↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第七章 海洋国家シードラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/127

第七十七話 評議会と、緑帝ザラミと。

マルティアに着くと、そこは端末のAIから説明された通りの賑わいだった。

車ごと降りて、評議会開催地まで車を走らせるが、道路も大渋滞。

歩いた方が早いんじゃないかくらいの速度だった。


「科学は進歩しているのに、道は混むんだな」

俺は呟いた。


「島の人はほとんど公共交通機関を使っています。この車は──ほとんど観光客ですね」


港から市街地まで、ずっと続く車の列。

日が暮れてしまいそうだ。


「評議会、間に合うのかよ」


「港から市街地までは混んでますが、その先は空いていますから」

キセキから運転を代わったエイナが言った。


俺も久しぶりに助手席に座った気がする。


後ろのメンバーはすやすや眠っている。

助手席という名前を聞くだけで、眠ってはいけない気がする。

俺だけ?



評議会の会場には、無事予定通り着いた。

その名前の通り、世界の首脳陣でも集まってるのかと思いきや——人はほとんどいなかった。

作りは、アルカディアの議事堂に似ている。

昔、父さんが話しているのを見に行ったことがある。


中央に椅子が三つ。


その正面に——プルークの家で見た、モニターという機械のようなものがある。


それを取り囲むように、階段状の座席。


身なりの整った男が、ステラを真ん中の席に案内する。

俺たちは、階段席に座った。

プルークは起き上がるのも必死だったが、俺とラウルが肩を貸しながら連れて行った。


——ここで、青帝が決まるのか。


すると、プルークの元へ一人の女性がやってきた。

緑の長いロングの髪。

研究者風の、白衣。


「お久しぶりです、プルークさん」

 

女が、プルークに声をかけた。


「ザラミ。お前も来たのか」

プルークが笑みで返す。


「ザラミ様、お久しぶりです」


「あら、エイナもいるのね。あんた、十八将になったんじゃないの?なんでまだプルークさんといるのよ」


「たまたま、成り行きです。ザラミ様こそ、どうして評議会に」


「新たな六帝の誕生を見届けるのは、六帝の責務でしょう?もっとも、そう思っているのは私くらいみたいだけど」


ザラミは、周りを見回す。

他の六帝は来ていないのだろう。


「エイナは?いつ六帝になるの?」

ザラミはエイナに言った。


「……緑では無理でしょうね。あなたがいる限り。私は六賢を目指しますよ」


エイナは淡々と言った。


「……それはつまらないわね。私はさっさと結婚して家庭を持ちたいのよ。あなたが目指してくれないと困るわ」


「パラドクスですね。私が緑帝になるより、ザラミ様が結婚するほうが難しいと思いますが」


「……相変わらずはっきり言うわね。あなたはいいけど、私は短命種なのよ。三十二歳、繁殖期としてはかなりピンチなのよ。いい男はいないの?あら、その方たちは?」


ザラミは俺たちの方を見る。


「十二歳から十五歳の少年をお好みならどうぞ。ザラミ様のターゲットとはズレてると思いますが」


「……よく覚えてるわね。二十五歳から四十歳、式術ランクはA以上。品行方正、私の言うことを聞く、超絶イケメン。昔から変わらないターゲットよ」


「……世界に存在しない相手を、いつまで探すんですか。美人なんだから、妥協すればいいんですよ」


エイナはため息をつく。


「褒めてるのか貶してるのか分からないわね。私は——妥協はしないわよ」


腕を組むザラミに、プルークが言った。

「ガゼリアでいいじゃないか。年齢以外は合ってるぞ」


「……プルークさん。まだ言ってるんですか。私は同じ短命種で相手を探してるんです。それと、ガゼリアだけは死んでも無理です」


「私はお似合いだと思うがな。まあいい。そろそろ、評議会が始まるぞ」

プルークは言った。


——プルークさんも、今日は調子がよさそうだ。


議事堂の電気が消え、モニターが明るくつく。

会場に、声が流れ始める。


「皆様、お集まりありがとうございます。人材管理局の皆様、準備お疲れ様でした」


——女の声。

年齢は読み取れない。


まさか、この声が……


「アーカーシャです」


俺の疑問を察したのか、エイナが呟いた。


「アーカーシャ?どこかにいるのか?」


「音声のみです。私も、姿を見たことはありません」


アーカーシャの声は続けた。


「本日は青帝プルークの体調不良による、後任青帝の選出を行います。候補者は青の十八将の三人。

ステラ、タガロ、エルグ」


議事堂に、緊張が走る。

しかし、今モニターの前に座っているのは……

ステラだけだ。


「タガロは本日欠席、エルグは先週死亡しました。

よって、自ずとステラが青帝になります」


——事務的な声が、響く。


「ステラ=フランシス。

この瞬間より、青帝となり帝国発展のために業務を遂行してください。

業務内容については、プルークより引き継ぎを受けてください。

もしプルークが亡くなった場合、私宛に連絡ください。

連絡先は端末に送ってあります。

欠員となっている新たな十八将については、選出次第本人たち及び青帝に通達します。

それでは、評議会は以上になります」


え?——終わり?


議事堂にはまばらな拍手が鳴る。


「プルークさん、おめでとうございます。長い間、お疲れ様でした」

ザラミがプルークに声をかけた。

プルークは、安堵の表情を浮かべる。


「ありがとう。これでいつでも死ねるな」


プルークは百八十年間青帝を務めあげた。

それに対して──アーカーシャからは何の言葉もなかった。


「エイナ、アーカーシャと話をできないのか」

俺は、なんとしてもアイネの情報を手に入れたかった。

デュランがアーカーシャの部下だとすれば、何かを知っているはずだ。


「無理ですね。この音声は、首都アーカーシャから通信で飛ばされているだけです」


この場にはいないということか。

そうだろうとは思っていたが……。


ステラが、俺たちの所へ戻ってくる。


「プルーク様!私……不安です」

青帝になったばかりの少女は、頼りない表情を浮かべている。


「大丈夫。ステラの力なら、うまくやれる。

ただ──お前のやりたいようにすればいい。

私はアーカーシャの指示通り動いただけだ。

お前なりの青帝をやればいい」

プルークは、そういうと咳き込んだ。

──嫌な音がする。

直後、その場に吐血した。


「師匠!」

エイナがとっさにヒーリングをかける。

それに、ザラミも加わる。


六帝と、十八将。

世界最強のヒーリングだ。


しかし。


プルークの容体は、よくならなかった。


「ザラミ様!どうにかならないんですか」

ステラが焦った表情をする。


「落ち着け。あんたはもう青帝だ。これから──たくさん人の死に向きあう。

あんたにできることは、しっかりと見届けることだ」


「でも……まだ何も青帝のことを教わっていません!

緑帝なら、どうにか治せないんですか」

ステラは叫んだあと、自分の言った言葉の意味に気づく。

ザラミは少し寂しそうな顔をしている。


「す、すいません、悪気はなくて……」


「いいさ。言っておくけど、式術じゃあ、人の寿命は変えられないよ。

変えたのは──科学だ。

やるだけ、やってみるけどね」

ザラミはヒーリングを強める。


額は汗ばんでいる。


エイナも必死に式術を流し込み続ける。

俺は、二人の式術にブースターをかける。


どれだけ効果があるか分からない。


でも、できることはしたい。


……だが。


プルークの呼吸は、少しずつ弱くなっていった。


「みんな。ありがとう」


小さくそう呟いて──

プルークは静かに目を閉じた。


世界を百八十年間見守り続けた男は、

穏やかな表情で眠りについた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。