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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第二話 転生先が中古武具屋だった件について

「この子、本当に笑顔が多いわ」


 母がうれしそうに笑う。


その顔を見ていると、俺まで自然に笑顔になった。


(抱かれているだけで、こんなに安心するものなのか)


前世の俺は父に育てられ、母のぬくもりを知らない。


背中を支える手も、頬に触れる指も、何もかもが初めてだった。


 転生初日は何事もなく過ぎ、翌日から赤ん坊生活が始まる。


ただ特にできることが無いので、布団に寝転がりぼーっとしていると、祖父が顔を出した。


「なんじゃヒサミツ、暇そうじゃな。そんなに暇ならこれを握ってみるか?」


 現れた祖父に赤ん坊らしく愛想を振りまいていると、祖父が俺の手に玩具ほど小さな木刀を握らせる。


前世でも見慣れた武器がうれしくて、握り振り回した。


ただ振り回しているはずなのに、木刀を握っているのが不思議なほどしっくりくる。


「ははは! 気に入ったか!」


 喜ぶ祖父に笑顔で応える。


「まぁ追々身につけていけば問題ないじゃろ。この世界では武が大事じゃからな」


 そう言って祖父が去ったあと、子供らしく動きつつ筋トレしていると、瞼が重くなり眠りに落ちる。



 生まれて一か月ほどたった朝、母がいつもより丁寧に俺の服を整える。


「アテナの月も今日で終わりね。生まれてひと月は女神様のご加護を得るため、家族以外には会わせられないけど、今日からは皆にも会ってもらえるわ」

「従業員たちも、跡取りを見るのを楽しみにしておるぞ」


 母に抱かれて部屋を出ると、大勢の人が待っていた。


「ヒサミツ坊ちゃま、初めまして!」

「まあ、かわいらしい跡取りだこと」


 老若男女が次々に顔をのぞき込み、俺の誕生を祝ってくれる。


店の従業員とその家族たちらしい。


笑顔に囲まれた部屋の奥で、一人だけ笑っていない男がいた。


眉間に深いしわを寄せ、唇を固く結んでいる。


その男だけは俺に近づかず、離れた場所からこちらを見据えていた。


(なんだあの人。俺が何かしたか?)


 誰なのか気になり、男へ向かって手を伸ばす。


すると男は俺から逃げるように、顔を背け歩き出した。


「あなた。せっかくだから、ヒーくんを抱いてあげて」


 母に呼ばれた男は一瞬だけ足を止める。


「……今はいい」


 それだけ答え、人の間を抜けて部屋を出ていった。


俺を抱く母の腕にわずかに力が入る。


「ラグナ!」


 祖父が呼び止めても、ラグナと呼ばれた男は振り返らない。


母が「あなた」と呼んだということは、あの人が俺の父親なのだろう。


この世界で初めて知った母のぬくもり。


その一方で、父は俺に触れようともしない。


母の腕の中で心地よさを感じながらも、父の残した冷たい視線が頭から離れなかった。




「ヒーくん。今日は、あなたが継ぐお店を見てみましょうか」


 お披露目を終えてから、母は毎日俺を背負って町を見せてくれた。


そしていよいよ我が家の店を見学することになる。


(わくわくするな。どんな感じの店なんだろうか)


階段を下りるにつれて人の話し声と、金属が触れ合う音が大きくなっていく。


「いらっしゃいませ!」

「ジークさん、この盾は買い取ってもらえるか?」


 一階の店には、剣や槍、盾、鎧などが所狭しと並んでいた。


声をかけてきた冒険者は、表面に爪痕が残った銅の盾を祖父へ差し出す。


「随分やられたな。何と戦った?」

「街道でグレイウルフに囲まれた。仲間が追い払ってくれなきゃ、今頃は腹の中だったよ」


 祖父は傷の深さだけでなく、留め具や裏側まで確かめてから値段を告げる。


「直せばまだ使える。これなら十ゴールドで買おう」

「本当か? もう捨てるしかないと思っていたよ」


 冒険者はうれしそうに代金を受け取り、新しい盾を見始めた。


アテナ屋は冒険者から使い終えた武具などを買い取り、修理して販売する店だった。


(捨てられるはずだった物を直し、次に必要とする人へ売るのか。いい商売だな)


売った冒険者はお金を得られ、安い武具を求めるお客さんも助かる。


俺が転生前に思い描いた商売に、少し似ている気がした。



読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
ノベレコから来ました。 チートスキルで無双する転生ものではなさそうなので興味津々です! 体調がよければ続きも読んでみたいです。 連載頑張ってください!
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