第百四話 主国アーカーシャ
列車が、停まったようだ。
音が静かすぎて、それさえも気が付かないほどだ。
列車の扉が開く。
そこには、無人の駅が待っていた。
「人、いないね」
キセキが呟いた。
「ここに来るのは、六帝、六賢だけ。それも年に一度か二度でしょうから。
主に使っているのは──査定官でしょう」
エイナの言葉が、俺を現実に戻す。
査定官、デュラン。
同行していたサーラ、ボイドは──死んだ。
その場を、俺も見ていた。
残るは──黒の式者、デュランだけだ。
そのデュランが移動で使っているであろう列車で、
俺たちはアーカーシャの中枢部にやってきた。
少し、手に汗がにじむ。
デュランは──アイネはいるのか。
そして俺たちは本当に取り返せるのか。
アイネに会える期待と、戦いへの恐怖が同時にやってくる。
駅を出ると、そこに広がっていたのは、
白い建物、白い道。
すべてが真っ白な街だった。
そこに──多くの人が歩いている。
「あれ?白い以外は──普通の街じゃないか」
ラウルが呟いた。
「でも、なんかあの人たち変よ」
メイが何かに気づいた。
「全然表情がないし……誰も話していない」
「はい。あれは──人ではありません。アンドロイド──機械ですね」
エイナが呟いた。
機械?
あれが?
どこからどう見ても──人間そのものだ。
表情がない以外は、肌の質感まで含めて、人間にしか見えない。
「コウ様の家にもいましたね。バドールでも少しずつ浸透していますが……これだけの数がいるのは初めてです」
え?コウの家?
ということは、お茶を出してくれたあの女の人は──機械だったのか。
改めて、アーカーシャの科学力を思い知る。
サーラの言葉を思い出す。
ジェネシス。
エルデネやサーラは、アーカーシャによって創られた、と言っていた。
つまり、生命さえ生み出せる科学があるということだ。
もはや何も驚かない。
「行きましょう。帝国のど真ん中へ。端末では、アーカーシャとの面会はエンパイアビルでと指示されています」
エンパイアビル。
そこにアーカーシャがいる。
──そしてデュランがいる可能性も高い。
ただただ白い空間を、俺たちは歩いて行く。
帝国の中枢部は──思ったより広くなさそうだ。
バドールで飛び交っていたエアカーも、それを飛んでいない。
それは、恐らく必要がないからだろう。
なぜなら。
目的地のエンパイアビルは、駅を降りた瞬間から見えている。
恐らく──歩いても十分程度の距離。
俺たちはいよいよ、旅の終着駅にたどり着いた。




