第百二十話 フォーリナー号
「え?船?」
俺は聞き返した。
ラウルは当たり前という顔をする。
「フォーリナー号。置いて帰るわけにはいかないだろ」
確かに。
一応、父さんたちが旅した船ではあるが……。
「……でも、さすがに船でまた戻るのは大変じゃないか?」
もはやエアバスの便利さを知ってしまった俺としては——往路のあの苦労を思い出すと、船に乗る気にはなかなかなれない。
それに。
「あの船、まだ残ってるかな」
ユグラシアに到着し、船を停めたのは、かれこれ半年近く前。
その間に流されていたり、朽ちているかもしれない。
「波の影響の少ない洞窟に錨泊したから、問題ないはずだ。俺は、一人でも船で帰るぜ」
ラウルはそう言った。
——こうなると中々頑固だ。
俺はエイナを見る。
一秒でも早くロッドに行きたいと言っていた。
反対するに決まっている。
かと言って、いきなりエイナたちだけがロッドに行くわけもいかない。
俺が悩んでいると、メイが言った。
「私も船で帰るわ。ラウル一人じゃ寂しいでしょ」
「……俺は別に一人でもいいけどな」
「へぇ。強がっちゃって。可愛くないわね」
メイとラウルが掛け合いをやっている。
——もしかして、なんやかんやいい感じなのか?
いじるとめんどくさそうだから放っておこう。
「じゃあ、船を停めたところに一旦向かおう。
その後二手に別れて——カムイで落ち合おうか」
「私も船に乗ろうかなー。海はやっぱり船で超えたいし」
エルデネも手を挙げる。
「——僕も船に乗る。シードラの民は、海の民だ」
タガロも手を挙げた。
「操舵できるやつがいた方がいいだろ?——まだ何の役にも立ってないから、それくらいは手伝わせてくれ」
「できるのか?帆船だぜ?」
ラウルは少し嬉しそうに言った。
タガロは頷く。
「——昔、父さんとよく乗っていた。まだ、十八将になる前だけど。細かいところは——ラウル、教えてくれ」
タガロも、少しずつ馴染み始めているようだ。
ちょっと、安心する。
「カムイとは、どんな国ですか。行く価値はありますか」
エイナが俺に聞いた。
「ロッドの最北端だ。大きい島で——極寒の国。コラルに似ているかもしれない。自然が豊かな国だ」
「他には?」
「うーん……飯は美味かったな。海鮮料理」
「行きましょう」
エイナは即決した。
エアバスに乗り込むと、俺たちはラウルの案内で着陸した場所に向かった。
——よく覚えてるな。
俺は熊に襲われたことしか覚えてない。
「あ、この辺りだ。停めてくれ」
ラウルの指示で、エアバスは地上に降りる。
ラウルはバスを降りると、海辺を歩いていった。
しばらく経つと——洞窟から、フォーリナー号に乗ったラウルが海辺に出てきた。
無事だったみたいだ。
船の耐久力もだが、ちゃんと安全な場所を選んだラウルもさすがだ。
ラウルがこちらに手を振っている。
そのまま、海辺に船をつける。
「よかったぜ。この船なくなったら、じいちゃんに殺されちまう。——やっぱり、機械の乗り物より帆船がいいな」
ラウルは無邪気に笑った。
ここからは、エアバス組の俺、キセキ、アイネ、エイナ、ガゼリア、ザラミと——フォーリナー組のラウル、メイ、エルデネ、タガロに分かれる。
いよいよ、旅の終わりが近づいてきた。




