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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第二章 冒険のはじまり

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第十一話 ぬいぐるみと、地響きと。

ユルガン族の円形の建物──テムルはゲルと呼んでいた─は、意外と寝心地が良かった。

が。

目覚めた時、俺の顔の上にはメイの足が乗っかっていた。


きちんと一人分の間を確保したはずなのに、不思議である。

俺はそれをどかすと、ゲルの外へ出た。


水汲み場に──アイネがいた。


「あ、おはよう、アラタ」


「あ……おはよう。アイネ、早いね」


「うん。皆の分の水を汲むのは私の仕事だから」


「仕事って……まだ十四歳だろ」


俺の常識では──仕事をするのは早くても成人、十六歳からだ。

こっちの大陸では──違うのか。


「ユルガン族は、皆小さい頃から仕事があるよ。自給自足の生活だもん。そっちの大陸……ロッドだっけ、では違うの?」


「あ、うん……手伝うよ」


俺は、アイネが持つ桶を代わりに持った。

これまで──学校に行って勉強をしていただけだった自分が、なんだか恥ずかしくなった。


同い年で──俺よりはるかに細い腕をした女の子が、力仕事をしている。


俺は、学校に行くのさえ面倒くさいと思っていたのに。


アイネは、なんだか少し浮かない顔をしている。


「なんか、元気ないね。どうしたの?」


「ううん。アラタたち……いつまでいるのかなって思って」


「え?」


「せっかく会えたんだから、もっといろいろ話したいなって。

でも──旅は急ぐんでしょう?」


いや、全然急がないです。

ここで一生暮らしたっていいです。


──といいたくなるような可愛い顔でこちらを見てくる。


しかし、残念ながら旅の権限は俺にはない。


目的は──エルデネのルーツ探しだ。


その入り口で──俺たちはとんでもない世界の秘密に触れてしまった。


本音を言えば、親たちに状況を共有したい。


今すぐ引き返して、大陸の真実を伝えるほうがいいだろう。


肝心な時に、エーテルリンクの通信は一切来ない。


ミサキ叔母さんあたりが心配して連絡してきそうだが……。


こちらからは連絡手段がないから仕方ない。


「うーん、気持ちいい朝だねえー」


水汲みを手伝っていると、エルデネがゲルを出てきた。


そうだ。エルデネなら──


「なあ、エルデネ。エーテルリンクって使えないの?」


俺は聞いた。


「ん?ああ。あれは無理だね。紫と緑が一式以上ないと無理じゃないかな。私は通信を叩き切るくらいはできるけど──

こっちからは繋げないな。なに?イエナが恋しくなった?」


エルデネが勝手に邪推をし、にやにやしている。


「ち、ちげえよ!こっちの状況伝えた方がいいかと思っただけだ!」


「イエナ……?女の人?」

アイネが、こっちをちらっと見る。


「……おふくろだよ。勝手に旅に出てきたからさ」

俺が言うと、


「アラタ、普段そんな呼び方しないくせに」

エルデネが俺をつついてくる。


「おい。やめろよ。ぶっ飛ばすぞ」

俺はすっかり低くなった声を最大限下げて凄む。


エルデネにはこんな脅しはきかないことは分かっている。

これは──形を変えた懇願だ。


「おおっ怖いね。あっ、皆起きてきたみたいだね」


メイとラウルが出てくる。


「ねえ、アラタ。足が痛いんだけど知らない?」

メイが言った。


「お前、寝ながらぐるぐる回ってたぞ。壁にでもぶつけたんだろうが。

むしろ腹を蹴られた俺に謝れ」

ラウルが解説してくれる。


うん。多分そうだろう。


「おはよー」

キセキがぬいぐるみを抱えて出てきた。

目をこすっている。


……こいつ、可愛いな。

しかし、そのぬいぐるみ……どこから持ってきたんだ。


「おはよう、キセキ。よく眠れた?」

アイネが笑いかける。


「うん。アイネから借りたこの子のおかげで」

キセキはぬいぐるみを前に出した。

ほころびだらけだが愛らしい熊のぬいぐるみ。


──あんなことがあったのに熊を抱いて寝たのかよ。


いや、ちょっと待て、アイネに借りた、だと……!?


俺がそんなことを考えていると、キセキが続けて言った。


「ねえ、地響きがするけど……何かな」


確かに、地面が少し揺れるような──遠くから何かが近づく感じがする。


すると、ゲルから顔を出したテムルが言った。


「アーカーシャ兵だ……私が対応する。皆、中へ」


交渉という名の脅し。


今日も──やってきたと言うことか。


俺たちは一旦ゲルの中に入るが──入り口付近に待機した。


エルデネが、指を口の前に当てる。

静かに、という意味だろう。


テムルとアーカーシャ兵の間でどんな会話がなされるのか、

──俺も興味があった。


それは──このユグラシア大陸の情勢を現わしていた。


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