第十八話 閉鎖されるダンジョン
ダンジョンヤドムシの息の根が止まったのを確認し、刀を顔から引き抜く。
直刀を見ると欠けてはいなかった。
店に戻って確認する必要はあるが、反りの強い刀が欠けた原因は、硬い殻へぶつけたことだろう。
俺の打った刀は、ダンジョンヤドムシの殻には通じなかった。
お客さんに武器を売る時も、何と戦うために使うのかは確認した方が良いだろう。
買う人にとっても良い店を運営できていると思ったが、細かな配慮が足りないのではないかと反省する。
砂時計を確認したところ、砂がほとんど落ちきっていた。
「急いで戻らないと……。このヤドムシは図鑑の記述と違う。回収する人が見つけられるよう、目印を残しておこう」
刀は内部まで傷んでいる可能性がある。これ以上使うのは危険だ。
刀の汚れた部分を手拭いで拭って鞘へ納め、予備の青い紐をヤドムシの頭部へ巻きつける。
遭遇した場所と大きさ、図鑑と違った動きを忘れないよう頭の中で整理し、急いで詰め所へ戻った。
詰め所に着き事情を話すと兵士たちは顔色を変えた。
兵士の一人が、詰め所の奥に置かれた大きな水晶の前に駆け寄り、手をかざす。
水晶が淡い光を放つ。
しばらくして光が収まると、兵士は俺のところへ戻ってきた。
「騎士団へ連絡した。調査員と回収業者も来るから、魔物と遭遇した時のことを詳しく話してくれ」
どうやら、あの水晶を使って遠くへ連絡を取ったようだ。
調査員たちが到着するまで、俺はここで待つことになった。
一時間ほど戦いを振り返りながら待っていると、十人ほどの兵士と荷車を引いた回収業者、それに赤いベレー帽をかぶった少女が詰め所へ降りてきた。
少女は十二、三歳ほどに見える。
亜麻色の髪に、金の刺繍が入った白いマントをまとっており、兵士たちの中で一人だけ浮いていた。
彼女が調査員だろうか。
「ゴードン副団長がいらっしゃったぞ!」
詰め所の兵士たちは外に出て、先頭を歩く七分刈りの、険しい目つきの男の前に移動し敬礼する。
「ゴードン副団長! お待ちしておりました!」
「下層にいるはずの魔物が一層で出たそうだな」
「はっ! こちらの少年が発見しました!」
俺はゴードン副団長に、ヤドムシとの遭遇から討伐までをもう一度説明した。
彼は目を閉じ、途中で口を挟むことなく聞いていた。
「分かった。原因が分かるまでダンジョンを封鎖しろ。安全確認が終わるまで、貴族だろうと誰だろうと一人たりとも入れるな!」
こちらの話が終わると目を見開き、詰め所の兵士を見ながら強い口調で指示を出す。
「「はっ!」」
「モンスターの回収はセシリア嬢の立ち会いのもと、回収業者に任せる。発見者と詰め所の兵はここから動くな。では調査隊、出発!」
俺と詰め所の兵士たちに待機命令を出し、ゴードン副団長は増援の兵士や回収業者、そしてセシリア嬢であろう少女を引き連れダンジョンへ入っていった。
「ゴードン副団長、相変わらず迫力が凄いな」
「怖い人だが現場を引き締めてくださる。副団長が管理を任されてからは、事故が減ったのもうなずける」
怖そうな人ではあるが、異変の原因が分かるまで、身分に関係なく立ち入りを禁じる判断は正しい。
一人でも特別扱いすれば、次に来た者を断る根拠が揺らぎ、公平な管理ができなくなる。
しばらくすると赤いベレー帽の少女と回収業者が、護衛の兵士数人とともに戻ってきて、俺は回収業者に声を掛けられる。
「今回はギルドの研究に使うらしい。後日ギルドにこの紙を持ってきてくれとさ」
俺に紙を一枚渡すと、回収業者たちは荷車にダンジョンヤドムシを乗せて出ていった。
紙は目が痛くなるほど賑やかな装飾が施されており、さらに丸文字で書かれた『引換券☆』がきつさを倍増させていた。
「使えるのか、これ……」
「失礼ね! 使えるわよ! あなたが発見者のヒサミツくんね。兵士から聞いてるわ。どうやら私お手製の引換券を気に入ってくれたみたいね!」
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