第四十二話 ドラールと、鉄の車と。
「さて、もう大丈夫だろ」
ラウルが言った。
憲兵を背に歩き続けて五分ほど。
振り返るが、追ってきている様子はない。
──入国成功だ。
俺たちは、人気の少ない路地裏に集まった。
「本当に上手く行ったな」
俺は言った。
ラウルのアイデアも、それをやり通す精神力も、すごい。
心強い仲間だ。
「っていうか、この国……なによ」
メイが言った。
それもそのはずである。
俺たちの周りに見える景色は──明らかに異質だった。
道を走るのは、馬車ではない。
鉄の車。
そして、もう夜だというのに──街が明るい。
「この明るさは……電気だね」
キセキが呟いた。
「父さんが言ってた。もうすぐ実現するって。あれは、きっと自動車だ」
「自動車?」
俺は聞いた。
「エネルギーで走るって言ってた。父さんから絵を見せてもらったことがある」
──やはり。
この国は──アルカディアの未来だ。
いわば、未来都市。
この大陸に着いた時、俺は文明の遅れた世界だと思っていた。
しかし、それは間違いだった。
俺たちの知らない文明、科学技術。
その向こう側に、敵は存在する。
その事実に、少し恐怖を覚える。
だが──。
「まずは、エルデネの行き先を探そう」
俺は言った。
アイネを助けるという決意が、俺を奮い立たせる。
エルデネがどこへ向かったのか、その足跡をたどりつつ、
アイネを見つける。
しかし、何の手がかりもない。
このドラールで、ブルドアの通貨は使えるのか。
ダゴスからもらった地図でも、白紙になっていたこの先の国。
未知の大陸、未知の文明、未知の科学。
そして──未知の式術。
どう考えても、簡単ではない。
だけど、それは──俺たちを止める理由にはならない。




