第七十四話 戦いの後、それぞれの想い。
それから——しばらく俺たちはそこで茫然としていた。
あまりにも色々なことが起きた。
ガゼリアは、しばらく、自分の手を見つめた後——フューの亡骸の元へ向かった。
両手を合わせると、上半身だけになった亡骸をそっと抱きかかえた。
「エイナ。この辺りに——墓地はあるか」
ガゼリアの意図を察して、エイナは頷く。
「案内します。アラタ、こちらの対応はお願いします」
対応——。俺はハッとなる。
まずは、ボイドだ。
ひどく頭を打ちつけていた。
俺がボイドに近づく前に、キセキがボイドの脈をとっていた。ゆっくり首を振る。
「ダメだ。打ちどころが悪かったみたい」
——死んだ。
この短い時間に、二人も。
「……ボイドも俺が担いでいく。
墓は……分けてやろう」
ガゼリアが、低い声で呟いた。
エイナとガゼリアは、墓地の方へ歩いていく。
いつになく、二人の背中が小さく見える。
直後、ドアが開き、ステラが顔を出した。
「……アラタさん。一体、何があったんですか」
家の前の荒れ具合を見て、眉をひそめる。
無事で良かった。
今度は守れた。
だが。
ボイドは──死んでしまった。
それは、アイネを探す唯一の糸が消えてしまったことを意味する。
「……中で説明するよ。プルークさんは、起きてる?」
俺とキセキは、ステラと共に家に入った。
「そんなことが……。プルーク様から、家から出るなと言われたので、頑なに断りましたが……もしドアを開けていたら、私は——殺されていたかもしれないんですね」
ステラは、俺たちにお茶を出しながら言った。
「……評議会に向けて、きな臭い動きが多数起きている。
油断はするな」
プルークは、咳をしながら言った。
「評議会へは、行かなきゃいけないんですか?」
俺は、プルークに聞いた。
「参加しなければ、選出されない。
——私も最後の仕事として、行くつもりだ」
マジかよ。その状態で?
「……体は、大丈夫なんですか?」
俺が言うと、プルークは笑った。
「大丈夫なわけないさ。——ただ、たとえマルティアで死ぬとしても、評議会は見届けねばならん。
ステラの師としての、務めだ」
「俺たちも行きます。タガロの動きも気になるし……」
話をしていると、エイナとガゼリアが帰ってきた。
「埋めてきた。——ちゃんと、別々の場所にな」
ガゼリアは小さく言った。
「ガゼリアは——フューの知り合いだったのか?」
俺は聞いた。
ガゼリアは、静かに話し始めた。
「フューは……俺と同じ、チグル村の出身だ。
コラル郊外の田舎だ。十歳でバドールに引っ越してから会っていなかったが……変わっていなかったな」
ガゼリアは、自分の手を見つめながら続けた。
「殺すつもりなんてなかった。あの、タガロという少年なら、止められるはずだと思った。
まさか——自らを盾にするとはな」
「戦いである以上、どちらかが死ぬことは想定の範囲内です。彼女も分かっていたはずです」
エイナが言った。
「力加減もできないとは、六帝失格だな。
——俺は赤帝を降りる。コラル国王も辞任するよ」
ガゼリアにとって、相当こたえたようだ。
「ダメだ」
プルークが、体を半身起こして言った。
「ガゼリア。お前は逃げるな。赤帝も国王も、続けろ」
ガゼリアは目を見開く。
「……それが俺の責任ってことか?」
「そうだ。役割を果たす責任もある。私が死んだ後、残された六帝でまともなのはお前と緑帝、ザラミくらいだ。
もしステラが六帝になったとき、支えてやれるのはお前らしかいない。
頼む。続けてくれ」
プルークが、真剣な眼差しで、はっきりと言った。
……まとも?
ガゼリアはまともな方なのか……。
だとすれば——残る他の六帝は、どれだけヤバい奴らなんだろう。
「……分かった。青帝プルークからの頼みとあれば、続けよう。
「ガゼリアも、俺たちと一緒に行かないか?」
俺は言った。
もしガゼリアが来てくれれば、戦力的にも心強い。
「一度国に帰ろうと思う。コラルの国内も心配だ。
……アラタ。勝負の約束はしばらくお預けでいい。
すべてが片付いたら、また会おう」
ガゼリアの依頼に、俺は頷いた。
「ガゼリアがいなかったら──危なかった。
来てくれて、ありがとう。
──絶対、約束は守るよ」
俺たちが話していると、メイとラウルが帰ってきた。
「ただいまー!……ってあんたたち、なんでそんなになっているのよ」
メイは、俺たちを見ると驚いた顔をした。
俺たちは先ほどの戦いで服は破れ、顔は土埃にまみれていた。
そんなことも気づかないほど、あまりに多くの出来事が起きていた。
タガロは、一体どこへ向かったのだろうか。
評議会で何も起きないといいが……。




