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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第十一話 二つの店が手を組めば、百人力

「いらっしゃいいらっしゃい! 今日の午後は特別に中古武具が一割引きだよ!」


 お客さんが引いて皆順番に昼食を取り終わったところで、手の空いたイノさんが店の前で呼び込みを始める。


新品の包丁が飛ぶように売れているが、それ以外の物が売れていなかった。


特に中古武具の在庫が減っていないことに気づき、イノさんに相談したところ、今日の売り上げを考えれば、特別に一割引いて売ってもいいのではないか、と提案を受ける。


祖父に相談したところ、やってみようとなりイノさんに伝えると、喜んで呼び込みを始めた。


うちではそういうのをやっていなかったからか、新規のお客さんも店に入ってきてまた混雑し始めた。


「イノは凄いな。いつもあれをやってるのか?」

「え、いや……」


 ガノさんは祖父の問いに戸惑いを隠せなかった。


そういえば金物屋を通った時、うちと違って扉は閉まっていたし、誰もが入ってきやすい感じではなかったのを思い出す。


ただ一度だけ、去年の今頃イノさんが今日のような呼び込みをやっているのを、見たことがあるような気がする。


まさか包丁の買い替え周期じゃなくて、イノさんの営業努力の結果じゃないだろうな。


ガノさんは生粋の職人であり、見てわかりやすい頑固おやじである。


前世でも開発部長は営業チームに当たりが強く、営業なんてしなくても良い商品は勝手に売れる、と豪語していた。


イノさんにとって今回の助っ人は、才能を見せる良い機会だったのかもしれない。


ならば自由にやってもらうのが、彼にとっても店にとっても良い方へ向かう。


「お祖父ちゃん、ガノさん、包丁入れ終わったら買取品の修復を! 閉店までもうあまり時間がないよ! イノさんのお陰でできたチャンスだから、絶対逃せない!」

「「お、おう!」」


 ここのところ忙しく、ガノさんたちが店に来てから、さらに売り上げが伸びてうれしい悲鳴を上げていた。


さらに困ったことに、金物屋の商品をうちに求めてきたりもし始め、とても開店時間内で収まりきらず、転生して初めて夜遅くまで仕事をして一日を終えた。


 翌日からもガノさんたちはうちに来てくれた。


昨日のことを考え、隣に在庫小屋として使っている場所を整理し、ガノさんの金物も置いておくことを提案し、皆で運び込んで開店する。


「ジーク、それにヒサミツよ、話がある」


 二週間後、閉店したところで、ガノさんにそう切り出された。


皆に閉店作業を頼み、鍛冶場で話すことにする。


「なんじゃガノ。言いたいことは何でも言うがいい。今回はお前とイノ、それにミラさんのおかげで助かった。これまで払った給料に、わしはさらに上乗せしようと考えているくらいじゃ」


 祖父の言うことに俺もうなずく。


人手として戦力になったのはもちろんのこと、店の経営状態は好調を維持していた。


従業員の皆にも、売り上げが伸びた日は臨時手当を出している。


特にイノさんの呼び込みは効果が高く、さらに彼は接客の才能もあり、鍛冶場よりも売り場メインでガンガン回してもらって助かった。


「いや、俺よりヒサミツだ。三十の俺よりも接客が上手い。皆、彼と話して買っていく」


 照れくさそうにしながら俺を褒めてくれるイノさん。


俺は、自分こそ子供だから皆が可愛がってくれているだけで、純粋な営業力はイノさんの方が高いですよ、と真面目に返す。


「わしからしたら、お前たち二人とも凄いぞ? なぁガノよ」


 祖父から話を向けられるも、ガノさんは目をつぶり腕を組んで反応しない。


イノさんがガノさんにどうしたのかと問うと、少し間があってから目を開け、意を決したような顔をする。


「折り入ってジークに頼みがある」

「なんじゃ改まって」


「隣の倉庫代わりに使っている家な、あれを俺に貸してくれんか?」

「借りるということは移転するということか?」


「そうだ。俺は今までイノに俺のやり方を押し付けるばかりで、息子の良いところを見ようともしていなかった。もちろん金物を作る腕も磨いてもらいたいが、もっとすごい力があるならそれを生かしてほしい」

「親父……」


「じゃがガノ、恐らく売り上げはイノの力で増えるじゃろうが、それで店を維持していけるか?」

「そ、それは……」


 押し黙るガノさんとイノさん。


祖父は俺に視線を向ける。


俺は正式な跡取りなのだから、お前が決めなさいということだろう。


なら答えは簡単だ。


この二週間で売り上げは増えたが、皆でやってなんとかお客さんに迷惑を掛けずに、運営できている。


今また別々に商売をしても、お客さんに不満を抱かせず、そして売り上げを維持できるとは思えなかった。


それは皆が分かっていることだ。


ガノさんももちろん分かっている。


だがプライドもあるから、一緒にやろうと俺たちに頼むことは出来ないだろう。


「ガノさん、アテナ屋の跡取りとして提案があります」

「ヒサミツ、なんだ?」


「うちの店と一緒に商売をしませんか?」

「金物屋ガノの看板を捨てろというのか」


「いえ、引っ越してきてもらって、看板もそのまま出してください。ただ仕事を一緒に行い、どちらの商品が売れたかや、必要経費などを帳簿に付ける。それを踏まえて利益を分配するというのはどうでしょうか」


 うち主導ですべて一緒にして分配しては、金物屋ガノがなくなったように感じるかもしれない。


そうしないためにも、お互いの仕事の成果だけでなく、必要経費なども帳簿に付けて、利益の分配を正確にする必要があるだろう。


これならガノさんの矜持もやる気も保てるし、雇われている感覚にもならないと思った。


さらに後々お互いに言った言わないにならないよう、契約書を作っておこうとも考えている。


人間だから忘れることもあるし、間違えることもある。


そういう時に紙に残しておくのは大切だ。


「……それが正解かは分からんが、しばらくそれでやってみるか」

「そうじゃな。まずはヒサミツの提案で始めてみよう。何より明日も営業せにゃならんし、引っ越すにもすぐには出来んから予定を立てんと」


「よし、ならばそれでいこう。イノ、帰って引っ越しの準備じゃ!」

「おう! じゃあジークさん、ヒサミツ、また明日!」


 ガノさんとイノさん、それにミラさんは疲れているだろうに、とても気合の入った顔で帰っていく。


うちも父が抜けたことで職人が足りなかったし、ガノさんたちもこれまでとやり方を変えられれば、きっと今まで以上に売り上げが伸びると思う。


俺の提案がよい未来に繋がるよう、願いながらガノさんたちを見送った。



 

読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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