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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第二章 冒険のはじまり

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第十二話 ユルガン族の敵と、交戦と。

「テムル殿。そろそろ決断してもらえませんか」


──少し高い、男の声が聞こえる。

アーカーシャ側の、責任者だろうか。


「このあたり一帯の土地は──は私の物ではない。

──遊牧民族たち、みんなの土地だ」


「バリアス草原一帯の開発は帝国からも注目されているんですよ。

みんなの土地であるなら、アーカーシャが開発しても問題ないありませんよね?」


「……開発をすれば、どうなる。森は死に、草原は消える。私たちは、草原に生きる民だ。

死ねということか」


少し、テムルの語気が荒くなる。


「物騒ですな。ちゃんと住むところを用意しますよ。それに──莫大な財産も。

一生遊んで暮らせるんですよ?断る理由が分からない。

他の族長はテムルさんの判断にゆだねるって言ってるんですから、あなたさえ許可を出してくれれば開発は進められるんですよ」


「……ガンダル殿。今日の所は帰ってくれないか。客人が来ている」


「客人?こんなところに?中にいるんですか?」


「あ、おい、やめろ!」


ガンダルと呼ばれたアーカーシャの男が、ゲルの中に顔を覗かせた。

──瞬間、中にいた俺と目が合う。


「おや……可愛いお客さんたちですな。しかし……遊牧民ではない」


途端、ガンダルは腰に掛けていた剣を抜いた。


「お前たち、どこから来た。

──式術者が、なぜこんなところにいる」


「おい、客人は関係ないだろう!」

後ろから肩を掴んだテムルを、ガンダルは肘で振り払う。

テムルは後ろに転び、頭を打つ。


「父さん!」

アイネが駆け寄る。


「式術者がいるとは、厄介だな。

──まとめてお前ら全員連行する。

そうすれば、土地問題も片付く」

ガンダルが、剣を抜いて近づいてくる。

後ろに並んだ手下二人も、剣を抜いた。


「おい、お前ら。表に出ろ──やり合うなら、外だ」

低く凄んだ女の声がゲルの中に響いた。

──メイだ。

まるでテリーズ叔母さんのような迫力のある声。


既に、背中の剣を抜いている。


その気迫に──ガンダルたちは一瞬たじろぐ。


「なんだ、剣士もいるのか。──いいだろう。

死を望むなら——相手してやろう」


剣を構えたまま、ゲルの外へ出ていく。

見た目には、メイが押し返しているようだ。


それに続いてメイが外に出ようとする時──メイが俺に言った。


「アラタ。ついてきて。──あれやってほしい」


──あれってなんだよ。

俺は、訳が分からないまま外に出た。


「なんだか物々しい感じだねえ」

エルデネは、何故か口笛を吹きながら俺の後ろを歩いている。

──緊急事態と言うのに、余裕だ。


数メートル先に、剣を構えたアーカーシャ兵が三人。

それに、メイが対峙している。


「おい、メイ。あれってなんだよ」


「昔、私が喧嘩するとき、メイちゃん頑張れーってやってくれたでしょ。

あれよ」


──昔、良くメイは俺やキセキをかばって、男たちと喧嘩をしていた。

もちろん、剣なんてないが。


「あれやってもらうと、身体の切れが増すのよね」


そんなわけないだろ。


俺は、少しため息をついて、両手をメイの背中についた。


「メイ、頑張れ」


俺がそう祈ると──両手から何か力が湧いて、それがメイの中に入っていった。


──なんだ、今の──?


「ありがと、アラタ。──これで、三人相手にできるわ」


メイは剣を構えると──兵に向かって駆けだした。


──速い。


いつもより、はるかに。


その速度に追いつけない手下の兵は、一瞬でメイに斬り伏せられる。


「なっ……!」

ガンダルは、状況を一瞬で理解したようだ。


メイに一気に斬りかかる。

それを剣で受け、あたりには金属のぶつかる音が響いた。


「さすが、やるわね」

メイは──少し楽しそうな顔をしている。


エルデネは笑顔を讃えながら腕を組んでいる。


──あまりに、非現実的な光景。


幼なじみが真剣で、命のやり取りをしている。


そして俺はそれを見守ることしかできない。


その光景を呆けて見ていると──斬られた手下の一人が、起き上がった。

そしてそのまま──テムルとアイネの元へ走っていく。


──マズい。


俺は咄嗟にその間に向かって走った。


俺の目の前に──兵の剣が迫る。


あ……死ぬ。


そう目をつぶった瞬間。


髪がさかのぼる感覚と、身体からエネルギーが放出される感覚を覚えた。

目を開くと、目の前に見えない壁が現れ、剣を弾いた。


「なっ!なんだこれは」


──こっちが聞きたい。


今のは──何だ?


「アラタ!」

キセキの叫ぶ声とほぼ同時に──兵の背中に、紫色の火球が着弾した。


「ぐわああぁっ!」


背中に唐突な痛みを受けた兵はその場に倒れ、転げまわった。


──式術を使ったな。

そして、キセキの紫炎は、火ではない。

生体エネルギーそのものに近い、とサイレス叔父さんが言っていた。


──背中をいきなり大きな鈍器で殴られたみたいなもんだろう。

兵は悶絶している。


「テムルさん!……アイネ!大丈夫!?」

俺は後ろの二人に声をかけた。


「ああ……大丈夫だ。しかし、今のは一体なんだ?」

テムルは不思議そうに言った。


「俺も分かりません。……メイは!?」

俺はガンダルと戦いを続けるメイに視線を移した。


草原に、二人の剣士が対峙している。

──激しい応酬が終わり、膠着状態のようだ。


「……やるな。俺はアーカーシャ帝国領パルファムの騎兵隊長、ガンダル=ダライアス。

女、名前は」

ガンダルは言った。


「私はメイ=ムラサメ。あんたもやるわね。だけど……次で終わりよ」

そう言うと、メイは左足を一歩前に出し、剣を顔を横に付けた。

「あんまり使いたくはないけどね。……示現流に、二の太刀は要らないわ」


これは──カイ叔父さんの必殺技だ。


テオロッド式剣術のテリーズ叔母さんと違い──独特な動きをする剣。


「アラタ、人を殺しちゃっても──私を嫌いにならないでね」

メイはそう言って、足を踏み込んだ。

「一刀両断!」


凄まじい速度で切り出されたその剣は──しかしガンダルの剣によって受け止められた。

ひときわ激しい金属音が響く。


「ぐっ……」


ガンダルのうめき声の後──ガンダルの剣が、折れた。

身体に傷は負っていないものの──勝負はついた。


直後、エルデネが両手を叩いた。


「はいはーい。おしまい。ガンダルだっけ?早くそいつら連れて帰んな。

──それと、この土地は諦めな。次にまた来たら」

言いながら、右手から巨大な火球を作り出す。

空に、地獄の業火が浮き上がる。

「この火球で燃やすよ」


ガンダルはそれを見ると、完全に観念したようだ。

転がる兵たちを起こし──その場を去っていった。


捨て台詞はなかった。


だけど──これでは終わらないだろうな。


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