表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/75

#21非常用

席を外していたルーカスが部屋に戻り、僕の側に来る。


「ハルモン」


「ルーカス。どうかした?」


「ライが重傷を負ったらしい。騎士達が連れ帰っている」


「……え……?」


「お前の家に直行するよう指示しておいた。……今日はもう帰れ」


「……わかった」


机に広げていた紙や道具をまとめて鞄に押し込み、研究所を出た。


足が、自然と速くなる。


(……どこをやられた)


(……血、どのくらい出ている)












家に戻り、ライ君が戻ったらすぐに知らせるようにアグネスに伝えると、二階の自室に入る。


外傷によく効く薬を、いくつか取り出して用意しておく。


準備しながら、ふと、手が止まる。


(傷の程度によっては、薬では間に合わないかも……)


首を振る。


(……間に合わせる)














来るときに半日かかった道が、信じられない速さで過ぎていく。


王都に着くと、まだ日は高かった。


風が止み、荷車の速度が戻る。


今までが速すぎて、止まっているように感じた。


「……ゼファー、大丈夫か」


「……流石に疲れたな。帰って寝たい」


「ああ、帰ったら存分に寝てくれ。……とにかく今は、ノエシスの屋敷に直行するぞ。ナギ、場所の案内を頼めるか」


「はい。……あちらの道へ入って、真っ直ぐです」






意識が朦朧とする中、気づけば王都に戻ってきていた。


見慣れた景色と空だが、いつもより少しぼやけていた。


「あそこの屋敷です!」


ナギの声が聞こえて、少しすると荷車が止まった。


アルヴィンが荷車を飛び降り、家の方へ駆けていく。




少しすると足音が二つ、近づいてきた。


「申し訳ありません。お借りした護衛に大怪我をさせてしまいました」


「いいから。それより、どこ?」


視界に、ハルモンの姿が入ってきた。


ぼやけていても、わかる。


いつもより余裕のない表情をしていた。


傷の状態を見られる。


ハルモンは何も言わない。


息を吐き、手をかざす。


青い光に包まれる。


その額に、じんわりと汗が浮かぶ。


フッと、光が途切れた。


「……どう? もう痛みはない……?」


「あ、ああ……」


「そう……。よかった」


ハルモンは体を起こし、その場に立とうとしたが、ふらついて立ち上がれない。


手も、震えている。


そのまま、こちらに倒れてきた。


反射的に、抱き止める。


「ハルモン……!?」


「……少し、横になりたい」


そのまま、目を閉じた。


先ほどまでとは違う意味で、血の気が引いた。


ハルモンを抱えながら体を起こすと、そのまま横抱きにして、荷車から降りる。


立つとひどい眩暈がするが、気にしない。


そのまま家へ向かい、扉を開けると、二階への階段を一気に上がった。


「……手伝います!」


後ろからナギの声が聞こえた。


その声は、少し上ずっていた。






家の前に、荷車とともに取り残される。


しばらく動けなかった。


騎士の一人が、静かに口を開く。


「……今の、見たか?」


「……ああ」


「連れていったぞ……?」


「いや、あれは……」


無言。


「……ライさんの主、あんな美人なのかよ」


「やばいだろ、あれ。貴族だよな?」


「そうだろ。……でもあの顔は反則だよな」


「仮に男でも関係なくないか」


「関係なくはないだろ」


「……隊長。ああいうの狙ってみたらどうだ」


「ぶっ!! ライに殺されるわ!」


「そこまでか?」


「そこまでだ」


ゼファーが息を吐く。


「ハルモン・フォン・ノエシス。……相変わらず、とんでもないな」


俺も、ゼファーのため息がうつった。


「……帰還するぞ」







ここまで読んでいただきありがとうございます。


この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。


次回、『血を補う薬』。


明日11時に更新予定です。


よければブクマや評価、コメントなどいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ