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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第六章 コラル国、そしてウィザル国

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第六十話 邂逅と、戦いと。

「王宮から来たんですか?それは——大変な道のりだ。

中でお茶でも飲んでください」

そう言うと、イグラスは家の中に二人を案内した。


簡素な作りの木造の家。

家具も最低限のものしか置かれていない。

——ここが、世界一の剣士の家なんだろうか。


メイは、父の実家を思い出した。

古臭く質素だが——なぜか落ち着く感じ。


このグライスに似た同世代の男は、ここでどんな暮らしを営んでいるのだろうか。


「ん。お茶、美味しいわね」

メイは、イグラスの出したお茶を飲むと呟いた。


「それは良かった。うちで栽培した茶葉で作ってるんです」

イグラスは答える。


「なぁ、あんたも剣士なのか?」

ラウルがおもむろに聞いた。

「申し訳ないけど、全然そんな風に見えない」


——失礼なことを言うやつだ。

それでもそう感じさせないのは、ラウルのさっぱりした性格のおかげだろう。



「ははっ。そうですよね。もう、剣を置いてしばらく経ちますから。父も同じです。今は農作業しているところです。——あ、帰ってきたみたいですね」

戸が開く音がする。


狭い家。すぐに強面の中年が顔を出した。


「——客か。珍しいな」

低い声。鋭い眼光。

農作業用の服装に不釣り合いな威圧感が、その場の空気を変える。


「あんたが、オラディグさんか」

ラウルが口を開く。


「——なんだ?俺宛の客か?」


「レイサス王に言われてやってきた。

——俺たちに剣の修行をしてくれないか?」


ラウルの言葉に、オラディグの返事はなかった。

無言のまま、農作業の片付けを続けている。


ラウルはメイと目を合わせる。


——聞こえているはずだ。


だが——怒っている?


「……こんな感じです。無駄足で申し訳ないですが、僕たちはもうただの農民なので。そっとしておいてもらえますか?」


いたたまれなくなったのか、イグラスがそう言った。

しかし、ここまで来た引き下がるわけにはいかない。


何のために山道を歩いてきたと思っている。

メイは、立ち上がって言った。


「オラディグさん。私と剣で勝負しましょう。

あなたが勝ったら大人しく帰るわ。

私が勝ったら、剣の修行をつけて」


——我ながらめちゃくちゃなことを言っているとメイは思ったが、言うのはタダだ。


横でラウルが呆れた顔をしている。


「……お前に負けるようなら修行してもらう意味ないだろ」


——確かに。

でも、何か言わないといけないと思った。


すごすごと帰るわけにはいかない。


その言葉を聞くと、オラディグは言った。


「イグラス、お前が招き入れたんだろう。

——お前が相手をしてやれ。

負けるようなら——そのまま家を出ていけ」


怒りは感じない。しかし威圧感のあるその声が、狭い家の中に響いた。


イグラスはため息をつく。


「……分かりましたよ。模擬刀でいいですね?」

ゆっくりと立ち上がり、家を出ていく。

メイとラウルはそれについていく。


イグラスに木造の剣を渡されると、メイは距離を取り──

構えた。


「蜻蛉の構え……」

ラウルは呟いた。


メイの必殺技。一の太刀。

それを見ると、イグラスは目を見張った。


「へえ。やりますね。こりゃ、本気で行かないとまずいなあ」

そう言いながら、構える。


メイが高く両手を挙げているのと対照的に──低い構え。

剣を横に構えている。


まだ剣技をはじめたばかりのラウルだが──それでも分かった。

この男、強い。


所作に澱みがない。

そして──美しい。


一瞬の間。

そして──静寂。


思わず、ラウルは唾を飲む。


旅が始まる前──剣を始める前なら、分からなかっただろう。


この戦いのレベルの高さを。


呼吸の読みあい。

間の取り合い。


交錯する、目線。


先の先か、後の先か。


じりっ。


地面を擦る音が鳴ったと思った直後。


──メイの後ろに、イグラスの姿があった。

首元に、模擬刀が突きつけられている。


あのメイが──交わされただけでなく、後ろを取られた──?


「……完敗ね」

メイの呟く声が聞こえ──勝負は一瞬で決した。


「ふう。やりますね。十分強いじゃないですか」

イグラスは額の汗を拭った。


「……何言ってんのよ。今あんたに負けたばかりよ」

メイは平静を装い、そう言った。


「それは、相手が悪いですよ。一応、〝剣王〟オラディグの息子ですから」

悪びれもなく、イグラスは言った。


メイは、口から出そうになる言葉をぐっと飲みこんだ。


「……約束は守るわ」


「はい。剣は教えられませんが──またいつでもお茶を飲みに来てくださいね」

イグラスは、憎らしいほどの笑顔を向けた。


メイは何も言わず歩き出す。


「え?お、おい」

ラウルはそれについて言った。


……この後、荒れそうだな。

ラウルはメイの背中が語る怒りを感じ取っていた。



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