第百二十五話 俺の知らない物語
アーカーシャとの対話は続いた。
『アラタの式力は非常に興味深い。これまでに類を見ない力です』
アーカーシャは言った。
「ほう。四千年の式術の歴史の中でも、見たことがない、と」
サイレス叔父さんが言った。
『自動的に体を守る力。それに、力を増幅させるという力。もはやそれは、式術なのかすら分かりません。それにキセキ。式を奪い取り、操る式術などこれまでの歴史にはありません』
「お前、そんなことやったのか」
タツオ叔父さんはキセキを見た。
『アラタ、それにキセキ。二人の力はこれまでの式術とは大きく異なります。まるで、突然この世に現れた力のようです。ユイト。何か理由を知りませんか』
「アラタは生まれた時から陽気な髪の色してるからなぁ……」
父さんは見当違いなことを言っている。
タツオ叔父さんが一人でぶつぶつ言った後、話した。
「アーカーシャ。もしかしたら、それは僕らが別の世界から来たことが原因かもしれない」
——は?
別の世界?
『あなたたちはこの世界の人間ではないということでしょうか?』
「そう。遥か昔の世界の人間。多分、アーカーシャよりも先輩だよ」
俺は、父さんを見た。
なんの話だよ?
父さんは、小さく頷いた。
——マジかよ。
なんだよその衝撃の事実。
「僕は、ノクスとの戦いの後——黒の式について調べた。式力の根源、式術の仕組みについてね。ノクスが残した数式がある。あれと僕の研究を合わせて、アーカーシャに伝えれば、何か分かるかもしれない」
『タツオ、それは素晴らしい提案です。式術の解明を数学的にアプローチしていたのは、フラーシャです。彼は、大抵のことは数学で解決するという思考でした』
「お前と気が合いそうだな、タツオ」
父さんが呟いた。
「そうだね。次の目標は——フラーシャを復活させるってのもいいかもね」
なんだか、俺の知らないうちに大人たちが盛り上がっている。なんにせよ——大陸間戦争みたいなことにはならなそうでよかった。
難しいことは大人たちに任せて——アイネにテオロッドの案内をしたいなぁ。
俺はそんなことを考えていた。




