第四十五話 メイとラウルと、決着と。
その後。
二人は順調に勝ち進んだ。
さすがに人数が減るにつれ、対戦のレベルは引き上がっていく。
素人目にも、簡単ではないことが分かる。
ラウルはさすがに疲れてきたようだが——それでも。
ここまで一度も攻撃を受けずに勝ち上がっている。
いくらブースターの効果があるといえ、すさまじい身体能力だ。
メイはと言えば——攻撃を受けないどころが、全ての相手を一撃で倒している。
若い女の参加者が珍しいのか、メイが勝つためにとんでもない歓声と、負けた相手への怒号が飛び交う。
——多分、観客は賭けでもしてるんだろうな。
マルカドールに行った時、議長のガレオンという爺さんが言ってた。
「人間の本質は、賭け事と戦いだ」って。
あの時は何言ってんだこのジジイと思っていたけど、真理なのかもしれない。
気がつくと戦いは決勝戦になっていた。
カードは、メイ対ラウル。
俺は安堵した。
どっちが勝っても、俺たちは路銀を手にすることができる。胸を撫で下ろす。
いわば俺たちにとって消化試合。
だが——
「二人とも本気の目してるね」
キセキが呟いた。
……勘弁してくれ。
二人で示し合わせて、うまいこと終わらせればいいだろうに。
こんなとこで怪我をされたら、困る。
なにしろ回復ができるエルデネは、もういない。
しかし——声をかけるにも遠すぎる。
そうこうしているうちに、試合開始の合図が鳴った。
二人は一定の距離をとっている。
メイは早速——あの構えをとった。
一撃で決めるつもりだろう。
観客の歓声が、会場を包む。
ラウルは、それを避け切るようだ。
慎重に足を運びながら、目線はメイから離れない。
直後。
メイの姿が消える。
——終わったか。
メイとラウルの位置が入れ替わる。
まぁ、一撃で終わった方が傷も浅いだろう。
——と。
そう思っていたが、ラウルは立っていた。
ラウルの頬から、一筋だけ血が流れた。
どうやら——ギリギリ身を交わしたようだ。
見えたのか?あの一撃が。
……うん。
どっちも——バケモンだ。
そこからの戦いは——なんというか、ダンスみたいだった。
一撃を外したメイは、今度は手数の応酬で攻め立てる。
ラウルはそれを紙一重交わしていく。
ブースター効果で身体能力の向上も相まって、戦いの速度そのものがおかしい。
動きと比例するように会場のボルテージが上がっていく。
そして、メイもラウルも——笑っていた。
身内でも思う。
こいつは、ヤバい奴らだ。
長いようで短い数分間を終えると、今度はラウルが構えた。
先ほどのメイと——同じ型。
これは——そう思った瞬間。
ラウルが消えた。
まるで、先ほどのメイの技のように。
再び交錯する二人。
一瞬の静寂。
そして。
メイは、いつの間にかラウルの背後に立っていた。
ラウルはその場に倒れ込んだ。
——え?
何が起こった?
ラウルは腹を抑えながら、両手でバツの印を作った。
——降参の意。
俺には全く見えなかったが——カウンターが決まったんだろうか。
こうして、二人の決勝はメイの勝利で幕を閉じた。
俺たちは遠くから見るしかできないが——会場内に、まるで近くにいるような大きな声が響いている。
リングの上の男が、丸い棒のようなものに向かって話している。
その声が会場に響く。
さっきから気になっていたが、あれも科学の産物なんだろうか。
「それでは、表彰式を始めます。
優勝……メイ=ムラサメ!
おめでとうございます。
賞金の授与は、本日のスペシャルゲスト。
アトル市長からお願い致します!」
呼ばれて、壇上に男が上がった。
灰色の髪、口髭の中年。
あれが——この街の市長。
思わぬチャンスが巡ってきた。
市長なら——何か知っているかもしれない。
そうすれば——アーカーシャに近づける可能性があがる。




