたけど、船の大きさとか重心じゃなくて、形そのものの問題だと思う。安定性を重視するならこんな感じ、速度を重視するならこんな感じ」

キセキは、メモ帳に書いた絵を見せる。


「机上の計算だけど、大きくズレてはいないと思う。多分、今の形自体も悪くはないから、微調整で何とかなると思うよ」


キセキの話を聞くと、ラウルとヤンセンは目を見合わせた。


その後、三人は再び船の元へ向かっていった。


——全然帰ってこなかったので、結局俺たちはヤンセンの家で仮眠をとった。


朝方。


太陽の光で目が覚め、港に向かうと。


楽しそうに作業をしている三人の姿があった。


——うん、もう一度帰って眠ろう。

海の男たちの感覚は、都会っ子の俺にはよく分からん。


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