第十三話 怪しい少年との出会い
「キキィ!」
薄暗い洞窟を進むと、頭上から高音の叫び声が聞こえる。
素早く直刀を抜き、見上げた瞬間、犬ほどの大きさの巨大コウモリが、爪を向けて急降下してきた。
――キン!
刀で爪を弾くと、手首まで衝撃が走った。
相手はすぐに舞い上がり、こちらの間合いから逃れてしまう。
(追いかけても届かない。こちらが届きやすいところへ移動しよう)
天井の低い場所まで下がり、わざと背を向けた。
「キィイイ!」
背後から敵が迫る。
振り向きざまに爪をかわし、袈裟斬りを放つ。
――ザグッ!
巨大コウモリはどさりと音を立てて俺の後ろに落ちる。
だが、切りつけ方か相手の硬さか反りの無さか、原因は分からないが絶命するまでには至らなかった。
「キィ……キィ……」
もがく姿を見て、胸が痛む。
「苦しませて悪かったな」
首へ刀を突き入れると、鳴き声が止まった。
俺は手を合わせてから、素材として使えそうな牙と翼膜だけを切り取り、籠へ入れる。
販売している刀より直刀の方が、剥ぎ取りをしやすかったのは新しい発見である。
だが通常戦闘で使用する際は注意が必要かもしれない。
次回は巨大コウモリとの戦いを考慮し、切るよりも突く方をメインに戦ってみよう。
鞘に収めた後で、二本目の反りの強い刀を抜いた。
「殺しておいて祈るのか。変な奴だな」
突然の声に振り向く。
岩の上に、俺と同じくらいの金髪の少年が座っていた。
整った顔には不釣り合いな小さな傷があり、上等そうな服も泥で汚れていて何か所も破れている。
布や靴は傷んでいても、縫い目などから高い技巧をもって作られているのがわかる。
町の子供が身につける物ではない。
前世で営業をしていた頃、自分の身なりもそうだが、相手の身なりもしっかり見ていた。
転生後の世界の子供を見ても、彼のような服を身に着けている子は、見たことがない。
「いつからそこにいたの?」
「お前がコウモリに背中を向けたところからだ。少しひやひやしたぜ」
「心配かけたみたいだね」
「誰も心配してない。お前わざとやったんだろ? だから面白いと思って声をかけた」
少年は岩から飛び降り、勝手に俺の籠をのぞき込んだ。
「一緒に来た大人は?」
「いないよ。君は入口の兵士に止められなかったの?」
「見つからなければ、止められないだろ」
胸を張って答えることではない。
俺が一人で入ることを許されたのは、以前にも祖父と来ていて兵士も分かっているからだ。
兵士の目を欺いて入るような、どこの誰かも分からない者の命を背負うつもりはない。
「このまま奥へ行くのか?」
「そのつもりだけど」
「なら、俺も一緒に行ってやる」
「遠慮します」
即答すると、少年が目を丸くした。
「一人で行くより複数のほうが安全だろ? 俺様はこう見えて強いぞ!」
少年が胸を張った、その時だった。
「だ、誰か! 助けてくれ!」
洞窟の奥から、男の悲鳴が響いた。
少年は笑みを消し、声の方へ駆け出した。
「待て! 一人で行くな!」
叫んでも止まらないので、その背中を追って走りだした。
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