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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第四章 ブルドア国首都ガリア市

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第四十話 ブルドア国王と、ドラールへの道と。

ロイスの従者──恐らくガリアの役人だろう──も次々と起きだした。

彼らも、先ほどの惨劇を目の当たりにしている。


長を失った彼らは──これからどう動くのだろう。


俺たちは、騒ぎが大きくなる前にその場を去ろうとする。

事情聴取などされている時間はない。


すると──目の前に、髭を蓄えた初老の男が現れた。

数人、従者を携えている。


「──待ちたまえ」


声に威厳がある。一体──誰だ。


「私は、ゼルグ。ブルドアの──国王だ」


国王。

このガリア、そしてパルファムを含めた、十八の都市を管轄する国。

ブルドアの国王が、この場にやってきた。

一体、なぜ。


いずれにしても、黙って立ち去るわけにはいかなそうだ。


「少し、話がしたい。ついてきてくれないか」


俺たちは、国王に案内され、再び市庁舎の応接室に入った。


広間を出る時、一度だけ振り返る。


そこには、ロイスがいた証──黒い影が、残っていた。



「大体の状況は、ガリアの役人から聞いているが──君たちにも話を聞いておかなければとおもってな」

国王は、俺たちに言った。

誰あてに聞けばいいか分からないのだろう。

こちらを見まわしている。

そうだろう。どう見ても──全員まだ子どもだ。


「その前に──ゼルグ国王。どうしてあなたがここにいるのか教えてください」

俺が口を開いた。


国王なら──あの壁を超える糸口を知っているかもしれない。


「ああ。私は、ロイスから呼ばれて、今日こちらについた。

視察の首尾を聞く予定になっていた。

……なにしろ首都の査定だ。

このブルドア全体の査定にも影響する。首都がランクBになれば、ブルドアも国家としてランクが上がる可能性がある」


──確か、アーカーシャに国家は六つ。

その中にもランクがあるということだ。

少なくとも──隣国ドラールよりは低いことは分かっている。


「ロイスさんは……一瞬でした。一瞬で……影だけになりました。俺たちを庇ってくれました。そのせいで……!

許せない。なぜあんなことを」


「……この世界の民は、すべてアーカーシャのもの。生殺与奪は、帝国の高官は許されている。それを知らないということは、本当に君たちは別の大陸から来たのだな」


──ロイスから聞いているのだろう。

俺たちの出自を知っている。


「じゃあ──こんなことが日常茶飯事なんですか?」

殺人が正当化されている。

そんな世界が——あるのだろうか。


「さすがに、すぐに殺すということはめったにない。

だが、投獄、監禁などは茶飯事だ。──左遷で済んだダゴスが珍しいくらいだ」


なるほど。

これは──大陸の文化だ。

上官は、気に食わなければ配下の扱いを自由にできる。

時には──殺すことも。


ダゴスがファングを投獄したのも──もしかすると、こちらの大陸ではごく普通のかのかもしれない。


「──街や国は動揺していないんですか?」

俺は言った。


「ロイスは民から信頼されていた。その分──動揺はなくはない。だが、新たな市長が指名されれば、すぐに落ち着くだろう」


「指名って、帝国から?」

キセキが聞いた。


「そうだ。私も含めて──百八の都市の長は、すべて帝国に指名される。

これまでの仕事、功績、人間性、あらゆる点で人選される」


……すさまじき、管理社会。

そして、民主主義の正反対だ。


それで民は納得するのだろうか。


「ロイスさんはやっぱり……亡くなったんですよね」

俺は、少しためらいながら言った。


目の前で起きた出来事だ。

だが──現実に残ったのは、黒い影だけだ。


「……そうだ。過去にも、私はあの式術を見たことがある。

サーラ様の……〝フルグル〟。あれは、雷で一瞬で人を焼き尽くす、そういう類の式術だ。……痛みもなかっただろう」


……恐ろしい式術だ。


俺が知っている雷の式術と言えば、テオロッド国王──アレクシオ王。

彼の式術は見たことはないが、零式と言われるその雷でさえ、あの破壊力は考えづらい。


つまり。


零式より、数段上。


あいつらがカラミティアル、と表現したこの大陸特有の力があるのだろう。


「これから、この国はどうなるんでしょう」

俺は聞いた。


「どうにもならん。新たな市長が指名され、今まで通り進んでいくだけだ。

ただ、今回はお咎めがあるかもしれんな。ランクが下がる可能性もある。

──まあ、お前たちには関係ないことだ。

早く、元の世界に帰るがいい」


元の世界。ロッド大陸のことだ。


「そうはいきません。仲間を──奪われました。取り返しにいきます」


「……デュラン様たちから、あのユルガン族を?

悪いことは言わん。やめておけ。

お前たち、まだ十代だろう。死に急ぐ必要はない」


「なめないで。そう簡単に死なないわよ」

メイがゼルグを睨みつける。

やめてくれ。ややこしくなる。


俺はメイを制して続けた。

「取り返さずに帰るわけにはいかないんです。どうにか、ドラールへ渡る方法を知りませんか」

俺は、ゼルグの顔を真っすぐ見て言った。


ゼルグは、ため息をついた。


「……死に急ぐ若者を見届けたくはないんだがな。そういう目をされると、嘘はつけないな。渡る方法なら──ある」


「教えてください!」

その言葉に、俺は立ち上がり、机に手を乗せた。


「おい、落ち着けってアラタ」

ラウルの言葉に、俺は息を吸って椅子に座った。


ゼルグは続けた。

「……正確には、〝できた〟だな。これまで渡る方法など、一切なかった。

だが、つい先ほど、方法ができてしまった」


「……できてしまった?」

キセキが言った。


──言い方に含みがある。


「これは独り言だがな。

お前らの仲間の女が──先ほど壁に大穴を開けてドラールに入国したそうだ。

その壁のあたりは、両国の憲兵が封鎖作業をしている。

早ければ今日中にも復旧作業が終わりそうだ」

ゼルグが、少し遠くを見ながら言った。


……エルデネだ。

どうやって追いかけて行ったのかと思っていたが。


「……ありがとうございます。ゼルグさん」

俺は立ち上がった。

みんなもそれに続く。

──急がなきゃ。


「異国の若者たちよ。──死ぬなよ」


俺たちを送り出すゼルグは、まるで父親のような目をしていた。


ブルドアは──多分大丈夫だろう。

この人がいれば、なんとかなる。


しかし、疑問が残る。


ダゴスはまあ置いといて、ゼルグやロイスのようないわゆる〝人格者〟を長に選ぶ一方で、デュランのような〝暴君〟が存在している。


一体、アーカーシャの人事制度はどうなっているんだ。


──俺たちは、市庁舎を出ると、壁の穴へと走った。



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