第四十六話 怒りのメイと、市長の思惑と。
ラウルが、治療を受けてこっちに戻ってくる。
怪我人に備えて、緑の式者が待機しているようだ。
よく見ると、観客にも式術者があちこちにいる。
発展した科学。その社会に式術者が溶け込んでいる。
それは、まさに——アルカディアとテオロッドが目指す世界だ。
「くそー。いけると思ったんだけどな」
ラウルは心底悔しそうにしている。
「メイの方が悔しがってると思うぞ」
俺はラウルに言った。
事実、まだ剣術を始めたばかりとは思えない成長速度だ。
少なくとも俺の知る限り、剣術でメイと対等に戦える同世代を見たことがない。
「次は倒すさ。まぁ、賞金手に入ったから良かったな。
これで飯にありつける」
ラウルは言った。
切り替えの早い、気持ちの良い男だ。
「そうだな。——あ、メイも戻ってきたな」
歓声を浴びながら、メイがこちらに戻ってくる。
「なんか、市長の人も一緒に来てない?」
キセキが指をさした。
「あーっ!むかつく!ラウル!なんであんた避けられるのよ!
示現流は二の太刀いらずなのよ!」
やっぱり悔しがってるな。
メイは怒りながらやってくる。
その横には——アトルと呼ばれた市長が付き添っている。
俺たちの方に来ると、頭を下げる。
「すいません、あなたが責任者と聞いたのですが、少しよろしいですか?」
アトル市長は、俺に話しかける。
「この人、なんか相談があるんだって。私じゃわからないから、アラタに聞いてって言っといた」
メイがまだぷりぷりしながら言った。
相談——?
どんな展開になるかは分からないが、この異国で市長と繋がりができるのは大きい。
俺は頷いた。
同時に、ロイスのことを思い出した。
俺の——作戦のせいで、人が死んでしまった。
喉の奥が、少し乾く。
しかし、今は何の贖罪もできない。
ただ、アイネを救い出す。
そして、デュランたちを——アーカーシャを止める。
それが、ロイスさんへのせめてもの償いだ。
まだ、何の策も力もない。
たどり着く方法さえわからない。
だからこそ——この機会を次に繋げるんだ。
俺は、人知れず唾を飲み込んだ。




