第八話 完成! お客さんに売れる刀
刀に予約がついたが、商品化は確定していない。
実戦レベルに達したと思った刀は、ゴブリン戦での結果として実戦に使える耐久性を有していないと判断した。
祖父に報告すると、材料からもう一度見直してやってみよう、と言ってくれたのでそうすることにした。
先ずは材質の問題かと考え製鉄所に赴き、うちで製鉄できない上質な鉄を求め、それを元に製作してみる。
打ち方は敢えて欠けた刀と同じにし、冒険者ギルドに依頼を出し、ゴブリン討伐の際には同行させてもらえるようにして試した。
結果は不合格だった。
鉄を上質なものに変えて倍耐えられたが、それでも望む耐久性には達しなかった。
次は鉄をうちで作ったものに戻し、鉄を溶かす時間や打つタイミングを変えてみる。
「ヒサミツ、そんな悲壮な顔をして打っては、手元がくるってしまうぞ?」
祖父にそう言われはっとなる。
冷静になるため、祖父に礼を言って外に出て、井戸の水を頭からかぶり、心頭滅却してもう一度打つ作業に戻る。
それから三か月ほど、試行錯誤と検証を繰り返した結果、ようやく実戦で使える耐久性を有する刀が出来る。
より確実にするため、合格した刀の製法を元に一本作りゴブリンと戦った。
結果として耐久性を確保できたので、祖父の了承のもとお店に出すことにした。
「これならいけるね、祖父ちゃん!」
「うむ! やっと完成じゃな!」
販売する用の刀を複数打ち、売る前に歪みや意図しない反り、欠けなどを確認した。
祖父からも問題ないと言われ、これで馭者さんに渡せるとほっとし、販売用の刀の中から一本除けておいた。
「ようやくできたのか」
「俺たちが使ってもほれぼれする切れ味だったし、これなら俺も欲しいよ」
この日、協力してくれた冒険者たちがお店にも来てくれ、労いの言葉をかけてくれた。
彼らに対し頭を下げる。
「ありがとうございます!」
折れない刀などないが、二回三回で折れたのでは話にならない。
せめてゴブリンを二十匹斬っても、耐えられるようにしたかった。
ギルドで依頼したことで多くの冒険者とも知り合え、頼んでよかったと思う。
冒険者たちが帰った後で開店準備が整い、先ずは馭者さんに最初の一本を渡そうと、店を出ようとした瞬間、その馭者さんと会った。
「おう坊主! 噂を聞いて駆け付けたぜ!」
「馭者さん!? わざわざ来てくれたんですか!?」
「もちろんだ! 俺はずっと待ってたんだから! で、もう売れるのか?」
記念すべき一本目を手渡すと、それを大事そうに両手で握って頭を下げた。
慌てて俺も頭を下げて謝罪をする。
「長い間待たせてすみませんでした」
「しっかり検査して作ってくれたんだろう? 俺はお前の仕事を信じていたんだから、完成までの三か月は長くない。代金は幾らだ? 絶対にただとか割引をするなよ? いい仕事には正当な対価が必要だ」
待たせて悪いとかではなく、仕事をする者としての取引をしろと言われ、涙が出そうになるほどうれしかった。
馭者さんに予定していた販売価格、百五十ゴールドを提示すると、表情を曇らせる。
「そんな価格で良いのか? これを作るために実験したり研究したり、捨てた材料費もあったんじゃないのか? 俺も始めた頃は安くしていたが、馬車や馬を買った金の元を取るのに、だいぶかかったぞ?」
確かに言われた通り、祖父を含め従業員の皆にも負担をかけ、ギルドに依頼料も払っている。
鉄の値段やほかの武器の価格も調べたが、うちで扱っている新品に近い剣と同じ値段の、百五十ゴールドとした。
高すぎず安すぎず、しかしお客さんも納得し安心して買える価格を考えなければダメなので、今すぐここで考えなしに新しい価格を提示できない。
正式販売の際に計算しなおすとして、今回は完成して浮かれていた自分のミスなので、最初に提示した価格で売らせてほしいと伝えた。
「たしかにそういう理由なら、今回はこの価格でってのはわかった。じゃあ有難くその価格で買わせてもらうよ。そういえば道場の張り紙を見たけど、空きはあるのかい?」
「わしの道場には空きはあるぞ?」
「そりゃよかった。こいつの使い方を教えてもらいたい。このところ他の町は特に雰囲気が変でな」
「どういうことじゃ?」
「それが隣の国と戦争になる、とか吹聴してるやつがいてよ。それが別の場所で違うやつが同じ話をしててさ。騎士団は戦争なんて起こるわけがないって否定しているが、そういう話が出ると皆不安になるだろ?」
俺たちはそんな話を聞いたことはないが、それが事実であれ嘘であれ、穏やかな話じゃない。
「確かにな。今から鍛えておくのは大事じゃ。夕方から始めるからそのころまた来てくれ」
「ああ宜しく頼む。じゃあまたあとで! 坊主、刀ありがとうな!」
「こちらこそありがとうございました!」
馭者さんを見送り終え、店に戻ろうとしたところで、
「ヒサミツ、少しの間頼む」
そう言って祖父は町の中へ走って消えていく。
俺は言われたとおりに店に戻り、閉店まで商売を続けた。
帰宅後に祖父にどうだったかと聞いたが、やはりそんな話はなく、領主の騎士団も噂話の出元を調べているらしい。
俺達にはこれ以上調べようがないので、頭の片隅に留めておくことにする。
戦争になれば、商品の価格設定や仕入れにも影響するし、何より皆の生活が一変する可能性がある。
戦争なんて起こらないでくれと願いつつ、この日は眠りについた。
数日後、刀の製法を使って包丁も作れないかと祖父に相談し、製作することになった。
母や従業員の皆の家庭で試してもらい、これは良いという皆の反応を得て売ることになった。
包丁を販売して以降、うちの店には以前より多くのお客さんが来店してくれるようになる。
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