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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第四章 ブルドア国首都ガリア市

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第三十九話 エルデネと、残された俺たちと。

「残念だけど、旅はここまでだね」


エルデネが呟いた。

──なんだ?何を言っている?


「アイネが……さらわれたんだぞ!助けにいかなきゃ」

俺は、気が付くと泣いていた。

──目の前に起きている事実を、感情が処理できていない。


「うん。そうなんだけど。私の責任は、君たちを安全に連れて帰ることだからね。式術が効かない相手を敵に回して、これ以上旅は続けられないよね」


「ふざけんな!アイネは……仲間だろ!」

俺は、デュランに捨てられたアイネのブレスレットを拾った。


まだ過ごした時間は短いかもしれないが──アイネは、俺たちの仲間だ。


「アラタは、アイネを救わないと帰れないってこと?」


「当たり前だろ!」

俺は、叫んだ。涙と鼻をすすりながら。


エルデネは、少し考える素振りをする。


──考えることなんて、ないはずだろ。

いますぐ追いかけて──取り戻すだけだ。


「エルデネ、行こうよ」

キセキが、代わりに言った。


「私が全員斬ってやるわ!」

半狂乱のメイを、ラウルが止めている。


少し経つと、エルデネが言った。


「うん。やっぱりそういうよね。君たち全員、意見は一致していると」


「なんだよ、何を考えてるんだよ」

俺は何とか立ち上がる。


「じゃあ、こうするしかないね」


そういうとエルデネは式術を発動した。


──紫の霧が立ち込める。


「おい、エルデネ、何を……」


「アラタ。多分この中で一番頭がいいのは君だ。──アイネを助けたいと一番思っているのも君だと思う。だからこそ、約束して。

目が覚めたら──皆でロッドに帰って」


「目が覚めて……?おい……エル…デネ……」


霧に包まれた途端、睡魔が襲ってくる。


ドリームヴェール。


眠りの式術。


遠のいていく意識の中で、エルデネの声が聞こえる。


「私が、必ず取り返してくるから。ロッドで待ってて。約束だよ」


……一人でいくつもりか?


式術が通用しない相手って言ったのは……お前じゃないかよ。


走り出すエルデネの背中を見ながら、俺の意識は、完全になくなった。








目が覚める。


太陽は落ち始めている。

どれくらい、眠ってしまったのだろう。

少なくとも、数時間は立っていそうだ。


エルデネの紫の霧はその場にいた全員を眠りに落とした。

ロイスの従者たちも、全員眠っていたようだ。


先ほどの出来事が、悪い夢だったらいいのに。


そう思う気持ちを、目の前に残る黒い影──ロイスのいた証がかき消す。


現実だ。


──ロイスが死んだのも、アイネがさらわれたのも。

そして、エルデネが一人デュランたちを追っていったことも。



「おはよう。アラタ」


俺の前に、メイが立膝で座っていた。

先に目が覚めていたのか。


キセキとラウルは、まだ眠っているようだ。


「メイ。さっきのは……現実だよな」

声が上手く出ない。

泣いたせいだろうか。


「残念ながらね」


メイは、少し目を落としながら言った。


俺は、唇を噛んだ。


俺の——俺のせいだ。


この大陸に来て、全てが順調に進んでいた。

親たちが心配するような危険など、何もないと思っていた。


エルデネがいれば、大丈夫だと思っていた。


完全に——油断していた。


式術の通用しない敵。


そんなこと、考えもしなかった。


そのせいで、アイネはさらわれた。


俺は、ゆっくりと起き上がり、キセキとラウルを起こした。


周りの従者たちも起き始める。



先ほど起きた出来事は——ロイスの影が示している。


市長が、目の前で帝国によって処された。


この街——いや、ガリアだけじゃない。

ブルドア国全体に、動揺が走るはずだ。


しかし、それよりも——。


アイネを——助けなければ。


俺の頭の中はそれだけだった。


「みんな。行くぞ。まずはエルデネを探そう」

俺は言った。


「そうこなくちゃ」

メイは、肩を回す。


「待て、落ち着けよアラタ」

ラウルが俺の肩を掴む。


「落ち着けるわけないだろ!アイネが——さらわれたんだぞ。エルデネもいなくなった」

俺は叫びに近い声で言った。


「アラタ、多分アイネはすぐに危害を加えられることは、ないと思う。アイネのことを〝候補者〟ってあいつらが言ってた。焦るより一旦落ち着こう」

キセキもラウルに続く。


——キセキの声で、少しだけ冷静になる。


「お前が取り乱してどうするんだよ。このパーティの頭脳はお前だろ。あいつらがどこへ行ったかも分からない。まずは、この国からアーカーシャに近づく方法から考えねえと」

ラウルが言った。


確かにそうだ。


ランクを上げる作戦は——完全に失敗に終わった。

別の手段で、あの壁を越える方法を考えなければならない。


俺は、深呼吸をした。


「そうだな。ラウル、キセキ。ありがとう。

メイ、一旦剣を納めてくれ。

まずは、作戦会議だ」


俺がそういうと、キセキは安心したように笑った。

俺は続ける。


「ただ、これだけは絶対だ。

——必ずアイネを助け出す」


俺の言葉に、みんな頷いた。


良かった。エルデネの忠告は無視する形になるけど。

このままロッドに帰るなんて、できるわけない。


その気持ちがみんなと一緒だということが、何より嬉しかった。


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