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捨て値の呪物を買い漁る俺、外した呪いで無双する〜誰も使えない神話級遺物、俺だけ全部使えます〜  作者: 渋谷 爽月
第2章 三百十二点、全部訳あり

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第23話 失敗した七組の、その先へ

 灯りが戻っても、俺たちは喜ばなかった。

 喜んでから、床が動いたら困る。


 ノルが部屋を一周する。

 格納台の番号を一つずつ読み、温度と魔力の流れを確かめる。

 リシェはその結果を、元の一覧へ書き込んだ。


 俺は取っ手の前へ座り込んだ。

 逸走の呪いが、まだ軸を回している。

 普通の循環が戻った今は、余計な力だ。


 冷めるのを待ち、両手を当てる。

 黒い糸を引き、鉄筒へ戻す。

 空だと思っていた筒が、また重く感じられた。

 重さそのものは、ほとんど変わらない。

 役に立った理由を知ると、持ち方が変わるのだ。


『隔離運転を解除。未帰還者を照合』


 ノルが俺を見る。


『保守者、応答を要求』

「レイ。いる」

『検分補助者』

「リシェ。ここ」

『護衛者』

「ゼン。立ってるぞ」


 金属の鳥は、三人の顔を順番に見た。


『未帰還者、なし』


 そこでようやく、俺は壁へ頭を預けた。


「……終わった」


 リシェが隣へ座る。

 彼女の膝も、少し震えていた。


「王冠、惜しかった?」

「今聞くか」

「惜しがる時間を作るって、約束したから」


 俺は一度笑い、それから大きく息を吐いた。


「惜しい。でも、拾ってたら、この話はできなかった」


 彼女は何も言わず、肩を寄せた。

 ほんの少しだけ。

 俺も、動かなかった。


     ◇


 出口では、セラが待っていた。

 俺たちを数え直し、ノルまで数えて、九と書きかける。

 人の欄へ八。

 端末の欄へ一。

 書き分けてから、深く頭を下げた。


「全員の帰還を確認しました。救助と復帰作業について、追加依頼として記録します」

「礼より先に帳面か」

「礼だけでは、あなたたちの仕事が残りません」


 その言葉に、俺は何も返せなかった。

 働いても、書類がないことにされてきた。

 今は、働いた分を書いてくれる人がいる。


 少し離れたところで、エルンが座っていた。

 両手には縄。

 封を破った箱と、回収した鍵が、彼の前へ置かれている。


「部下が勝手にやった」


 俺たちを見るなり、男はそう言った。

 若い従業員が、顔を上げる。

 唇が震えていた。


「違います。止めたら、今までの損を給金から引くと」


 セラは若者を遮らなかった。

 言い終えるまで待ち、別の紙へ書いた。

 年嵩の男も、同じことを証言した。

 ゼンは鍵を回す姿を見ていた。


 エルンが、俺へ視線を向けた。


「私を助けたでしょう。私が悪いのなら、なぜ」

「あんたを助けるのと、あんたのしたことを認めるのは、別だ」


 男は口を開けたまま、黙った。

 俺はその前を通り過ぎ、エダの荷車へ乗った。


「来るときより、荷が軽いね」


 エダが言う。

 王冠も、大きな宝箱もない。

 俺の膝には、温かい茶の入った杯が一つ。


「でも、いい物は持って帰れた」


 俺は綴りへ手を置いた。

 七組分の失敗の後ろに、八組目の記録が増えている。

 最初の頁には、ノルが案内した本当の施設名を書いた。


 第十三保守庫。


 その下へ、リシェが一行足す。


 初回搬出、成功。


次話、三百十二点の検分結果を公開。報酬と回収品の行き先を決めます。

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