#13結合
ハルモンと共に、研究所へやってきた。
壁際に立ち、たまに手前の連中の手伝い。
ここは変わらない。
しばらくすると魔物対策室の連中が部屋に入ってきて、ハルモンの横にやってきた。
「ハルモンさん、いま、少しお話しさせていただいても…?」
ハルモンは小さく息を吐き、魔導士を見る。
「……なに?」
「昨日、ライさんから伺ったんですけど、魔物の残留物をご覧になっていたと……」
「あー、いくつか見たよ。あれ、面白いよね。今回は同じ種類のものがたくさんあったけど、でもどれも少しずつ違うのが興味深かった」
「少しずつ違う……?」
「うん。あれってさ、局所的には崩壊してるのに、全体は保たれてるんだよね」
「……は?」
「魔物ってさ、“魔法でできてる”んじゃなくて」
少し考える。
「“魔法を使って維持されてる構造体”なんじゃない?」
「……いや……すみません。それ、どういう意味です?」
(分からん……)
(だが、重要そうな気がする)
「今って、出現報告のあった場所に騎士とか傭兵を向かわせてるんだよね」
「そうですね……」
「魔物の情報集めるのもいいけど、僕はもっと根本的なこと調べたほうがいいと思う。ほら、魔王伝説とかあるでしょ」
「民間伝承みたいなものだけど、何か理由あるかもよ」
「……ええと……」
「……つまり、どういう……」
「さぁ」
即答だった。
魔導士は何か言いかけて、言葉を失う。
「……一度、持ち帰って整理します」
「うん、そうして」
軽く返される。
魔導士たちは顔を見合わせ、小さく頷いた。
そのまま、どこか落ち着かない様子で部屋を出ていく。
(分からん)
(だが、放置していいものではない気がする)
夕方。
仕事を終え、帰り道を二人で歩いていた。
半歩前を歩いていたハルモンが、ふとこちらを向く。
「ちょっと寄り道していい?」
俺が軽く頷くと、ハルモンは市場の方へ足を向けた。
後を追いかける。
市場の並びにある、小さな露店。
そこには、何やらキラキラした石がいくつも並んでいた。
ハルモンはしゃがみ込むと石を手に取り、真剣な表情で見つめている。
「……それは何だ」
「宝石の原石だよ」
「……これと、これ」
ハルモンは同じ色の石を二つ選び、露店の主に代金を支払った。
「お待たせ。帰ろっか」
いつもとさほど変わらず、家に到着した。
「お帰りなさいませ!」
「ただいまー」
玄関で、ナギとミアに出迎えられる。
俺はハルモンが脱いだ外套を預かり、衣装掛けに掛けた。
ミアの目が一瞬止まる。
「すぐ夕食になさいますか?」
「うん。お願い」
一度ハルモンの部屋に向かい、荷物を置く。
ハルモンは、先ほど購入した石を机に置いた。
そのまま、食堂へ。
いつもの席に付き、並べられた食事に手をつけた。
「あ、そうそう。ミアにお願いがあるんだけど」
「はい! 何でしょう」
「ナギちゃんを仕立て屋に連れて行って、服を何着か見立ててやってもらえる?」
「えっ」
ナギは、目を見開いてハルモンを見た。
「服が少ないのは不便だろう?それに」
ハルモンはパンをちぎりながら。
「旅人の格好のままだと、王都では目立つ場面もあるかもしれないからね」
淡々と、そう言った。
「……でも」
「遠慮しなくていいよ。僕が、そうしたいだけだから」
そう言って、ハルモンは微笑んだ。
「……ナギちゃん、ハルモン様のせっかくのご厚意だよ?」
「……ありがとう、ございます」
ナギは小さく俯く。
少しだけ、頬が赤かった。
食事を終え、部屋に戻る。
ハルモンは「さて」と言い、すぐに机に向かった。
机の上に、先ほど購入した石が二つ置かれている。
ハルモンはそれを見ながら呟く。
「繋ぎ手の力が“結合”なら――構造も、維持できるはずだ」
指先をかざす。
淡い青い光。
二つの石の境目がわずかに溶ける。
「……何してる」
「実験」
「……危なくないのか」
「たぶん。まあ、やってみないことにはわからないけど」
しばらくして――
カチ、と小さな音がした。
石が一つの塊になる。
ハルモンが目を細める。
「……やっぱりだ」
(……何が?)
「……それ、何がわかったんだ?」
「結合だよ」
「……石がくっついただけに見える」
ハルモンは、石を持ち、力を入れた。
石を割ろうとしているらしい。
だが、割れない。
音もしないし、表面に傷すらつかなかった。
「結晶格子まで再構成されてる……」
(何言ってるか全然わからん)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。
……ついに二人が結合すると思いました?
残念!石でしたー。
二人は全くもって清潔なのです。全年齢の設定ですしね。
次回、『確定している未来』。
水曜日の夜8時に更新予定です。
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