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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第四章 ブルドア国首都ガリア市

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第三十五話 カラミティアルと、ロイス市長と。

業火が部屋の壁に衝突する。

火力を凝縮し絞り込んだそれは、さながらレーザービームのように壁の一部を消し炭にし、大きな穴を開けた。


幸い、部屋は一階だ。

俺たちはそのまま部屋を飛び出た。

大きな音に気が付いた人々が遠巻きにこちらを眺めている。


俺たちは、それを無視し、そこから見える一番高い建物に向かって走った。


「大体、権力者は一番高いところにいるっしょ」

エルデネが呟いた。

経験則なのか、一般論なのか。


俺たちはそれに付いていく。

相変わらず、エルデネ、メイの速さは異常だ。

ラウルでさえ遅れている。


俺は遅れているメンバーにブースターをかけた。

身体能力の向上。

なんとか追いつくと、二人は既に市庁舎らしき建物に到着していた。


「よっしゃ、乗り込むよ。──でもその前に」

市庁舎の周りには、騒ぎを聞きつけた兵隊たちが集まってきていた。

「駆逐していい?」

エルデネが言った。


俺はそれを止める。

「相手の出方が分からないんだから、いきなり殲滅はダメだろ」


「じゃあ、私たちの出番だね」

メイが剣を握る。

「ラウル。修行の通りよ。殺さず、倒す」


「へいへい」

ラウルは慎重したばかりの件を抜いた。


「メイ、頼む」

俺はメイの背中にブースターをかける。


「うーん。効く効く。アラタはがっちり交渉してきてね」

メイはそういうと兵士たちの方に駆け出していった。


なんやかんや、頼もしい。


しかし、兵隊十人くらいいるぞ……?

大丈夫なのか?


俺たちが市庁舎に乗り込もうとすると、あたりに声が響いた。


「お前たち、やめろ。返り討ちになるだけだ」


少し高い、男の声。

良く通る声だ。


振り返ると、そこには若い男がいた。

二十代に見える。

灰色の長い髪の──中世的な男だ。


「皆さん、荒っぽいですね。初めまして。ロイス=グラドール。

この街の市長です」


いきなり俺たちを閉じ込めたのは──女性にも見えるような、この細い男だったのか。


兵士たちは、剣を鞘に納め、ひざまずいた。

──規律がしっかりしている。


騎兵団から反感を買っていたダゴスとは大違いだな。


「パルファムから来ました。アラタ=カタギリです。

少しお話できますか」


俺が言うと、ロイスは頷いた。

──所作の美しい男だ。


「ようこそ──別の大陸の方々。事情を説明させていただきます。

中へどうぞ」


そう言って、市庁舎の中に入っていく。


どういうことだ……?いきなり俺たちを監禁するような人間に見えない。

少なくとも、ダゴスよりはよっぽどまともに見える。


しかし、油断はしないようにしよう。


俺たちはロイスに続いて市庁舎の応接間に入った。


戦いの準備をしていたメイは、少し肩透かしを食らったような顔をしている。

──戦闘狂かよ。


部屋は先ほど監禁されていた部屋と似ていた。


「しかし、いきなり部屋を破壊するとは──なかなか過激な方々だ」

ロイスはお茶をすすりながら言った。


「いきなり部屋に監禁するのもどうかと思うけどね。

わざわざ式力を奪う部屋に」

エルデネが、返した。

──言葉にはとげがある。


「失礼。その点についてはお詫び申し上げる。

ダゴスの真意が図りかねたので、一旦の措置だ。

申し訳ないが、馬車の積み荷は検めさせてもらった」


……全然信用ないじゃないかよ。

まるで旧知の仲みたいに言ってたくせに。


「ダゴスとは……知り合いなんですか?」

俺は聞いた。


「私の……師にあたる。私をこの政治の世界に導いたのも、彼だ。

だが……少し強引に物事を進めすぎるきらいがある。

それゆえにパルファム行きになったのだ」


……こっちでもなんかやらかしたんだな。

だから左遷されたのか。


「で、私たちの潔白は証明されたわけ?」

エルデネが不満そうに言った。


「──少なくとも、馬車に危険なものは見当たらなかった。

今話していても、敵意は感じない。

こんなに式術者が並ぶのは初めて見るがな」


ロイスは、俺たちの頭を一瞥した。


「俺たちは、アーカーシャの中心部に行きたいんですが、手伝っていただけますか?」

俺はロイスに聞いた。


「ダゴスからの書簡にもあったが……本気なのか?」

その問いに俺は頷く。

ロイスはため息をついた。


「……何か問題があるんですか?」


「ある。それに──時期が悪い。今は──帝国査定の時期だ」


「帝国査定?」


「君たちの大陸にはランクがないというのは、本当なんだな。

三日後──アーカーシャから査定員がやってくる。

数日間の滞在で、この街──ガリアのランクが決定される」


俺たちは、ダゴスの言葉を思い出した。


科学の発展状況、式術者の状況、領土の規模──

ダゴスが認識している、ランクの基準。


「それの……何が問題なんですか?」


「査定期間中は、民の移動が制限される。ただでさえ堅牢な国境壁に、更に警備が増強される」


なるほど。監視の目が厳しくなるということか。


「それに──そもそも上位ランクへの移動はできない。

ドラールに入るには最低でもランクBが必要だ。

今のガリアでは、ランクBに到達していない」


「壁なんてぶっ壊せばよくない?」

エルデネが言った。


「……壁の向こうでいきなりお尋ね者になりたければそうするがいい」

ロイスが呆れながら言った。


「すいません、ロイスさん。ちょっとこの人おかしいんです。

──なんか手段はないですかね」

俺は、エルデネを制して言った。


ユグラシア大陸の人に、ロッド大陸人は野蛮な民族と思われては困る。

奇しくも、言語は通じる。

であれば、話し合いで解決することのほうが多いはずだ。


ロイスは少し考えてから言った。


「手っ取り早いのは、ランクを上げることだが……科学力は昨年と比べて伸びてはいない。このままだとランクCで据え置きだろう」


ランクを上げる条件は、分かっているものが三つ。

科学力。

領土。

そして──式術。


俺は、思いついて言った。


「エルデネ──この人を、ガリアの民と言うことにしたらどうでしょう」


「なに?」


「ダゴス市長は、エルデネを見て、カラミティアル、と言っていました。

式者としてのランクは相当高いはずです。それを国民ということにしてしたら──ランクアップに影響しますか?」


俺が言うと、ロイスは目を見開いたあと、少し考え込んだ。

「確かにそれは──可能性はある。だが──アーカーシャを騙すのは──危険が大きいか……」


悩んでいる。

倫理観や、危険性との兼ね合いのようだ。


ここは──押しどころだ。


「過去、ガリアがランクBになったことはあるんですか?」

俺は、ロイスに聞いた。


「──ない。十五年前にランクC認定されたばかりだ。

その時は、ダゴス師匠がすさまじい活躍をしたと聞いている。

我々も文明の発展を急いでいるが──

科学レベルで言うなら、あと数十年──いや、百年以上はかかるだろう」


「もしランクBになったら、帝国から科学技術の提供があるんですよね?」


「ああ。恐らく、飛躍的な発展ができるはずだ。アーカーシャ中枢部は、我々の数百年先のレベルと聞いたことがある」


「少しの危険で、百年を買える、ってことですね」

俺は言った。


ロイスの心が、大きく動いた音が聞こえる。


「──何か考えがあるのか?」


乗ってきた。


策を聞いたら、人は実行してみたくなる。


悔しいけど──これも父さんの口ぐせだ。


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