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#7媒体

ハルモンが仕事に復帰してから数日後、テオが再び来訪すると連絡があったため、俺とハルモンは家で待機していた。


朝食を済ませた後、部屋の中でハルモンは作業を、俺は部屋の中の片付けや剣の手入れをして過ごす。少しするとアグネスに呼ばれた。ハルモンと共に応接室へ向かう。


扉を開けると、テオはソファーに腰掛けていた。先に部屋に入ったハルモンの姿を見てその場で立ち上がり、軽く頭を下げる。



「テオ、だっけ。お勤めご苦労様」



ハルモンが軽く声をかける。



「いえ……。お時間を頂いてしまい恐縮です」



「とりあえず掛けなよ」



ハルモンに促され、テオはソファーに腰を下ろす。ハルモンはその向かいへ。ソファーの真ん中に腰掛けると、軽く足を組んだ。俺はハルモンの斜め後ろに立った。


テオは、ハルモンの後ろに立つ俺の姿を見てほんの少し眉を顰めた。



「……それで、その……」



「なに?」



「……お付きの方の手当ては、貴方様が……?」



「そうだけど。何か問題ある?」



ハルモンの言葉に、テオは目を見開いた。



「なんと……。貴方様はもしや、治癒魔法をも自在に行使できるのですか……?」



ハルモンはふっと笑う。



「全然大したことないよ。他の魔導士たちと大差ない。繋ぎ手じゃないんだから、当然でしょ?」



「ですが……じゃあ、そのお付きの方は……?」



「『女神の涙』を使ったんだ。僕と繋ぎ手との違いが石の有無だけだって言うのなら、外から補えばいいのかなと思ってさ」



テオは息を呑んだ。それから、少しだけ身を乗り出す。



「……それで、本当に?」



「うん。この方法なら、繋ぎ手じゃなくても治癒は可能だね。ただし、魔導士側の体の負荷はあまり変わらないから、そのまま繋ぎ手の代替にするのは難しいと思う」



「……そう、ですか」



テオは息を吐き、視線を落とす。その様子は、どこか途方に暮れているように見えた。



「……僕も、貴方達と目的は同じだよ。世界が壊れるのは困る」



テオは何も言わない。だが、ハルモンを見つめる瞳に、ほんの少し期待の色が混ざった。しかし、その視線を受け止めるハルモンはにべもない。



「ただし、やり方は違うと思うけどね。あなたたちも理解してるとは思うけど、閉じてるだけじゃ、いずれ破綻するよ」



「……ですが、ただ開くだけで解決する問題ではありません」



「そうだね」



部屋にの中に沈黙が落ちる。少しして、口を開いたのはテオだった。



「……貴方様の頭の中には、この問題を解決するための突破口がおありなのですか」



「突破口になるかはまだ分からないけど。解決するために色々研究してる」



ハルモンは少し考えた後、顔を上げてテオの方を向いた。



「……“あれ”をまたいくつか貰いたいんだけど。譲ってくれない?」



なんてことないように言う。だが、テオは明らかに狼狽していた。



「……そ、それは……」



「手伝ってくれとは言わないけど。少しは協力してよ」



「……これ以上はご容赦を。我々にとっても、貴重な資源なのです」



「三人だ」



ハルモンの声が、部屋にの中に落ちる。まるで、時間の流れが止まったような感覚がした。



「今、残ってる繋ぎ手。……もう、三人しかいない」



ハルモンはきっぱりと、そう断定した。







それから数日後、テオの手によって再び『女神の涙』が届けられた。


今度は、以前よりも少し大きめの木箱の中に、青い石がいくつか入れられていた。


中を確認したハルモンは、テオににこりと笑顔を向ける。



「ありがとう。まだ残ってるなら、無理のない範囲でまた譲ってくれると嬉しいな」



テオは無言で、ただ視線を落とすだけだった。




テオが帰った後、部屋に戻ったハルモンはすぐに机に向かうと、木箱の中の『女神の涙』を二つ、手に取った。


ドクン、と、心臓が音を立てる。



「ハルモン」



「ん?」



ハルモンがこちらを振り向く。



「……また、危ないことをする気か」



そう尋ねると、ハルモンはほんの少し笑った。



「心配性だなぁ。これくらい、大丈夫だよ」



そう言って机に向き直ると、二つの『女神の涙』を机の上に並べて手をかざす。


手から青い光が溢れる。しばらくして、カチッと音が鳴った。


二つだった『女神の涙』が、ひとつにまとまっている。


それは、一つだった時よりもほんの少し大きくなったように見えた。



「……前に、他の石でやっていた」



「そう。これは石じゃないけどね。媒体」



「……媒体?」



「うん。接続の」



俺が何も言えずにいると、ハルモンはさらに続ける。



「たぶん、量が必要なんだ」



箱の中から、小さい一つを持ち上げて言う。



「これさ……世界と同じ素材かもしれないよ」



……何も言えない。


俺は、ハルモンの言っていることが全く理解できなかった。




その後、ハルモンはもう一度『女神の涙』をくっつけた。また少しだけ大きくなったそれを机に置くと、小さく息を吐いた。



「……これ、怪我の治癒までは行かないけどけっこう疲れるかも。普段は仕事もあるし、一日に何回もやるのは無理だ」



そう言って、諦めたように椅子から立ち上がる。


名残惜しそうに、木箱の中を見つめていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。


次回、『軽い』。


明日11時に更新予定です。


よければブクマや評価、コメントなどいただけると励みになります。


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