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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第七章 海洋国家シードラ

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第七十八話 別れと、ザラミの想いと。

「ステラが青帝になって、安心したのかな」

プルークの死に顔は──とても穏やかだった。

微笑みをたたえながら、やり遂げた人の顔をしていた。


「きっと、そうですね」

エイナは、棺のプルークに最後の別れを告げた。


急遽手配した葬儀場で、火葬されるようだ。

──骨はステラがヴァレンティアに持って帰るようだ。


ステラは──ずっと泣いていた。

師であり、父代わりであった人が死んだ。

大往生とは言え、すぐに受け止められるものではないだろう。


──この数日で、三人の死を目の当たりにした。


タガロを守って死んだ、フュー。

息子によって殺された──ボイド。

愛弟子の成長を見届け、寿命を全うしたプルーク。


それぞれ、違う形の死。


こんなにも目の前で人が死ぬのを見るのは──初めてだ。


平和なロッド大陸にいた頃は、そんなこと想像したこともなかった。


剣術が、人を両断できる力であることも。

式術が、人を殺せる力であることも。

俺はこの世界に来るまで、ちゃんと理解していなかった。


泣いているステラに、ザラミが声をかける。


「しっかりしなさい。あんたはもう青帝なんだよ。

世界の青の式術者の代表者として生きていくんだ」


「……私は、青帝を目指していたわけではありません。十八将だって、勝手に選ばれただけです。

平和に暮らしていければ、それで満足でした。

ザラミさんは……どうして緑帝を続けているのですか」


ステラはザラミに聞いた。


「……そうだね。百聞は一見にしかず、だ。

エイナ、車出して」


——どこに行くんだろうか。

俺たちはプルークのいなくなったワゴン車に乗った。


整備された道は途切れ、ワゴンは土煙を上げながら走る。


一時間ほど走ると、目の前に森が見えた。


俺たちは車を降りる。


「こっから先は徒歩だ。都市部から一時間。まるで別の国みたいだろ?」

ザラミが言った。


俺たちはザラミについていく。


森の入り口に、看板があった。

「世界自然保護区域」

と書いてある。


森の中を歩く。

涼しい。

鳥の鳴き声、木々のざわめき。

昔行った、アウレオの森に雰囲気が似ている。


「もうすぐ、日が落ちる。急ごう」

ザラミは少し歩くスピードを上げた。


森を抜けると、一気に視界が開ける。


その先には——白い切り立った崖。

崖下には、透き通るエメラルドブルーの海が広がっていた。


その海に——夕日が沈んでいく。


すごい。


表現する言葉が見当たらないけど、これを絶景というのだろう。


俺は言葉を失った。


「すごい!こんなきれいな海初めてだ!」

キセキが声を上げる。


「私がしたかった冒険は、これよ」

なぜかメイは誇らしげだ。


「……静かな海だな。こんな海もあるんだな」

海を知る男、ラウルも呟いた。


エイナとステラは——泣いていた。


海を百八十年見守った青帝、プルークに想いを馳せているのだろうか。


エイナが泣くなんて。


何事にも動じず、淡々とこなしていくエイナが泣くのは、意外だった。


だが、彼女の中にも、プルークへの想いがあるのだろう。


「ステラ。さっきの質問への答えだ。私は——こうした自然保護区を緑の式術で保護している。森の声を聞きながらね。世界には、滅びかけてる自然もいっぱいある。

こんな絶景を、人間の都合で滅ぼしちゃだめだろ?」

ザラミが言った。


「……ザラミさんが森を、プルークさんが海を護って、世界は続いていたんですね。六帝の生きる道が……何となく分かった気がします」

ステラが言った。


「と、いうわけで、エイナ。そろそろ引き継ぎたいんだが、どうだ?」


ザラミの質問に、エイナは涙を拭きながら言った。

「この自然は素晴らしいです。でも、やはりすいません。やはり私は、知らないことを知る生き方をしたいです」


「……国土開発の仕事のこと?まだ続けるの?」


「いえ。それももう辞めました。どうにかしてアーカーシャに辿り着いて、世界の秘密を知りたいです」


——それが、エイナの本心。

俺たちと旅を続けているのは成り行きかと思っていたけど……やはり彼女を動かしているのは、圧倒的な探究心だったのか。


「……それを理由に、環境保護庁入りを断ったんだもんね。まぁいいわ。別の十八帝で候補を探すわ。

それより前に、婚活しなくちゃなぁ」

ザラミは大きく伸びをした。


夕日に当たるその姿は、キレイだった。

ザラミは短命種と言っていた。

多分、母さんより少し年下くらいだが……そうは見えないくらい、美しかった。


「アラタ、あんたお兄ちゃんとかいないの?それか未婚の高位式者とか。ロッド大陸ってみんな短命種なんでしょ?

私もそっちに移住しようかなぁ」


……前言撤回したい。


こうして、シードラでの旅は終わった。


多くの出会い、別れ、悲劇があった。

でも、俺たちはそれを受け止めなきゃいけない。気がする。


少しずつだけど……

アーカーシャは確実に近づいている。


待ってろ、アイネ。


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