↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第一章 旅立ちの時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/127

第四話 恐怖の通信と、キセキの成長と。

「ねえ、もっと速度上げなさいよ。追い付かれちゃうじゃない」


メイはラウルを急かす。

海に出てから、数十分。

夜の海は、一面同じ景色だ。


「お前な。夜の海は難しいんだぞ。シーサーペントが出る海域も避けなきゃいけないし」

ラウルはぼやいた。


船の操縦経験のない俺でも分かる。

こんな暗闇を目的地に向かって船を動かすなんて、相当難しいに違いない。


「まあまあ。海に出ちゃえば、こっちのもんでしょ。

さすがにミサキたちも追ってこないって」


甲板で、エルデネは煙草の煙を吐いた。

のんきな発言である。

子どもの気持ちも知らずに。


海へ出て数十分経った頃──頭の中に再び声が響いた。


『ごらああああ!!お前ら!!何勝手に出港してるべ!!』


今度は母さんではない。──ミサキ叔母さんだ。

周りの反応を見ると──全員同時接続のようだ。


『エルデネエエエ!!どこまでいくつもりだべえええ!!』


音だけの通信なのに……顔が見えるようだ。

俺の横でキセキがカタカタ震えている。


『ああー。ミサキぃ。大丈夫、ちょっと大陸行ってくるだけだから。皆で冒険したら帰るから、のんびりしててよー』


エルデネが煙草を吸いながら応答する。

とはいっても頭の中なので口は動いていない。


『大陸ぅ!?そんな誰も行ったことない危険な場所に、人様の子どもを連れて行くっていうのか!?お前、やはりオルディアの手先……』


ぶつっと、通信が切れた。


──何が起きたんだ?


「うるさいから切った」


エルデネがそう言って笑う。

そんなことできるのか?

ミサキ叔母さんのエーテルリンク──干渉術は、世界最強と聞いたことがある。

勝手に通信を切るなんて……エルデネも何か力を持っているのだろうか。


『エルデネエエエ!!勝手に切るなあ!!この誘拐犯!』


すぐさま新たな通信が始まる。

そりゃそうだ。


『大丈夫だって。私もいるし。ほんの数日、子どもたちと旅するだけだから。

皆も若い頃、冒険したんでしょ?』


『まあ、そうだべが……キセキはまだ十二歳だべ!子どもだべ!何かあったら精神干渉でお前の精神を……』


『母さん、うるさい!僕は子どもじゃない!』


ミサキ叔母さんの声を遮るように、キセキの〝叫び〟が頭に響いた。

先ほどまでの震えが、おさまっている。


『父さんも言ってた。若い頃、皆で冒険したのが人生の宝物だって。母さんだって、そうでしょ?

なんで僕たちが冒険しちゃいけないの?』


先ほどまでの叫びから一転、冷静な口調。

緩急つけた話法。

こいつ、いつの間にそんな技術を。


『キセキ……いや、まあ、確かに……ちょっとくらいなら』


ミサキ叔母さんが折れそうになっている。チャンス。

──と思いきや。


『ミサキ、負けちゃ駄目よ。アラタ、今すぐ帰ってきなさい』


母さんだ。

冷静な口調。

──やばい。これは本当に怒っているやつだ。


俺は一瞬、心が揺らぐ。

ここで帰れば──大した沙汰はないかもしれない。

だけど……この冒険のチャンスは、今しかない。


『……嫌だ』


俺は、振り絞るように〝言った〟。頭の中で。


『家に戻ったら、これまで以上にミライやユフィアの面倒を見る。

だから──この冒険だけ行かせて』


──反応がない。

母さんは考えているのだろうか。


『あー、これで通じているのか?』

代わって、低い女性の声。


──テリーズ叔母さんだ。


『メイ、首謀者はお前だな。昔から冒険に憧れていたからな』


メイは、反応できずに固まっている。


『姉さんぶるのは一向に構わないが──連れて行った責任を取れよ。

アラタとキセキを守れ。そして無事に帰れ。以上』


『ちょ、ちょっとテリーズ!』


母さんの慌てる声が聞こえる。


『アレクシオが霊峰ライゼルに登ったのが十一歳だ。キセキは十二歳、アラタは十四歳だろう?冒険くらいさせてやればいい』


『だってあの時は……』


『私から見れば、イエナもミサキも冒険で見違えるように大人になった。あの子たちもそういう時が来ただけだろう。安心しろ。何かあったら、私がエルデネを斬る』


通信は、そこで終わった。


エルデネは笑っている。

「やばあ。斬られちゃうみたいだね。これは責任もって君たちを守らないと」


「……許可が出たってことなのか?しかしテリーズ叔母さん、恰好いいな」

俺は思わず呟いた。


それを聞いて、ラウルが鼻を鳴らした。

「随分過保護に育てられたみたいだな。三歳から海へ出ている俺に任せておけ」


「なによ!あんたより私の方が年上なんだからね!」


「年齢と精神年齢は別だぜ」


メイとラウルが再び口喧嘩を始める。


「よかったね、アラタ」


キセキが俺の方を見る。

その様子はいつもと変わらない。


だが。


あのミサキ叔母さんに自分の主張を通すなんて。


いつの間にか大人になっているキセキを見て、俺は少し焦った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。