第百二十六話 ユイト=カタギリの正体
それから、大人たちが色んな話をしていたが——正直、俺はあまり聞いていなかった。
ちらちらとアイネの方を見ながら、たまに目が合って嬉しくなったりしていた。
しょうがないだろ。
思春期なんだよ。
話が終わると、父さんは俺に端末を渡した。
「アラタ。いつの間にかお前も立派になってたんだな。俺は嬉しいよ」
父さんに褒められるのなんて——何年ぶりだろう。俺は照れ臭くて、うまく笑顔を作れなかった。
「——で、どうするの。これから」
俺が聞くと、頭を掻きながら父さんは言った。
「正式に国交を結ぶ。言ってしまえば——大陸間同盟だな。向こう、ユグラシアに一度行かないといけないが、母さんが許してくれるかな」
「……だったら、みんなで行けばいいじゃん。どうせ、仕事は一年先まで終えてきてるんでしょ?」
俺が特に考えなしに言うと、父さんは手を叩いた。
「そうか!家族旅行だ!アラタ、昔約束したっきり——行けてないだろ。そうすればいいんだ」
「そんなことより——二人とも。俺たちに話すことがあるんじゃないの?」
俺は父さんとタツオ叔父さんを見た。
俺の横で、キセキも同じ目をしている。
追求の目。
父さんはそれで察したように、ため息をついた。
「おい。タツオ。お前のせいだぞ」
タツオ叔父さんはいつもの表情だ。
「そろそろいいんじゃない?もう、子どもでもないし」
「成人したら言おうと思ってたんだけどなぁ。くそ、一緒に酒を飲みながら話す予定が……」
「ユイト、酒なんか飲まないじゃん。ミサキじゃあるまいし」
「……そういや、イエナとミサキは?」
「これから汽車で向かうって。今日中には着くんじゃないかな。テリーズとカイも、船で向かうってさ」
その話を聞いて、俺は少し震えた。
——さすがに怒られるんだろうなぁ。
今にもエーテルリンクが来るかもしれない。
やはり、父さんとは怖さの質が違う。
そして……ミサキ叔母さん。
あの人がキレたら……想像もつかない。
横を見ると、キセキがカタカタ震えていた。
どうやら気持ちは一緒のようだ。
俺は、その気持ちを振り切って父さんに言った。
怖がっていても仕方ない。
「母さんがミライとかユフィアを連れてきたら話せないだろうから、今のうちに教えてよ。——父さんたちは、何者なの?」
俺は、気になっていたことを聞いた。
文脈判断ができないほど、子どもじゃない。
父さんとタツオ叔父さんは——きっとこの世界の人間じゃない。
父さんは、しばらく黙って俺を見ていた。
それから、諦めたように話し始めた。
俺たちの知らない——親たちの物語を。




