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捨て値の呪物を買い漁る俺、外した呪いで無双する〜誰も使えない神話級遺物、俺だけ全部使えます〜  作者: 渋谷 爽月
第2章 三百十二点、全部訳あり

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第18話 ここは宝庫じゃない、修理待ちの棚だ

 修理を待つ棚だった。


 俺たちが廃棄庫と呼んでいた場所の、本当の名前は第十三保守庫。

 壊れた道具を集め、危険を封じ、直せる人間を待つための施設だった。


「誰も、戻ってこなかったのか」


 ノルはすぐには答えなかった。

 古い日誌へ嘴を当て、擦り切れた文字を一つずつ示した。


『最終保守記録から、更新なし』


 帰ってこなかった理由までは、残っていない。

 俺は勝手な物語をつけ足さず、日誌を閉じた。


「じゃあ、俺たちが途中からやる」


 鳥が俺を見た。


『継続作業には、内容の引継ぎを要求』

「分かってる。最初から教えてくれ」


     ◇


 ノルの説明は、長かった。

 だが、全部覚える必要はなかった。

 リシェが大事なところを三つに絞った。


「帰庫は、品を持ち出させないため。格納台は、余分な魔力を逃がすため。管理台は、どこへ流すかを決めるため」


 俺は、最初の杯を手に取った。

 帰庫を外すだけで、格納台の働きまで止まる物がある。

 なら、先に別の逃がし先を用意する。

 それが、正しい修理の順番だった。


 奥の棚には、格納台を載せる運搬用の枠があった。

 規格が同じで、番号を登録できる。

 だが、十八枚しか残っていない。


「最初の十八点、ちょうどよかったな」

「偶然に頼らないで。載せられる重さも調べるわよ」


 リシェは容赦がない。

 俺も、今はその方がありがたい。


 小さな杯を、枠へ移す。

 ノルが管理台で番号を照合する。

 俺は義眼で、青い線が枠の小さな魔石へつながるのを確かめた。


 冷めるまで待つ。

 温度を測る。

 そして初めて、帰庫の黒い糸を、空の保管札へ移す。


 杯は戻らない。

 だが、熱くもならなかった。


 俺は杯を入口へ運んだ。

 一歩、外へ。

 掌の重みは、消えない。


「出た」


 小さな声が、自分の口から漏れた。

 セラが杯へ触れ、指で縁の温度を確かめた。


「七回、できなかったことが」

「七回分の記録を、使ったからだ」


 俺は杯を彼女へ渡した。

 セラは割れ物を持つ以上に、慎重に受け取った。


 保管札は、庫内の施錠箱へ入れる。

 帰庫の呪い自体は残っているから、むやみに外へ持ち出さない。

 札は安全な場所で管理し、回収品とは分ける。


 全部を一度に運べるわけではない。

 十八点を終えたら、枠を追加で作るか、使い回すか検討が必要だ。

 それでも、道はできた。


 エダは野営地の机へ杯を置き、少し冷めた茶を注いだ。

 俺たちは交代で、温度の変化を確かめた。

 宝を手に入れるというのは、こうして茶を冷まさず飲めることでもある。


 だが、その話を聞いたエルンは、杯を見なかった。

 王冠のある奥の方を見た。


「その枠を使えば、王冠も運べますね」

「まだ無理だ。つながってる設備が多すぎる」

「帰庫の呪いを外して、元の電源を切ればいいのでは?」


 俺は顔を上げた。


「切ったとき、余った魔力がどこへ行くか分かってない」


 男の笑みが消える。

 リシェが机の上の杯を、俺たちの間へ置いた。


「一つずつです。今日、最初の一つができたところなんです」


 エルンは杯の湯気を見つめた。

 その目が、嬉しそうではなかった。


次話、鍵が回り、保管庫の隔離運転が始まります。

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