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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第九話 思い出の包丁

 アテナ屋で刀と包丁の販売を開始したことでお客さんが増えたが、一週間経った頃、他店の包丁の修繕依頼をする人が現れた。


「金を払えば文句ないはずだ!」


 開店直後の店でお客さんが叫んだ。


それは修繕依頼をされた際に、他のお店で買った商品はこちらでは製造過程が分からないので、修繕を受け付けないと伝えたからだ。


お金は多少かかってもいいと食い下がってくるが、幾ら貰おうが安全性が保証できないのなら、絶対に受けないと返す。


「でも、これはうちの母親が大事にしてきた包丁なんだ……出来れば使い続けたいっていうから、直してくれるところを探してて……」


 会計台に置かれた包丁を見ながら、お客さんはそう言った。


言い方からして他でも断られ、困り果ててうちに来たのだろう。


彼にとってもお金の問題ではないことを理解した。


だがこの包丁は長い間大切に使われ、今寿命を迎えたのだ。


無理に延命すれば、思い出が哀しいものになるかもしれない。


「じゃあやっぱりどうしようもないのか……」


 俺が思ったことを伝えると、小さく嘆いた。


哀しそうな顔を見て、どうにかしたいと考えた瞬間、一つ案が浮かんだ。


元の包丁と同じではないが、この方法なら納得するかもしれないので、提案するだけしてみようと思った。


「これはお客さんの受け取り方次第ですけど、提案があります」

「なんだ?」


「この包丁はそのまま使えませんが、この包丁を素材として、新しい包丁にすることは可能です。もちろんタダでは無理ですけど」

「どうやって新しくするんだ?」


「うちにある素材と掛け合わせるんです。もしお母さまが見たいというなら、生まれ変わるところも店でお見せできますよ?」


「ほ、本当か!?」

「ええ、さすがに剣などは再生に必要な材料が多すぎるので、うちでは無理ですけど包丁ならうちの炉でもできます」


 そう答えるとお客さんは目を輝かせ、ぜひともそうして欲しい、母親も連れてくるという。


『再生依頼のお客様、包丁持参、ヒサミツ担当』と書いた紙を渡し、来たときにこれを従業員に見せて欲しいと伝え、後日うちに来てもらうことにした。


 翌日包丁の売れ行きが良く、補充するため昼に店頭から鍛冶場へ移動する。


昨日の今日来るのはさすがに早いかと思ったが、なんと始める直前に来てくれた。


高齢で上品そうな女性は、うちに来ると深々と頭を下げてお礼を言う。


「この度は息子が無理を言って申し訳ございませんでした。あの、無理ならそれで構いませんので」

「いえ、ぜひちゃんとお母さんの包丁が生まれ変わる瞬間を見て、出来上がるのを楽しみに待っていただければ、こちらとしてもうれしいです」


 物をただ売るだけでなく、買う人にも喜んでもらえる方法だと俺は思い、祖父に手伝ってもらって包丁を作り直すことにした。


習得した刀の技術を使い、店頭に並んでいる包丁と同じように製作していく。


夕方になったころ、ようやく出来上がった包丁を鞘に入れて渡すと、いとおしそうに母親は抱きしめる。


「凄いのね。こんなに大変な思いをして作っているなんて」

「あんなに声を荒げて無理を言ってすまなかった」


「いえいえ、これでうちが作った包丁なんで、何かあったら持って来てくださいね」


 長い時間見ていて疲れただろうに、帰る時は親子そろって晴れやかな顔をして帰っていった。


読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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