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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第三章 ブルドア国パルファム市

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第二十話 ガンダルの答えと、パルファムの闇と。

「アラタやるじゃん。ユイトみたいだったよ」

エルデネが言った。


それは──喜ぶべきなんだろうか。

何だか複雑な気持ちになる。


そりゃ、父さんからの教えを意識したんだから、そうなるだろう。

だけど──交渉したのは俺だ。


もう少し俺自身を見てほしい、とは思う。


まあ、エルデネと言うより──アイネに見てほしくて頑張ったんだけど。


「父さんがいくら話しても話が進まなかったのに……アラタ、すごいね」


そのアイネが俺を見て喜んでくれている。


それだけで、無理をして頑張った甲斐がある。


だが。


「まだ、どうなるか分からないからね。交渉決裂、即戦闘という可能性だってある。

皆、準備しておこう」

俺は言った。


父さんは何がすごくて国の代表になったの?と聞いた俺に、父さんはこう言った。


「何もすごくないよ。ただ、色んな人に助けてもらってるだけだ。

その意味では、誰かに頼る力はあるのかもな。

あとは、常に油断はしないようにしてたかな。

最悪の事態を想定した上で、最高の結果を出す。それが一番気持ちいいからな」


父さんと長く話したの何てもう何年も前のことだけど──


なぜだかよく覚えている。


最悪の事態を想定しておこう。


俺は、気を引き締めてガンダルの回答を待った。



ガンダルは、それから三十分くらいして戻ってきた。


剣は──腰に刺さったままだ。

覚悟を決めたような表情をしている。


どうやら──


「待たせたな。騎兵団の合意は取れた。

──あとは、進め方について相談したい」


上手く行ったようだ。

俺は胸を撫でおろす。


後ろでメイが舌打ちをしたようが気がしたが……聞かなかったことにしよう。


「良かった、アラタ!」

アイネが、俺の腕に飛びついてくる。


──ちょっと、アイネさん、刺激が強すぎる。


俺は表情を取り繕いながら、ガンダルと対峙した。

右手を差し出す。

「ガンダルさん。ありがとうございます。」


ガンダルは、その手を見つめながら、兜を外した。

──意外と若い。二十代くらいか。

兜をしていると分からなかった。


「握手はまだだ。具体的な方向性が固まってからだ。

ついてこい。騎兵団の会議室がある。──馬車ごとでいい。前後は俺たちが囲む」


ガンダルはそう言うと踵を反した。


完全合意、とはならなかったが、大きな前進だ。




街の中に入ると、どこか田舎の街のような景色が広がる。

科学の気配はしない。

ただ、人の活気はあった。

大通りでは両脇に市場のようなものがあり、食糧品を販売している。

昔旅行で行った、マルカドールみたいな雰囲気だ。


──確かに、みんな灰色の髪をしているな。


俺たちは、ガンダルから渡された布を頭に巻き、

髪を隠していた。


それくらい、式術者というものは希少なのだろう。


路地を抜けると、騎兵団の拠点らしき大きな建物に着いた。

馬車を置き、ガンダルにつづいて中に入る。


会議室は、円卓になっていた。


──まるでテオロッドの王宮みたいだな。


「改めて自己紹介だ。ガンダル=ダライアス。パルファムの騎兵団長をやっている」


俺は、エルデネの方を見る。

普通、こういうのは代表者が名乗るものだろう。


しかし、エルデネは顎を上に振った。


──え?俺?


「あ、えーと、アルカディアのアラタ=カタギリ。仕事は──学生です」


改めて、自分が肩書も何もないただの学生だということを実感する。


「アルカディア……?聞いたことのない国だ。ランクはいくつだ?」


「ランクは分かりません。説明は難しいんですが……俺たちは、別の大陸から来たんです」


少し迷ったが、嘘をついても仕方がない。


「別の大陸?ユグラシア以外の大陸に──人が住んでいるのか?」


……どうやら、ガンダルもテムルたちと同じ認識のようだ。


「ロッド大陸というところからやってきました。こちらの大陸──ユグラシアでは、認識されていないようですが」


「……俺たちパルファムが最も辺境の国だと教わってきた。

辺境と呼ばれても──俺はこの国が好きだがな。

しかし、ランクのない大陸なんて存在するんだな」


ガンダルは指を組んだ。

こちらの大陸では、街や国にランクがついていることが当たり前ということだろう。


「ユグラシアでは、式術者は珍しいんですか?」


「ユグラシアというより──パルファムだな。Cランク以上の国にしか存在しないと聞いている。

俺は──本物の式術者に会ったのは初めてだ」


「Cランク以上の国には行ったことないんですか?」


「アーカーシャ帝国内では、上のランクの国には入れない。──入れば、見つかり次第殺される。

それが常識だ」


徹底された管理社会。

そんなイメージが湧いた。


「お前たちが式術者である理由は何となく理解はできた。だが──ダゴス市長の件は、どうやって進めるつもりだ」


「そもそも、ダゴス市長はいつからパルファムに?」


俺は聞いた。

ガンダルに話した内容は──ほとんどハッタリだ。

こっちが持っている情報なんてないに等しい。

まずは、情報を集めなければ。


「……半年ほど前だ。ガリアからやってきた。本人は街の立て直しのためと言っているが──左遷だろうな。あまりに能力が低すぎる」


恐らく上司にあたるダゴスのことを、ガンダルはそう言った。

──よほど愛想が尽きていたのだろうか。


「能力?」


「あれは──為政者ではない。ただのエゴイストだ」


「何があったんですか」


俺が聞くと、ガンダルはため息をついた。


「……バリアス草原の接収もそうだが、まず俺たちに領土の拡大を指示した。

強硬手段も辞さない、とのことだ。

この間、街への魔獣被害は増えているが──対処を禁じられている。

領土拡大を優先しろ、とな」


めちゃくちゃっぽいな。

民の安全より、領土拡大が大事と言うことか。


「表向き、街全体の地位向上のためを謳っているが──皆気が付いているさ。

ダゴスは、自分の保身と名誉のために動いていると」


「辞めてもらえばいいんじゃないの?」

キセキが言った。


その通りだ。

血統第一の王政でもない限り、人々の意向で市長くらい変えられるんじゃないのか。


「市長を決めるのは、帝国だ。それに逆らえば──アーカーシャ帝国から外される」


「外れたら、何か困るの?」

キセキが、素朴な疑問を次々とぶつけていく。


「……考えたこともなかったな。このユグラシアで、アーカーシャ帝国に逆らうものなどいないと思っていたからな」


「思っていた?」

俺は聞いた。


「いるだろう。そこに」

ガンダルは、アイネを指した。


アイネは、少し戸惑いながらも言った。


「──ユルガン族は、自分たちらしく生きているだけです。別に、アーカーシャに逆らっているつもりはありません」


ガンダルは、それを聞くとふっと笑った。


「……自分たちらしく生きる、か。そうだな、それが一番大切なのかもしれない」


何か──昔を思い出す表情をした。


「ダゴス市長が来る前は、パルファムは〝自分たちらしく〟生きていたんですか?」


「ああ。前の市長は、街のランクにも、科学の発展にも興味はない人だったからな」


「その人は今──何をしているんですか?」


「ダゴスによって、投獄されている。名前はファング=ダライアス。

──俺の兄だ」


……なんとなく、この後の道筋が見えてきた気がする。



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