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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第十一章 近づく旅の終わり

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第百十五話 レイサスとの再会

「なんか、久しぶりに感じるな」

目の前のウィザル王宮を見ながら俺は呟いた。


エアバスはウィザルの森の奥に停めて、ここまでは歩いてきた。


王宮に入ると、レイサスが出迎えてくれた。


「叔父様。無事帰ってまいりました」

エイナが軽く頭を下げる。


「一体どうなってるんだ?プルークやサーラが死んで、エイナは六賢になっているし、私はついていけないぞ」


「人事の情報は届いていましたか。——ギランやバクスターは?」


「アーカーシャから二名とも罷免されていたからな。ひとまず黒の間の牢獄に入れてある。今の所問題はないが——そもそもなぜウィザルを科学国にしようと思ったのか、アーカーシャの真意は分かったのか?」

レイサスが言った。


「……本人に聞いてみましょうか」

俺は端末を出す。


『アラタ、私の存在については限定的にすると話をしていませんでしたか。簡単に呼び出されては困ります』


「友達ってのは、気軽に呼び出すもんなんだよ。それに、ここにいるのは俺たち以外には六賢のレイサスさんだけだ。問題ないはずだ」


『分かりました。友達は気軽に呼び出すものと理解しました。私もアラタを深夜に気軽に呼び出しますね』


「……深夜は勘弁してくれよ。お前なんか少し意地悪になってきたな。あのさ、なんでウィザルを科学国にしようと思ったんだ?」


『ランクの停滞です。五十年以上ランクの変動がない国、及び街については統治者の変更を行っています。

科学国にしろとは指示していません。計算の結果、ギランとバクスターが選ばれました。ただし、双方とも人格面に問題があったため、互いを牽制させる目的で組ませました』


「言うこと聞かなかったら——レイサスさんを殺してもいいってお前が指示したのか?」


バクスターの言葉。

あれは——アーカーシャの指示だったのだろうか。


『抵抗された場合、殺してもよいかと聞かれたので、その判断は任せると回答しました』


俺は、端末をぶん投げそうになった。


「あのなぁ!お前、人の命をなんだと思ってんだ?——レイサスさんは、六賢で——帝国のために尽くしてくれた人だろ?なんでそんな簡単に判断できるんだよ」


『六賢はあくまで役割です。死んだ場合、新たな六賢が選出されるだけです。文明を担う六賢の選出は推薦制にしていますが』


そういうことか——。


何万年も生きるアーカーシャからすれば——俺たち人間の命なんて、役割にすぎない。


そこから、理解させなきゃいけないのか。


「あのさ、アーカーシャ。俺の友達なら分かっていて欲しいんだけど。人間の命って、短いかもしんないけど、大事なんだよ。役割が終わったから死んでいい、なんてもんじゃないんだ」


『それは不思議ですね。この数万年、多くの戦争を見てきましたが、人間同士は簡単に殺し合っていましたので。

それをなくすために私は今の制度を作り上げました』


人間同士が——殺し合う。

確かに、それは存在する。


『タガロは父親のボイドを殺し、キセキはサーラを殺しました。役割の終わったレイサスの死を許容する私の判断と、どちらが悪いことなのでしょうか』


……っ!


言い返すことができない。

それを決められるほど——生きていない。


タガロは——少し目を伏せる。

父親、ボイドを殺してしまったこと。

後から知ったその事実を、まだ自分の中で消化しきれていないのだろう。


「死を、どう受け止めるかではないでしょうか」

レイサスが口を開いた。

「横から失礼します。アーカーシャ様。私はこれまで世界の歴史を研究してきました。その中で、気づいたことがあります」


『続けてください。六賢、レイサス』


「命を尊み——死者の想いや意志を継いだ国ほど、長く続いています。命を軽視した国は——すぐに滅んでいきます。戦争も、命より大義を優先した結果でしょう。

私自身の命が大事とは言いません。ただ——共に同じ時代を生きる他の誰かの命を大切にできる世界こそが。

恒久の世界となりうるのでは、と思っています」


『研究の成果として受け取ります。後ほど、定量化されたデータを踏まえて報告をお願いします。データ化に際してはマテウスと連携すると良いでしょう』


——アーカーシャが、受け止めようとしている。


さすが、六賢だ。

俺では——アーカーシャに言い負かされて終わっていた。


「アラタ。ありがとう。アーカーシャの意図は理解できたよ。それに、ギランとバクスターの拡大解釈もね。

——確かに、この国の発展をどこかで諦めていた私がいる。式術の向上だって、ランクを上げることに繋がるはずだ。もう一度——ウィザルを発展させてみるよ」

レイサスが言った。


「叔父様。帰ってきたばかりで申し訳ないですが、私はこのままみんなとロッドに向かいます」

エイナが言った。


「……相変わらず忙しい子だな。もう、お前の好きに生きればいいさ。たまには帰ってこいよ」

そう言ったレイサスは父親の顔をしていた。


王宮を出ると、メイが言った。

「ちょっと街で時間つぶしててくんない?師匠たちの道場が繁盛しているか見てくるから。ついでに挨拶してくるわ。ラウル、行くわよ」


メイがラウルを連れて歩き出す。

師匠たちとは、ウィザルでメイとラウルが〝式術斬り〟を教わった人たちのことだろう。


二人の背中を見送りながら、俺は言った。

「せっかくだから俺たちも街をぶらつくか。アイネとタガロは——ウィザルは初めてだもんな」


「ここは私の出番ですね。ウィザルは名所名跡も多いですから。案内しますよ」

エイナが言った。


こうして普通に観光ができるなんて。


それは喜ばしいことだが——

改めて、旅の終わりが近づいていることを感じる。


それが、少しだけ寂しい。

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