第三十六話 ガリアのランクと、作戦会議と。
「いつも通りぶっ放せば良いってことね」
エルデネは、肩をぶん回した。
俺たちは市庁舎近くの広場で、準備を終え待機していた。
今日、査定官がやってくる。
アーカーシャ帝国内の中心部アーカーシャ国からの使者だ。
その前で、エルデネの式力を見せつけ、ガリアの国ランクを引き上げる。
それがこの作戦の狙いだ。
単純ではあるが、高位式者の輩出がランク査定に影響するのであれば。
ダゴスから災害級──カラミティアル──と呼ばれたエルデネの式力は、
プラスに働くだろう。
話は三日前に戻る。
俺は、作戦の立てる中でロイスにこれまでの査定傾向について聞いた。
「なんでランク付けの基準を公開しないんですかね」
「……まさにこう言った悪用を避けるためのような気がするがな。
詳しいことは分からない。師匠──ダゴスはランクを上げることに人生を捧げたような人だから、ある意味推測できているのも師匠のおかげだ」
なんでも、ダゴスはこれまでの周辺国のランク変動をすべて記録し、
何が影響を与えているかを分析したらしい。
相当な執念だ。
科学については、一定の科学を許容できる文化風土が整っているかどうか。
いわば、民のリテラシーみたいなものか。
こちらが整っているかどうかが重要なポイントのようだ。
領土については、単純に国土や、街の領土の広さ。
併合した街がランクEからDに上がったりした過去があるようだ。
そして式術。
こちらについては、ダゴス本人やバジャ、グラムの存在がそれを証明している。他の街でも同様に、高位式術者が一定数揃ったタイミングで、ランクの上昇が見られた。
一方、式者が死亡、あるいは転居などした場合──ランクの低下が見られたようだ。
ダゴス、バジャ、グラムがまとめてパルファムに行ったことでランクの低下はなかったのかと心配になったが、どうやらダゴスは後進の育成に成功していたようだ。ガリアには彼らの代わりとなるランクBやCの式者が増えているらしい。
……あのおっさん、なんやかんや有能なのか?
というわけで、ランクA、カラミティアルのエルデネがガリアにいるとなれば、少なからずランク上昇に好影響を与えるだろうという話だ。
もしロッド大陸から零式の面々を連れてきたら、ガリアも一足飛びにランクAまで行けるのかもしれない。
まあ、連絡手段がない以上無理だけど。
「その街に住んでいる住民という証明はどうするんですか?」
俺はロイスに聞いた。
「全員、身体の中にあるチップに記録されている。それを照合して判断される」
「……じゃあ、無理じゃないですか」
「チップの照合をするのは、街や国の間を通る時だけだ。ランクの低いブルドア国内は、実質ほとんど行き来は自由だ。
上位ランク国がどうなっているかは分からないがな」
確かに。この街に入る時も憲兵がいただけで、特に照合などはなかった。
「じゃあ、ごまかしきれる可能性もありますね」
「……その場でチップの照合をされたら、終わりだがな」
ロイスはまだ、不安そうな顔をしている。
「そうしたら、ロイスさんは俺たちに騙されたことにしてください」
俺は、間髪いれずに言った。
「どういうことだ?」
「俺たちを、別の大陸から来た詐欺師とでもなんでも言ってください。
そうすれば、この国はただの被害者になる」
「……ありがたい話だな。だが、君たちだけに責任を負わせるのはどうだろう」
ロイスは、考え込む顔をした。
──良心のある人なんだろう。
「その代わり、無事ランクが上がったら、色々協力してください。
査定はすぐ終わるんですか?」
「大体、視察から一週間ほどで新しいランクが付与される」
「いいですね。じゃあ──その作戦で行きましょう。
査定官が来るのは三日後ですよね。それまでに俺たち──特にエルデネを、
ガリア市民に仕上げてください。服装とか、全然違いますからね」
俺が言うと、ロイスは腹をくくったようだ。
「……Bランクまでの百年を買うために、危険を冒す、か。
その発想はなかったが──そこまで言うならやってみる価値はあるかもしれないな」
さて、ガリアランクアップ作戦、開始だ。




