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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第一章 旅立ちの時

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第五話 夜の船と、煙草の煙と。

「……本当にこんなところで寝るの?板じゃない」

メイが文句をぶつぶつ言っている。


「育ちがいいんだなお嬢ちゃん。寝室がついているだけでまともな船だぜ?」

ラウルが言った。


船の地下にあった寝室は、メイの言う通りただの板の間だった。

申し訳程度に布は敷かれているが──背中は痛そうだ。


「大陸着いたら野宿とかもあるから、マシなほうだよー。そのうち慣れるよ」

エルデネが言った。


……そりゃそうか。

宿がある旅行ではなく──これは未知の大陸への冒険だ。


少し、舐めていたようだ。

覚悟を決めなければならない。


「とはいえ、俺も寝ないで操縦ってわけにはいかない。お前らにも操縦教えておかなきゃな」

ラウルがこちらをちらっと見る。


「あ、僕やりたい」

キセキが手を挙げた。


「おっ。キセキだっけか。お前、興味あるのか?」


「父さんが設計した船に興味がある。どうやって動かすのか、どうやったら速く動くのか」


「よし。じゃあ、海を極めし俺様が船について叩き込んでやるぜ。来な」


ラウルとキセキは上へ上がっていた。


メイは、文句を言いながら横になっている。


「枕もないじゃない……どうやって寝ろって言うのよ」


……言い出しっぺのくせに、文句の多い女だ。


「これから北上するから、どんどん寒くなるよー。毛布巻いときな」

エルデネが言った。


「大陸って、北にあるの?」

俺は聞いた。


「一足飛びにはいかないよ。一旦、カムイ国に立ち寄って、物資補給してから大陸に向かう。極寒の国だよー」


「エルデネはカムイに行ったことあるのか?」


「むかしね。その時は──敵としてだけどね。

ロッド大陸は全部回ったかなあ」


敵として。

あっさりと言いづらいことを言う。


その昔、オルディア──敵国の斥候として動き回っていたと聞いた。


「カムイの王様って、確か……若いんじゃなかったっけ」


「そう。シャイン=カムイが退任して、甥のウポロ=シャインが現国王」


「なんで退任したの?」


「スクエアに婿入りしたって。王の座も富も捨てて、たった一人愛する人のもとへ。ロマンだねえ」


エルデネは呟きながら煙草に火をつけた。


俺には──理解できない。

なんでわざわざ立場を捨てて、異国に行く必要があるんだろうか。


「……エルデネも恋とかしたことあるのか?」


俺はつい、エルデネに聞いた。


エルデネは少し考えて言った。


「うーん。分かんない。一瞬、タツオを好きかもと思ったけど、勘違いみたいだったし。ユイトは頼れるやつって感じだしなあ。気が付いたら、四十歳をすぎちゃったなあ」


──二十代にしか見えない横顔が、少し寂しそうに煙を吐いた。


気が付くと、メイはすやすや寝息を立てている。

まったく、のんきな奴だ。


上からは、ラウルがあーだこーだ指示を出している声が聞こえる。


カムイまでの旅程は長い。


……俺も寝るか。


俺は、メイと少しだけ距離を空けて、横になった。


この女の寝相の悪さは、折り紙付きだ。


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