第二十七話 いざご対面と、ダゴスの正体と。
俺は、全員に「ブースター」をかけた。
自分の体からエネルギーが伝わっていくのが分かる。
ただ、俺自身が疲れるとか、そう言った感じはなかった。
式力には上限があるとか聞いていたが──そもそもこれって式術なのかな。
「うおっ。なんかすごいな。体から力が溢れてくる」
ラウルが少し興奮気味に言った。
「ね。いいでしょ」
メイがなぜか誇らしげに言った。
準備が整うと、展開は早かった。
駆けだすメイに続いて、ガンダル、ラウル。
そこに群がる盗賊団を捌いていく。
俺たちはその合間を縫って、市庁舎の中に乗り込んだ。
中には市政を行う職員たちがいたが、突然の来訪者に驚いているだけだった。
特に、ファング。
その顔を見ると、歓声にも近い声が上がった。
「ファングさん!」
「出てきたんですね!」
旧知と思われるメンバーから声がかかる。
「おう。久しぶりだな。──話はあとだ。ダゴスは市長室だな?」
ファングは言った。
職員たちは頷く。
「市長室は最上階だ。行くぞ」
ダゴスの号令に合わせて、俺たちは階段を登った。
──別の都市からやってきた男、ダゴス。
アーカーシャについても詳しいはずだ。
市長室につくと、ファングは大きく扉を開けた。
「ダゴス!来てやったぞ!」
ファングが大きな声を出す。
部屋の中には先ほどの式術者──バジャとグラムがいた。
その奥に──五十代くらいの小太りの中年が座っていた。
あれがダゴスか。
「なっ……!護衛の連中はどうした!」
ダゴスが叫んだ。
「ガンダルたちが相手してるぜ。ただの賊なんて、足止めにもならない」
ファングが言った。
「貴様ら、こんなことをしてただで済むと思うなよ。
わしは……ガリアの名誉市長だぞ」
──月並みな台詞。本当にこんな悪党いるんだな。
「また過去の栄光の話か。そこを追い出された腹いせに、この街をめちゃくちゃにしているのか?」
ファングが続ける。
「なにを言っている。わしはこのパルファムをDランク……ゆくゆくはガリアと同じCランクに引き上げようとしてやっているんだぞ。この辺境の街がランクを上げるには、土地を広げるしかなかろう」
ダゴスにはダゴスの信念があるようだ。
が──。
「そのランクに意味はあるのか?──俺たちは、別に今の暮らしに不満を感じていない。
お前の欲望に、勝手に市民をつき合わせるんじゃねえ」
正論だ。
ファングが民から慕われていた理由が、なんとなく分かる。
きっと、よく民の声を聞き、民のことを考える市長だったのだろう。
「話しても無駄か。なぜわしが名誉市民だったか、教えてやろう」
そう言うとダゴスは立ち上がり──手をかざした。
手のひらに、火の球ができあがる。
よく見ると髪が赤っぽい。
──式術者だったのか。
「この火球を出せるのは、ガリアでもわしくらいだった。
──ランクB式者。それゆえに、アーカーシャから危険視されてしまったがな」
不敵な笑みを浮かべながら、こっちを見ている。
横にいるバジャとグラムは──不安な顔のままだ。
そりゃそうだ。
つい先ほど──あの火球の数倍以上のものを目の当たりにしている。
すると。
俺の横で、エルデネが人差し指を突き出した。
指から、凝縮された火線が一直線にダゴスの元へ向かう。
その火線は、一瞬でダゴスの火球にぶつかり、手元で爆発した。
「うわっ!熱っ!……なんだ今のは」
ダゴスは弾けた火球の飛び火に驚いている。
──相手が悪い。
エルデネが、一歩前に出る。
「こんな室内で火球出してどうすんのさ。
──やるなら、外でやろうよ」
エルデネのその髪は、真紅に燃え上がっている。
「式術者!?その色は……ランクA……いや、カラミティアル……」
ダゴスはエルデネを見て、格の違いを瞬時に察したようだ。
「よくわかんないけど、戦うの?」
エルデネは言った。
ダゴスは、少し逡巡したあと、目を伏せた。
「……何が望みだ」
戦意喪失。
「とりあえず、話をしませんか」
俺は言った。
人にはそれぞれ背景があり、思惑がある。
それを理解することで、物事は驚くほどうまく行く。
処世術?
いや、めんどくさい父親の小言だ。




