↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第四章 ブルドア国首都ガリア市

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/127

第三十八話 査定官と、黒のざわめきと。

ロイスのアドバイスで、エルデネ以外の俺たちは全員フード付きの服を着て、頭を隠すことにした。

特に、俺とキセキの髪の色を気にしていた。


「帝国は、未知のものを見ると警戒心を強める。君たちのその色は、この大陸では見たことがない。隠しておいたほうがいいだろう」


確かに。今回の目的は、エルデネの存在の認知とそれによる街のランクアップだ。

俺たちの髪の色は余計なノイズを生んでしまうかもしれない。


帝国からやってきた査定官は三人だった。

挨拶をしているロイスの様子を見る限り、既知の関係だろう。


リーダー格とおぼしき男は、デュランと呼ばれていた。

年齢は恐らく三十代──父さんたちと同世代くらいか。

ただ、全身がまるで筋肉の塊のようだ。

査定官というより、戦士に見える。

黒い髪は整えられ、威厳を感じさせる。


その横に二人並んでいた。

一人は女。

二十代後半くらいだろうか。

金色の長い髪をなびかせながら、服装はきちっとしている。

こちらも査定官というより、教師のようだ。

デュランから、サーラと呼ばれていた。


もう一人は男。

ボイドと呼ばれている。

眼鏡の細身。どことなく、サイレス叔父さんに雰囲気が似ている。

髪は灰色。──無式者だろうか。

眼鏡越しにこちらを見定める視線を感じる。

ある意味、一番査定官らしい。


「はるばる、ガリアまでありがとうございます」

ロイスは、ひざまずき敬意を表している。


いくら帝国の査定官とは言え、そこまでへりくだる必要があるのだろうか。

デュランは、それを一瞥すると言った。


「文明レベルは維持、というところか。式術者は育っているようだな」

デュランが低い声で言った。


「はい。式術学校の成果で、ランクB、C式者の数は飛躍的に増えています」

ロイスが答える。


「ほう。そうなると、式術犯罪が増えているんじゃないか」


「──ダゴス前市長の方針で、人格面の検査をクリアした人間しか式術学校には入れません。なので、式術犯罪はむしろ減少傾向です」


式術犯罪。

それは、ロッド大陸でも議論されていた点だ。

法整備や教育に莫大なコストをさいていると父さんから聞いたことがある。


「それは素晴らしいな。ダゴスの方針、というのは気になるが。

引き続き式術と科学の融合を目指せ」

デュランはそう言うと、用意されていた席に向かった。


──なんだこの既視感は。


式術と科学の融合?


──まるで、父さんたち──アルカディアが目指す世界そのものじゃないか。


俺は思わず出そうになった声を飲み込んだ。


広場には、エルデネが一人立っている。

そこを見渡せる最前席に、デュランたちは座った。


俺たちはロイスと共にその後ろに座る。


「あれが、この街一番の式者か」

デュランはロイスに聞いた。


「はい。赤のAランクはあると思います」


「Aランク……それが本当なら、ブルドアでは初だな。

これまではダゴスのBランクが最高だったはずだ」


デュランが言った。

あのおっさん、ブルドアの最高峰だったのかよ。


……自信を持って勘違いするわけだ。


エルデネがこちらを見る。

ロイスが頷くと、エルデネは両手から火球を作り出した。

それを頭上で融合させる。


火球は大きさを増しながら、空中に浮かんでいく。


「へえ……カラミティアルクラスじゃない」

サーラが呟いた。

「ドラールでもいないわよ」


「ほう。六帝クラスか?」

デュランが聞いた。


「そこまでじゃあないわ。でも、十八将には入るかもね」

サーラが答える。


「これまで検知できていないのはなぜでしょうか」

ボイド──細身の眼鏡が言った。


余計なことを言うな。

俺は一瞬焦る。


エルデネは、その火球を空に放った。

着地点を失った火球は、まるで花火のようにはるか上空で破裂した。


「いかがでしたでしょうか、デュラン様。

──ブルドアでもトップの式術者が生まれてきています」

ロイスが言った。


よし、そのまま話を進めてくれ。


デュランは、後ろを振り返ると、頷いた。


「高位式者が増え、式術犯罪も増えていない。その点は素晴らしい。大いに評価する点だ」

デュランの言葉に、ロイスの顔に安堵がみえる。


上手く行った──のか?


すると、デュランは立ち上がり、後ろを振り向いた。

「だが──隠し事はよくないな」

そういうと、俺の横に座っていたアイネのフードを取った。


「ロイス。どうして黒髪の者がここにいる」


フードを取られたアイネの髪が、あらわになる。

そして、その髪は──逆立っていた。


まるで、あの石に共鳴したときのように。


そして、デュランの髪もまた──逆立っていた。


「相当な原石だぞ。なんでこんな街にいる」

デュランはアイネの髪を掴んだ。

「いやっ……やめて!」

アイネの悲鳴が上がる。


俺は、思わずその腕に飛びつく。

「なにするんだ!やめろっ!」


しかし──丸太のように太い腕に払われ、俺の身体は吹き飛んだ。


「ボイド、どうだ?」

デュランはアイネの髪を掴んだまま言った。


「いいと思います。〝候補者〟になると思います」


「そうか。じゃあ、連れて帰るか」


デュランはそう言うとアイネを脇に抱え、歩き出した。


「ちょっと、なにしてんのさ」

デュランの前にエルデネが立ちはだかる。

「アラタ、どうなってんの。作戦失敗?」


俺は、痛む体を押さえながら言った。

「……エルデネ!そいつらを、止めてくれっ……」


何もできない自分が歯がゆい。

今頼れるのは──エルデネだけだ。


「おっけー。おい、お前ら、その子を離しな。

でないとこの火の球で焼き尽くすよ」

エルデネが凄んで言った。


しかし、デュランは笑っている。

「……どの球だ?」

髪は逆立ったままだ。


「え?」

エルデネはそういうと、自分の手の上を見た。

そこにあるはずの火の球は──存在しなかった。


「無効化が効いてますね——カラミティアルではない。

ただのAランクでしょう。

行きましょう、デュラン様」

ボルドがそう言うと、三人は歩き出した。


メイが剣を持ち、斬りかかろうとする。

しかし、ロイスがそれを制した。


「デュラン様!その子は──客人です。私たちのブルドアの民ではありません。

連れていかれるわけにはいきません」


ロイスが、市長としての責任を果たそうとする。

デュランは、振り返って言った。


「なんだ、ロイス。まだ分かってなかったのか。

この世界の民はすべて──アーカーシャ帝国のものだ。邪魔をする気か?」


「そ、そんな。その子を連れて行くくらいなら、代わりに私を連れて行ってください!」


「お前を連れて行って、何の役に立つ。

——無式者が。

こんな上玉を隠しておくなんて、それだけで万死に値する。帝国への忠誠が足りないようだな。──おい、サーラ」

デュランはサーラに目配せをする。


サーラは頷く。


金色の髪が──光を帯びる。

それまで晴れていた空を雲が一瞬で覆いつくす。


これは——黄の式術。


「──フルグル」


サーラが呟いた直後──雷がロイスの頭上に落ちた。


──ロイスの肉体は消え去り──影だけが、地面に残った。


「うわああああああ!!!」

俺は思わず叫び声を上げる。


目の前で──人が死んだ。

躊躇いもなく、殺した。


デュランたちは、そのまま振り返ることなく、歩いていく。

「なんだこれは。邪魔だな」

デュランはアイネの手からブレスレットを外し、地面に捨てた。


「貴様ぁあああ!!」

メイが剣を抜いた。


「やめろっ!!」

それを止めたのは──ラウルだった。


「……勝ち目がない。今は行くな」


「離せっ!あの子を連れていかれていいのかよ!……アラタァァッ!」


ラウルはメイを止めてくれている。


俺は──その場に座り込んでいた。


キセキは、紫炎を発動させている。

しかし──式が出ない。


「あいつの前で──式術は使えないみたいだね。

どういうわけか、あの女は使えていたけど」

エルデネが言った。


なんだ。

一体、何が起こったんだ。


今起きた出来事は──現実なのか。


俺は、ただ、地面に捨てられたブレスレットを眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。