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捨て値の呪物を買い漁る俺、外した呪いで無双する〜誰も使えない神話級遺物、俺だけ全部使えます〜  作者: 渋谷 爽月
第2章 三百十二点、全部訳あり

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第22話 外した呪いに、戻る場所を作る

 呪いを、正しい場所へ間違えずに取り付ける。

 変な言い方だが、今必要なのはそれだった。


 左手を取っ手の軸へ。

 右手を、逸走の呪いをしまった鉄筒へ。

 黒い糸を引き出す。


 車軸から外したときと、同じ太さだ。

 だが、熱い部屋では掌の汗が邪魔だった。

 金属が滑り、指が離れかける。


 リシェが布を差し込んだ。

 指先へは触れないよう、俺の手首だけを支える。


「ゆっくり。動かないから」


 糸を、回転する軸へ巻く。

 最後まで移ったことを確かめ、空の筒へ蓋をする。

 俺は取っ手を、排熱の表示に合わせて回した。

 三回。

 四回。

 そして、手を離す。


 取っ手は一度止まり、それから、また回り始めた。


 荷車なら事故になる。

 今は、それが欲しかった。


 黒い液が、途切れず管を流れる。

 ノルが軸の下へ止まり、魔力の灯りを見る。


『補助回転、維持。残留魔力を消費中』


 永久に回るわけじゃない。

 呪いにも、動かす力は要る。

 格納台から逃げてきた魔力が切れたら、止まる。

 それでいい。

 元の循環へ戻るまで働けば、十分だ。


 俺は反対側の弁へ走った。

 固い。

 手の皮が擦れる。

 工具の柄を差し、体重をかける。


 金属が、嫌な音を立てた。

 折るな。

 力を増やせばいいときと、抜いた方がいいときがある。

 俺は一度離し、軸の下の錆を削った。

 もう一度、ゆっくり押す。


 弁が回った。

 奥で水が落ちる音がした。

 熱かった頬へ、少し冷たい風が触れる。


「開いた!」


 リシェが図面へ印をつける。


「次は、中央の流れが落ち着くまで待つ。赤い線が全部消える前に鍵を戻すと、また隔離が動く」


 俺は義眼を持ち上げた。

 薄い点検窓の裏へ、青と赤の線が交互に走る。

 赤が細くなり、また太くなる。

 まだだ。


 ゼンが、扉の向こうへ現れた。


「鍵は受け取った。入口の全員、退避済みだ」


 彼は鍵穴の前へ立つ。

 俺は線を見る。

 リシェが手順を読む。


 赤い一本が、最後まで残った。

 棚から戻され続けていた器の列だ。

 俺は図面を指でたどった。


「七回目の報告。棚の足元の高さ、違ってなかったか?」


 リシェが綴りをめくる。


「奥だけ、指二本分沈んでる」


 器が滑る理由は、魔法ではない。

 棚が傾いているのだ。


「ゼン、鍵はまだ。楔を一本くれ!」


 彼が腰の楔を投げた。

 俺は棚へ戻り、脚の下へ叩き込む。

 器が戻る。

 揺れる。

 今度は、落ちない。


 帰庫の光が、やっと止まった。


「今だ!」


 鍵が回る。

 青い線が、床の奥から一本ずつ戻ってきた。


 リシェは、まだ手順盤から手を離さなかった。

 ゼンも、鍵を握ったまま動かない。

 俺は傾いた棚を押さえ、最後の器が揺れなくなるまで待った。


 足元で、取っ手が回り続けている。

 勝手に走る荷車を止めたときには、厄介なだけだった音だ。

 今は、その一回ごとに、俺たちの帰り道が少しずつ開いていく。


次話、復帰の確認と全員の帰還へ。仕事は、後始末まで終えてこそ完了です。

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