第十七話 パルファム到着と、気掛かりと。
「なんか……古臭いね」
パルファムの門に到着したメイの第一声はそれだった。
──確かに、今時あまり見ない石造りの門。
テオロッドの門にも似ているが、あれは歴史的建造物的な扱いだ。
この街は──ひと昔前の街並みの印象だ。
科学の気配がしない。
「まずはどこから行こうか。例の新しい市長について情報収集してみようか」
エルデネが馬車を止めると言った。
「待ってエルデネ。あの兵士──ガンダルだっけ。
僕らを見るなり顔色が変わったから、多分この街で式術者は動かないほうがいい」
キセキが言った。
鋭い洞察。
エルデネの赤ももちろんだが、俺の橙、キセキの赤紫も多分この街では異物だ。
街を歩く人々を見ていると、皆灰色だ。
不思議と、アイネのような黒髪は見かけない。
「じゃあ、ここは俺たちが動いた方がいいな。メイ、行くぞ」
「なんであんたが仕切っているのよ」
ラウルが先に歩き出し、メイがそれに付いていく。
──昨日の剣術練習といい、なんやかんやあの二人仲がいいな。
「私も、道案内に行きます」
アイネが言った。
「おっ、それは助かる」
ラウルが答える。
──アイネ、行っちゃうのか。ちょっと寂しい。
「じゃあ、私たちはここで待ってるね。情報入ったら戻ってきてねー」
エルデネは馬車に戻ると、座り込んで目を瞑った。
──寝るつもりだな。
エルデネはしかしよく寝る。
案外、年を取らない秘訣は睡眠なのかもしれない。
帰ったら母さんに教えてあげよう。
母さんと言えば──親たちは一体何をしているんだろう。
あれから、一切の通信がない。
特にミサキ叔母さんなんてキセキを心配しているだろうから、
何もなくともエーテルリンクで繋いできそうだが。
エルデネが寝てしまったので、俺とキセキの二人だけになった
「キセキ、あれからミサキ叔母さんから連絡ないのか?」
俺は聞いた。
「うん。ないよ。おかしいよね。絶対連絡してくると思ってたんだけど」
「……だよな。テリーズ叔母さんはしなそうだけど、うちの親たちはしてくるよな」
「もしかしたら、通信が断絶しているのかもね」
「え?」
「この大陸のことだって、母さんは分かっていなかった。
〝大いなる意志〟に接続できる母さんなら、なんでも分かるはずなのに」
「なんだよ、その〝大いなる意志〟って」
「なんか、世界の記録みたいなもの。精神世界でしか接続できないから、紫の高位式者だけが繋がれるんだって。──でも、そこにこの大陸の記録はなかったんだ。あったのなら、大人たちは知っているはずだから」
「……なんか怖い話だな」
「わくわくするよね」
「……お前のその性格羨ましいよ」
俺は、わくわくより恐怖の方が強い。
大人も知らない、謎の大陸。
存在しないとされていた、文明、そしてそこに住む人々。
──俺たちだけで、本当に大丈夫なんだろうか。
でも、キセキの前で不安な顔は見せられない。
俺は、少し表情を隠した。




