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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第十五話 名前を隠す少年と、それを知る騎士

「金はいらないと言ったのに、どうしてこれは受け取ったんだ?」


 店へ向かう途中、少年が俺の持つ小袋を指さした。


中身は、ギルドから渡されたスライムの討伐報酬だ。


前回ゴブリンを倒した時の報酬を、俺はもらい忘れてしまったため、ギルドの人がわざわざ持ってきてくれた。


また迷惑はかけられないので、今回はすぐに自分で申告して受け取る。


「冒険者のおじさんからのお礼は、治療に使うお金だから断った。でも、これは仕事として決められた報酬だから」

「同じスライムを倒した金だろ?」


「意味が違うんだよ」


 ギルドの受付では、受け取らなければ困るとまで言われた。


無償で魔物を倒す者が増えれば、依頼人は正規の討伐料まで高いと言い始めるだろう。


命を懸けている冒険者の収入を、善意で奪い取ることになりかねない。


さらに報酬を受け取るには、魔物の種類や数、現れた場所を報告しなければならない。


その記録をもとに、次の巡回や討伐依頼が出される。


「目の前で困っている人は、お金がなくても助ける。でも、誰かの仕事まで無料にしてはいけないんだ」

「お前、俺と同じ年なのに、時々じじいみたいなことを言うな」


「祖父ちゃんに育てられたからね」


 そういうことにした。



「ここがアテナ屋だよ」


 店先には、金物屋ガノの古い看板も並んでいる。


「看板が二つあるぞ。どっちの店なんだ?」


 そう言われて確かにそうだな、とは思った。


今はうちとガノさんの店だけだが、今後増えた場合、何かまとまった屋号みたいなものがあった方が、お客さんは分かりやすいかもしれない。


「どっちもだよ。前は別々の店だったけど、今はガノさんたちも合流して皆で作業してる」


「商売敵を、自分の店へ入れたのか?」

「うちは人手が足りなかったし、ガノさんには技術があった。別々に困るより、一緒に稼いだ方がいいからね」


 少年は二つの看板を見比べ、首をかしげた。


「やっぱり変な店だな。じゃあ、あの刀もここで作ったのか?」

「祖父ちゃんに教わりながらね。でも今日のは不合格だから売れないよ」


「スライムまで斬ったのに?」

「スライムは斬れたけどこの素材じゃ持たなかった。もう一度素材を見直すよ。残りの一振りは、巨大コウモリを一撃で切れなかったから不合格」


 問題を改めて考えなければならない。


完璧な素材でできた武器などないだろう。


が、なるべく多くの人が安全に使え、生存確率を上げられるような武具を作りたい。


今は中古武具がメインだが、今後は素材や加工に詳しい職人も集め、魔物ごとに適した武具の研究をしたい。


「変なところで細かい奴だな」

「名前も教えない人に言われたくないよ。約束どおり、そろそろ――」


「おう、ヒサミツ。お帰り」


 祖父の声がしたので視線を向けると、奥のカウンターには彼のほかにもう一人いた。


青いマントと磨き上げられた鎧を身につけた男だった。


マントには町の門や公文書で見かける、領主家の紋章が銀糸で縫われている。


少年が男の顔を見た瞬間、足を止めた。


「げっ」


 鎧の男も、少年を見て固まる。


「なぜここにいる」

「それはこっちの台詞だ! 俺を探してたのか?」


「何のことでしょう」


 急に丁寧な口調になった。


どう見ても知り合いである。


「どうしたんじゃ?」

「いえ、師匠には関係のない――」


 男が慌てて口を閉じた。


「師匠?」

「……失礼。ジーク殿、今日のところはこれで」


 男が祖父へ頭を下げた瞬間、少年が店の外へ飛び出した。


「待って! まだ名前を聞いてない!」

「また今度な!」


「ジーク殿すみません! お、お待ちください!」


 鎧の男も少年を追い、二人は人混みへ消えていった。


「祖父ちゃん。あの騎士は誰なの?」

「昔、短い間じゃが道場へ通っていた男じゃ。今は領主様に仕えておる」


「あの少年は?」

「知らん。じゃが、ただの知り合いには見えんかったのう」


 名前を一つ知るはずが、代わりに領主家とのつながりだけが残った。


どうやら俺は思っていた以上に、訳ありの少年と出会ってしまったらしい。



読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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