第十六話 修行の後と、命名と。
草原の夜は暗い。
アイネの言う通り魔獣の気配は感じなかったが、
焚き火の明かりがなければ何も見えない暗闇だっただろう。
「アラタ、ごめん!本当に……大丈夫?」
アイネは、心配そうに言った。
正直、大丈夫ではない。
あちこちに石がぶつかって、あざになっている。
が。
「うん。大丈夫。アイネは何も悪くないから、気にしないで」
「まるで私が悪いみたいな言い方じゃーん。で?発動した?」
エルデネは俺のあざを治療しながら言った。
母さんほどじゃないが──みるみるうちにあざが消えていく。
「何度かは。でも、あの時ほど強いのは出なかった」
「うーん。結構危機的状況じゃないと出ないのかな?
まあ、少しずつ練習しよっか。で、名前は決めた?」
名前……そうだった。忘れてた。
「僕の方は、決めたよ!」
キセキは嬉しそうに言った。
「何にしたんだよ」
「紫炎!」
「そのまんまじゃねえかよ……」
俺が呆れて言うと、キセキはちっちっ、と指を振った。
「形状によって名前を変えるんだよ。紫炎・剣型とかね。
剣型で木を伐採するのはできるようになったよ」
む……それは悪くない気がする。
「……応援と防御じゃ駄目かな」
俺が言うと、エルデネは首を横に振った。
なんでそんなにこだわりあるんだよ。
「じゃあ……ブースターとガーディアン」
俺が言うと、一同がしーんとなった。
「なんだよ!力を増幅するブースターと、身体を守るガーディアン!いいだろ!」
俺は少しむきになった。
「うん……アラタっぽくて……いいんじゃないかな」
キセキが、少し大人な目をしながら言った。
「むきになってて可愛いな」
メイはふっ、と笑った。
「まあ、本人がいいならいいだろ」
ラウルはこっちも見ないで言った。
……どいつもこいつも分かってない!
「まあ、それでいっか。皆も覚えておこう。いざというときに指示出せるように」
エルデネは、どっか無理やり納得したように言った。
「エルデネのその炎はなんて名前なんだよ!」
俺は腹いせに言った。
「一番でかいのは、〝インフェルノ〟。あとは、〝フレアバースト〟とか、〝フレアショット〟とか」
む……なんか、かっこいい。
「まあ、つけたのはタツオなんだけどね。私は特に名前つけてなかったから」
そういうとエルデネは笑った。
「父さん……やるな」
キセキは顎に指をあてて呟いた。
確かに。人は見かけによらないものだ。
少なくとも俺の知っているタツオ叔父さんは──技の名前とか考えそうにない。
「さて、今日はもう休もうか。明日はパルファムに向かってしゅっぱーつ!だね」
「俺は明日操舵しねえからな!」
ラウルが言った。
「ラウルは多分筋肉痛で腕上がらないもんね」
メイが笑った。
「うっ、うるさい!上げられるわ!っ……いててて」
ラウルは腕を上げると痛そうにした。
──相当、修行したんだろう。
俺も、頑張ろう。
少しずつでもいいから──役に立てる人間になりたい。
横に座るアイネをちらっと見ながら、俺はそう誓った。
焚き火の明かりが、アイネの顔を美しく照らしていた。




