第三十話 パルファム出発と、今日の食材と。
「ガリアには、使者を出しておいた。わしの知人がいくと伝えている。
──多少は便宜を計ってもらえるはずだ」
出発に際して、ダゴスが言った。
「ロイスという現在の市長に会え。首都の市長ともなると、ブルドアの国王との面識もある。国境を超える上ではやつの力は必要だろう」
色々と根回しをしてくれているようだ。
やっぱり、本当はいい人な気がする。
「お前ら、色々世話になったな。旅が終わったら、パルファムにも寄ってくれよ。
少しはまともな街にしておくぜ」
ファングが手を挙げた。
肩書は副市長。自分で作ったらしい。
「とりあえず、ダゴスに科学の便利さとやらを証明してもらおうと思ってる。
俺をあんなとこに閉じ込めた償いをきっちりしてもらうぜ」
ファングの言葉に、ダゴスは気まずそうにしているが、なんやかんや連携は上手く行っているようだ。安心する。
「じゃあ、アーカーシャ帝国の秘密を探りにいってくるぜい!じゃあねー」
エルデネはのんきにそう言うと、馬車を走らせた。
ブルドア国の首都ガリアまでは、馬車で二日間くらいかかるらしい。
途中、いくつかの街を通るようだ。
ダゴスからもらったアーカーシャの地図を見ていると、
キセキが呟いた。
「ブルドアの外のことは、何にも書いてないんだね」
そう。
地図に書いてあるのは、ブルドア東端のガリアまで。
それ以東は──真っ白だ。
ダゴスが言った通り、情報がないのだろう。
ブルドアの隣国、ドラールという国がどんな国で、
どんな科学水準なのか。
不安と期待が入り混じった感情が胸をよぎる。
「メイ、今日は野宿になるだろうから、また修行してくれ」
ラウルが言った。
「なに、あんたこの前の戦いで味をしめたの?
殺さないように相手を倒すっていうミッションはクリアしたけど、
いっとくけど剣技はまだまだだからね」
「分かってるよ。だからこそ修行だ。これからまたどんな敵が出てくるか分からないだろう?」
そんな会話をしている。
「……ラウルさんはすごいね」
俺の隣で、アイネが呟いた。
「あんなに頼りになるのに、まだ成長しようとしている」
ラウルを見る目が──少し潤んでいる。
アイネの言う通り、ラウルはすごいやつだと思う。
だが──簡単には同意できない。
俺は小さくうん、そうだね、とだけ言った。
そう。嫉妬だ。これは、嫉妬の感情だ。
自分の小ささが情けなくなる。
俺は──この旅で成長することができているのだろうか。
「私にもできること、ないかな」
アイネが言った。
彼女もまた──何か役に立ちたいと思っている。
俺は──アイネがいてくれるだけでいいだけど。
でもそれを口にしてしまったら、アイネの気持ちを踏みにじることになる。
答えに困っていると、メイが叫んだ。
「エルデネ!止めて!──夕飯見つけた!」
馬車が止まると、メイはラウルと一緒に馬車を飛び出して言った。
森の中に入ってしばらくすると、イノシシを仕留めて帰ってきた。
……たくましい。
獲物を見つける能力も、それを仕留める能力も、一体どこで教わったのか。
メイの住んでいるセブンスロッドは山も多いから、そこでカイ叔父さんにでも教わったのかもしれない。
こうしてその日の食材は決定した。




