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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第十七話 名乗った少年と、刀を弾く魔物

説得するにはどうすればいいか。


俺は祖父と何度もダンジョンへ入り、一人で採取する許可も得ている。


だが、この少年は兵士の目を盗んで入り、スライムの危険すら十分に知らなかった。


俺も初めて入る場所で、彼まで守りながら進む余裕はない。


一緒に入るなら、家族が危険を承知して許可したことと、少年を守る護衛の同行が必要だ。


この二つが揃うなら、同行してもよい。


こちらの言葉に対し、彼は苦虫を噛み潰したような顔をした。


厳しい条件かもしれないが、少年の命を預かる以上、ここは譲れない。


「……いい、じゃなくて約束しろ」

「そんな大事な約束を、名前も知らない相手とはできないな」


「くっ……アレックスだ」

「え?」


「俺の名前はアレックスだ、と言ったんだ! 聞こえたか!? 次に会った時はちゃんと名前で呼べ」

「分かったよ、アレックス」


 俺は、傍らに立つ青いマントの騎士へ視線を向けた。


「今言った二つの条件が揃ったら、アレックスと一緒に入ると約束します」

「本当だな!」


「もちろんだよ」

「私はエルシド。領主レオン・マクスウェル様に仕える騎士だ。この度は坊ちゃんがご迷惑をおかけした」


 エルシドさんは一礼したあとで、アレックスの家に関しては言えないが、俺の条件は彼の家族に必ず伝えると約束してくれた。


彼の言葉を聞き、恐らく領主の息子か、少なくともそれに近い血筋の者だろうと思った。


だが本人もエルシドさんも言わないなら、こちらから聞くことではないだろう。


「では今日は許可が無いので帰りますよ、坊ちゃん」

「絶対に許可を取ってくるからな!」


 エルシドさんはアレックスの肩を掴み、そのまま町へ連れ帰った。


なんとかエルシドさんに連れ帰ってもらえて良かった、と胸を撫で下ろしつつ、改めてダンジョンの中へ入ることにする。


少し降りたところにある広間に、「領主府管理・東採取ダンジョン詰め所」と書かれた看板を掲げた小屋があった。


 冒険者の報告によって各国のダンジョンは見つかっている、と小さい頃に読んだ本に書いてあった。


現段階で俺の住むイグニス国には、ダンジョンが十五カ所ある。


最初のダンジョンで、騎士団は最下層まで探索してボスも倒し、敵がいないのを確認したうえで、入り口を板で塞ぎ封鎖した。


ところが数日後には、板が破壊され村にモンスターがおりてきたようだ。


以降、ダンジョンには兵士が配置され、異変があれば再調査する仕組みになっている。


国がダンジョンを独占せずに開放していた。


冒険者に探索させてモンスターを倒させ、その素材を売って生計を立てさせれば、国は安全に税金をとれる。


モンスターが再生されようとも、冒険者が生活のために倒す、という循環を生んでいた。


その結果として、モンスターは町や村まで降りてこなくなっていた。


採取できるアイテムもなぜか再生しており、今も首都では原因を探っているという。


この東の採取ダンジョンは、モンスターの強さも初心者向けとされており、領主府が管理している。


 さっそく詰め所に挨拶し、帰還予定時刻を二時間後と告げる。


「一時間計の砂時計を渡しておく。砂が落ちきったら、そこで引き返してくるように。昨日まで採取制限がかかっていたから、薬草も再生している。だが採っていいのはその籠一杯までだ」

「分かりました、行ってきます!」


 ダンジョンは本で読んだとおり、赤茶けた岩と乾いた土が広がり、空気も乾燥していた。


環境に適合した薬草や鉱石が採取でき、防御の高い魔物が生息しているという。


鉱石は採取できても、重くて持って帰れるのは一つか二つ。


なので図鑑で見て覚えた薬草だけを摘んで、籠に入れていく。


摘みながら奥へと進んでいくと、広い空洞にたどり着いた。


「コロコロコロコロ……」


 中に入ってすぐ、どこからか何かの鳴き声が聞こえてくる。


侵入者に対する警告だろうか。


そういえばここまでモンスターと出会わなかった。


薬草が手付かずだったのも、採取制限だけが理由ではないとしたら。


「うおっ!?」


 頭上から風を切る音がした。


見上げると黒い物体が落ちてくる。


素早く飛び退き、間一髪直撃を逃れた。


「これがダンジョンヤドムシか……でも図鑑の説明より小さいぞ?」


 落下地点にいたのは、大きなカタツムリの殻を背負い、四本の足で立ち、左右に鎌状の爪を持った昆虫型のモンスターだった。


図鑑には殻は見た目より軽いが、金属製の武器を弾くほどの強度があると書いてあった。


脚は太く、爪だけでなく足の先も尖っており、岩でできた天井や壁なら足を突き刺し、難なく移動できるらしい。


そのため、巨体でありながら頭上からの奇襲を得意としているようだ。


本来は二メートル近い大きさのはずだが、特殊個体なのか一メートル強しかない。


急いで反りの強い刀を抜いて正眼に構えた瞬間、ヤドムシが飛び掛かってくる。


横へ跳んで押しつぶしを避け、殻から露出している頭を狙って刀を薙いだ。


――ガギッ


こちらの狙いを読んだのか、ヤドムシは小さく跳んで体を捻った。


刀を止めることはできず、頭の代わりに硬い殻に直撃してしまう。


「うわマジか。図鑑にない動きをしてきたぞ」


 素早く距離を取り、刀を確かめる。


刃の中央が少し欠けていた。


少なくとも、目で見える範囲に新たなひびや歪みはなく、切っ先も無事である。


だが、内部までは無事とは限らない。


もう一度殻に当たれば、今度こそ折れてしまうかもしれない。


急いで反りの強い刀をしまい、直刀を引き抜いた。


次は殻ではない露出した部分へ、確実に切っ先を突き入れるしかない。


図鑑によれば、ダンジョンヤドムシは横へ走れず、横へ避ける時は跳ぶ癖があるという。


先ほどの防御行動は図鑑にはない動きだったが、少なくともこの点だけは図鑑通りであってくれ。


そう願いながら誘導するための動作に入る。


「行くぞ!」


 顔へ斬り込むと見せかけるため、刀を振り上げながら一歩踏み込んだ。


するとヤドムシは図鑑通りに横へ飛ぶ。


やったと思いながら隙を見逃さないよう、素早く着地点へ間合いを詰める。


「くらえ!」


 着地する間際の相手の顔めがけ、全力で突きを放つ。


「キキキキキ!」


 ヤドムシは刀から逃れようと暴れた。


しかし、次第に動きは弱まり――


「キッ!」


 最後にひときわ大きく鳴いて、動かなくなった。

読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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