第二十六話 市庁舎と、ダゴスの私兵と。
バジャとグラムを追って行くと、
地下牢の隣──大きな建物に入っていくのが見えた。
これが、市庁舎だろう。
「どうする?中に乗り込む?」
メイが目を輝かせながら言った。
「いや、敵の巣の中に飛び込む必要はないだろ。
多分──お仲間を引き連れて出てくるよ」
俺は言った。
「ガンダルさん。騎兵団以外の戦力はこの街にありますか?」
「俺が把握している限りではないな」
ガンダルが答える。
「詰めが甘えよ。ダゴスみたいな小心者が──私兵を持っていないわけないだろう」
ファングが言った。
「え?いや、そんな気配は……」
「私兵が街の中にいるとは限らねえぞ。人が住める場所はいくらでもある。
──ほら、見てみろ。あの軍団。見たことねえか?」
ファングが指さした方向には、武装した男たちが市庁舎を護るように取り囲んでいた。
「あれは……最近街の周辺に出没する盗賊団だ。ダゴスのやつ……繋がっていたのか」
ガンダルが、怒りをにじませる。
「街を守る騎兵隊には地上げ屋をさせて、犯罪集団を子飼いにする。
──やっていることはめちゃくちゃだね」
エルデネは、呆れつつも、何故か少し嬉しそうに笑った。
「すがすがしいくらいの悪党だ。──つぶしがいがある」
その笑顔は──まるで悪魔のように凍って見えた。
「ちょ、ちょっと待てエルデネ」
右手を掲げ、火球を作り出そうとするのを止める。
──そのまま、市庁舎ごとぶっ壊しそうだ。
「なに?──まさか、ダゴスと話をするとか言わないよね?」
──なんで俺の考えが分かるんだ。
俺の表情を見て、エルデネはため息をついた。
「……やっぱり親子だねえ。ユイトも同じこと言うよ、きっと。
どうせ、会話すれば伝わるかもしれない、とか言うんでしょ。
まあいいや。ここまで持ってきたのはアラタだから、好きなようにしな。
私はアラタの指示で動く」
──エルデネは勝手に納得したようだが、別に俺はそんなこと考えていない。
俺はただ、ダゴスがなぜランクを上げようとしているのか、
この街で何をしようとしているのかを知りたいだけだ。
いわば──ただの好奇心だ。
どう聞いても極悪非道のダゴスが、話してどうにかなるなんて思っていない。
っていうか、父さんはそんなに甘い判断をしていたって言うのか?
よく戦乱の時代を生き残れたな……。
「あの盗賊団は私たちが相手しておくわ。ね、ラウル」
メイが言った。
「俺?いきなり実戦かよ」
ラウルが目を丸くする。
「あと、ガンダル。あんたもね。エルデネは式術者の対応した方がいいし、
ファングはダゴスと決着つけたいでしょ。というわけで、二手に分かれるわよ」
メイが仕切っているが──本音は戦いたいだけなんじゃないか?
「そうだな。それで行こう。ファングさん──後ろ任せてもいいですか?」
俺は話をまとめた。
「しんがり、ってやつだな。任せとけ。ガキどもを守れってことだな」
ファングはそう言ってキセキとアイネの肩に手を置いた。
──おい、こら。
「ガキじゃないよ。──僕だって戦える」
キセキはそう言ってファングの手を払った。
「ははっ、そうだな。お前のおかげで地下から脱出できたんだもんな。
悪い悪い。じゃあ、ダゴスの野郎に会いに行こうぜ」
ファングは悪気なく笑った。
強引さやその陽気さは、どことなく──ハルカゼ叔父さんに似ている気がする。
ハルカゼ叔父さんはトランジアの代表であり──親友だ、と父さんは言っていた。
アルカディアに遊びに来るたびに大騒ぎする叔父さんだ。
とにもかくにも、布陣は決まった。
いざ──ダゴスにご対面だ。




