第十二話 初めての単独ダンジョン探索
「にぃに、おそといこ?」
「はいはい」
ガノさん一家と共に新形態で営業を開始し、ひと月が経つ。
倉庫代わりに使っていた場所にガノさんのお店が移転し、共に作業をしてくれるおかげで、売り上げが伸びお客さんにも対応できていた。
毎日てんてこ舞いになるほど混んではいないので、お店が空いてる時には祖父やガノさんに鍛冶を教わりつつ、イノさんと共に店頭で呼び込みをする。
ただ皆、六歳児である俺のことを気にしてくれ、なるべく自由にさせようと外で遊ぶよう言ってくれる。
「二人とも、町から出ないようにな」
「はい。じゃあイノさん、いってきます」
「にぃに、はやく」
遊びに出る時のお供は、イノさんとミラさんの娘、三歳になったばかりのサナだった。
外で遊ぶよう言われても、俺が刀を持ち出そうとするのを見て、イノさんからサナの面倒を見てくれと頼まれる。
まぁ考えれば六歳児が遊びより、新作の刀を試すためにモンスターと戦う、というほうが不自然なのかもしれない。
「あははははは!」
「サナ、転ばないようにね!」
サナは元気に走り回る。
花を見つけるたびに立ち止まり、走って転んでは涙をこらえていた。
抱きしめながら頭をなでる。
サナこそが幼児であり、振り返れば俺は子供らしくなかった。
母が心配していないかと今更思い至り反省する。
そこからサナの手を取って走ったり、彼女を負ぶって走ったりした。
やがて疲れてきたのか、負んぶをせがまれ背負う。
じゃあ帰ろうかと聞くも、返事ではなく寝息が返ってきた。
転生してきてから、久しぶりに子供らしい時間を過ごしているな、と思いつつ家路に就く。
「サナ、今日はお兄ちゃんと遊ばない?」
「うん……」
ある朝、サナは珍しく母親のミラさんから離れようとしなかった。
午前の客足からして、売れても皆で対応できるから、自由にしていいと祖父に言われ、久しぶりにまとまった時間ができる。
せっかく時間ができたことだし、試作品として打った、刀身が真っ直ぐないわゆる直刀と、反りを強くした刀の二振りを持って、ダンジョンへ行こうと考えた。
お店の売り上げは好調だったが、刀の売れ行きは芳しくなかった。
ガノさんとイノさん、祖父に相談した結果、店先での実演を行いお客さんに意見を聞こうとなる。
実際にやってみたところ、売り上げは上がった。
とあるお客さんから、刀の切れ味で雑草を刈る鎌が作れないか、と聞かれ製作しようと考える。
ほかにも大きな魚を捌くのにも使えないかと聞かれており、それは真っ直ぐ打つといいかも、と祖父と母から提案された。
提案されたものへ生かすため、真っすぐに打った刀と、反りを強くした刀を打った。
打ち方はうちで販売している刀と同じにし、違うのは形状だけに留める。
どうせ鎌を作るなら、普通の鎌と差別化したい。
そう考えた時、この世界はモンスターの数が多いので、いざという時に武器として使える、そこを売りにしよう。
ダンジョンへ直刀も一緒に持っていき、切断性能を試してみようと思った。
ダンジョンへ行くための準備は完了している。
このタイミングを逃す手はない。
「祖父ちゃん。南の採取ダンジョンへ行ってもいい?」
「行くとしても第一層だけじゃ。ダンジョン入り口で貸し出される、一時間を計る砂時計の砂が落ちきる前に戻る、そして危なくなったら逃げることを優先する。これを守れるなら行ってもいいぞ?」
「分かった。約束するよ」
南の採取ダンジョンは、町の近くにある初心者向けの場所であり、町周辺のダンジョンの中では安全な方だといわれていた。
入口では兵士が出入りを記録し、ダンジョンへ潜る者には砂時計を渡す。
ここは冒険者も定期的に巡回しており、俺は祖父と何度も魔物を倒しにきていた。
これまでの動きを見て、祖父は俺一人でも動けると判断し、許可を出してくれたのだろう。
試作品の刀二本と素材用の籠を背負い、俺は初めて一人でダンジョンへ入った。
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