第二十二話 作戦会議と、漏れる本音と。
「じゃあ、作戦について打ち合わせよう。
まず──エルデネ、紫の式術は使えるよな?」
俺は聞いた。
全ての式が二式以上、とエルデネは言っていた。
であれば、幻惑の式術くらいは使えるはずだ。
「もちろん。ドリームヴェールを使えば、看守たち全員夢の国だよ」
エルデネは胸を張って言った。
「なんだよそのドリームなんとかって」
「ドリームヴェール。あれ、ユイトが名前つけたってミサキが言ってた気がするけど」
……まさかの父さん命名。
〝インフェルノ〟とかと比べると少しダサい気がする……。
「……まあ、いいや。その式術を使えば、看守はクリアだな。
じゃあ、あとはラウルがカギを開ければオッケーだ」
「鍵開けは久しぶりだなあ。うまくやれっかなあ」
ラウルは遠い目をしている。
……本当に、こいつの過去はどうなっているんだ。
俺と一つしか変わらないというのに。
「ラウル、頼んだ。ガンダルさん、看守が手薄になる時間帯はありますか?」
「──まあ、夜だろうな。ただ、地下牢の場所が悪い。
──市庁舎の真横、ダゴスのお膝元だ」
「……側近の式術者が出てくると厄介ですね」
「騎兵団を使って、嘘の情報を流しておく。
──市の郊外に式術者が現れた、とかな。そうすれば、やつらはそっちに向かうだろう」
「うん。いいですね。そうしましょう」
俺とガンダルが話をしていると、エルデネがにやにやしている。
「……なんだよ」
「んー?いやあ、すっかり軍師だなあと思って」
「……なんか悪意を感じるんだけど」
「まさかあ。少年が大人に変わる瞬間を見て、嬉しくなっているだけだよー。
あー、なんかアレクシオと会った時を思い出すなあ」
アレクシオ叔父さん?
──もとい、アレクシオ王。
エルデネは、王が子どもの頃を知っているのか。
まあ、そりゃそうか。実年齢は推定四十すぎ。
見た目のせいで、頭がおかしくなりそうだ。
「アラタ、僕は何をすればいいの?」
キセキが聞いてきた。
「役割とかは考えてなかったなあ。でも、キセキは違和感に気が付くのか得意だから、
注意深く周りを見ていてくれ。なんかおかしいと思ったら、すぐ教えてほしい」
「間違い探しだね。りょーかい」
良い返事だ。さすが、可愛い弟分。
「とりあえず悪そうなやつがいたらぶった切ればいいのね?」
メイが言った。
「……物騒なことを言うな。極力、戦闘は避けよう。できれば、目指すは無血開城だ」
「あんた、難しい言葉使うのね。〝血が騒ぐ〟って言葉、知らないの?」
「……多分、意味は違うと思うぞ。とにかく、できるだけ穏便にファングさんを救い出そう。
もしかしたらだけど、ダゴスたちも話せば分かってくれるかもしれない。ガンダルさんみたいに。ね?」
俺はガンダルを見た。
「……その可能性は薄いと思うがな。まあ、お前なら、あるいは」
ガンダルは言った。
──いつの間にか、ガンダルから一定の信頼をもらっていたようだ。
何だか大人に見とれられたみたいで、嬉しい。
「私は──足手まといになりそうだから、留守番していようかな」
アイネが言った。
「駄目だよ!……アイネ一人でなんて、心配で置いてけないよ」
俺はつい、言ってしまった。
そして周りがじーっと見つめる中、変な空気になる。
──俺は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
何故かアイネも、赤くなっている。
「これは俺たちの冒険なんだから、みんなで行こう!
みんなで作戦をやらなきゃ意味がないだろ!」
……まるで子どものような論法でごまかしてはみたものの、
エルデネとメイはにやにやしている。
ちくしょう、何かに──気が付きやがったな。
「出発は夜!キセキ、散歩にいくぞ!」
俺はそう言って無理やり弟分を連れて会議室を出た。
後ろは、振り返らない。
「ねえ、アラタ、顔が真っ赤だよ。熱でもあるの?」
──キセキの無邪気な一言が、俺の胸をえぐる。




