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#28誓い

家の前に到着し、馬車からライ君を降ろした。


待っていたアグネスと二人で、ライ君の体を支える。


「客間の方を使われますか?」


「僕の部屋の方が道具は揃ってるけど……。ライ君、二階まで上れそう?」


ライ君は、小さく頷いた。


廊下を進み、体を支えながら階段をゆっくり上がる。


ようやく、僕の部屋に到着した。


部屋に入り、すぐにライ君をベッドに寝かせる。


「アグネス、お湯と布を頼める?」


「かしこまりました」


アグネスが部屋を出ていく。


僕は、改めてライ君の状態を確認した。


顔に、あざ。


服はあちこち破れ、血が滲んでいる。


腕にもあざと、小さな切り傷がいくつもある。


傷口は、固まった血で塞がっている。


(……どうして、こんなになるまで)


また視界が歪む。


服の袖で拭った。


一旦ベッドを離れ、棚から使う薬や道具を取り出し、手当ての準備をする。


少しすると、アグネスがお湯と布、包帯などを持ってきた。


「ありがとう。……あとは僕がやるから、仕事に戻って」


僕は手当の道具をベッドの横の小さなテーブルに置いた。








俺は、ハルモンが手当の準備をする様子をぼんやりと眺めていた。


アグネスからお湯と布を受け取ると、こちらへ歩いてくる。


小さなテーブルに置かれていた鋏を、手に取った。


「そのままでいいから」


躊躇なく、布に刃を入れる。


金属が、肌に触れる。


ひやりとした感触に、思わず息が詰まる。


「……っ」


裂ける音。


血で張り付いた布が、切り離されていく。


「ごめん、痛かった?」


「……いや」


少し遅れて、短く返す。


(違う)


切り離された布。


見覚えのある布だった。


(……ああ)


すぐに意識を切る。


ハルモンは、傷を確かめるために、さらに身を寄せてきた。


視線が、勝手にそこへ落ちる。


言葉を紡ぐ口元。


かすかに開いて、息が触れる距離。




(……やめろ)




思うのに、逸らせない。




(……動けたら)




ほんの一瞬、そんな考えがよぎる。




(……いや)


ゆっくりと目を閉じる。




(しない)








最後の布を取り除く。


露わになった体に、視線が止まる。


言葉が出ない。


(……これは)


指先が、わずかに止まる。


一瞬だけ、呼吸が乱れる。




(……誰がやった)




そのまま、静かに目を伏せる。




ライ君は、何も言わない。


僕を責めないし、言い訳もしない。




いつだって、自分以外を守るために傷ついている。




(……そうか)




理解する。




(このままじゃ、だめだ)


(この人が、こんな風に傷つく世界のままじゃ)




ゆっくりと息を吐く。




(変えないと)




(全部)


視線を上げる。


もう、迷いはなかった。








俺は、手を動かすハルモンを見ていた。


真剣な表情を浮かべながら、傷口を丁寧に拭い、軟膏を塗りつけていく。


痛みはあるが、触れられると心地良い。


そのまま身を任せる。




ふと、ハルモンがぽつりと言った。


「……騎士とか、関係ないよ」


一拍、置いて。


「僕を守ってくれた。それだけで、十分でしょ」


手は止まらない。




(……ああ)




(もう、いい)




役目とか、


自立とか、


全部どうでもいい。




ここにいればいい。




(……今、動けたら)




(——ちゃんと、誓うのに)




お前の前に跪いて。




その手を取って、




手の甲に、口付けを。















第五章 完











第五章、完結いたしました!

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今後も、この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。


次回から第六章に突入します。


通常通り、来週月曜日の11時に更新予定です。


よければブクマや評価、コメントなどいただけると励みになります。



それから、活動報告の方で『AI「もう見ていられない」シリーズ第二弾』を公開しました。

牢屋に入れられたライとハルモンが、自力で脱出してしまうというとんでもない話です。

読むとけっこうスカッとするかもしれません。

気になる方は活動報告からどうぞ。


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