第七話 初めての予約客
「おい坊主、平気か? 顔色が良くないが」
刀を収めていると声をかけられたので見ると、馭者さんだった。
「え、あ、すいません大丈夫です。それより先ほどは危ないと言ってくださり、感謝しています」
「お礼を言うのはこっちのセリフだ。それより大丈夫か? 今しまった武器は使えないのか?」
そう問われたが言葉に詰まる。
一本は刃が欠けたので使えなくなった。
そしてもう一本も同じ製法なので欠ける可能性が高い。
出来れば馭者さんを警護しながら、町まで退却したいところだが、まだゴブリンの声がしているのでどこかにいる。
このまま逃げれば町まで誘導することになるので、それだけは決してできない。
「これは刀っていう武器です。今納めた刀は使えないです。申し訳ないんですけど、もう一本の方で対応できるか不安なので、いざとなったら一人で逃げてもらっていいですか?」
覚悟を決めて残る一振りを引き抜き敵を探そうとした瞬間、馭者さんの後方からこちらに見える位置にゴブリンの顔が現れる。
(回り込んだんじゃ間に合わない! 馭者さんに当たらないよう、喉を突くしかない)
確実に当たらないよう、御者席の縁に足をかけ飛び、馬の尻に乗ってゴブリンに対して突きを放つ。
「ギ」
刀を引き抜き地面に降りると、短い悲鳴を残してゴブリンは倒れた。
「おお凄いな。助かったよ坊主!」
「無事でよかったです」
馭者さんも無事だし馬も多少暴れたくらいで済んだ。
二人の確認後、切っ先を確認したが、割れたり欠けたりしておらずほっとする。
もういないか馬車の周りを急いで見て回り、最後に馬車の下をのぞいた瞬間、馬車の下からゴブリンが飛び出してきて、町とは逆方向へ走って逃げる。
正直なところ精神的にもうきつい。
吐き気を抑えるのも限界だ。
だがあれを逃すと増援を呼ばれてしまう。
自分を奮い立たせて全力で後を追う。
「ギャアアアア!」
何とか追いつき背中からバッサリと切りつける。
他にもゴブリンがいないとも限らないので、馭者さんのところに急いで戻った。
「おい坊主、その刀って武器は凄いな! 俺の剣は一回で折れちまったのに」
「いえ、全然だめです。先の一本は二体切っただけで欠けました。これでは持ち手の命を預かれない。商人としてはお客さんに売れません」
「子供に見えるのにジジイみたいなことをいうな」
「祖父に育てられたので」
「祖父?」
「ジークっていう名前です。町でアテナ屋っていう中古武具屋を営んでいて、僕はその孫のヒサミツです」
「刀売ってくれない? 俺欲しいんだけどな……百五十くらいだすよ?」
「安全性が確保出来たら売りますけど、まだ試作段階なんで売りません」
しばらく周囲を確認していたが、ゴブリンは見つけられなかった。
少し経ってから冒険者や騎士が来たので、事情を説明した後で引き上げることにする。
「坊主、俺の馬車に乗って行けよ!」
そう馭者さんに言われ、警護も兼ねて町に一緒に戻ることにした。
戻って着替えて混雑する店を手伝っていると、先ほどの馭者さんが店に来た。
「いらっしゃいませ! 何が入用ですか?」
「よう坊主。さっきは助かったぜ」
「お礼なんて別に要らないですよ、ゴブリンは災害なんで。それをわざわざ言いに?」
「いや、お前さんの使っていた刀、あれっていつ売りに出るのかなと思ってさ」
「予定は今のところ未定ですね」
「そっか。予約とか出来たらしたいんだけどどうかな?」
「予約をもらってもいつ出来るか約束できないんですが」
「それでもさ。俺はお前が百五十でも安全じゃないから売らない、っていう言葉に痺れてね。大金でも売らないのに、こいつが売るって言ったものなら信じられる、そう思ったから買いたいんだ」
「売り物になるようになったら声をかけるので、ぜひその時は手に取って見てください。それで良かったら買ってください」
「じゃあ予約成立ってことだな! 俺は買うって決めてるし! 楽しみにしてるよ!」
馭者さんはそう言って去っていった。
まだ完成していない、価格も分からない商品を馭者さんは買うと言ってくれた。
ただ売ればいい、というのではなく、買う人も犠牲にならない、そういう商売こそが大切だと思った。
読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。
また誤字脱字報告に関しましては、誤字報告機能の利用をお願い致します。




