#12いつも通り
朝。
日の出とともに目が覚めた。
横を見ると、ハルモンがすぐ横に眠っている。
警戒も、距離もない。
隣に、いる。
しばらく、そのまま見ていた。
規則正しい呼吸。
無防備な寝顔。
指を伸ばし、髪に触れる。
整える。
整えた後、わずかに指先に残る感触。
(…………)
そのまま、もう一度ハルモンの顔を見る。
(……覚えておくか)
もう一度、目に焼き付ける。
それから、起き上がった。
ベッドを降り、壁に立てかけてあった剣を手に取る。
そのまま、部屋の外へ出た。
鍛錬を終えて、部屋へ戻ると、ハルモンはもう起きていた。
「あ、ライ君おはよう」
「……おはよう」
すでに着替え終えており、身なりが整っている。
いつもの、寝起きのままではない。
ハルモンは、手櫛で髪をまとめると、髪紐を手に取る。
そのままぐるぐる巻いて、縛った。
「ライ君も着替えなよ」
「……ああ」
着替えて食堂に行くと、すでにナギがいた。
ミアと一緒に料理を並べている。
「おはようございます!」
「……おはよう」
「おはよう。ナギちゃん、今日も手伝ってくれてたんだ」
「はい、特にすることもないので……」
「ハルモン様、ナギちゃんはとっても手際がいいんですよ〜! 早く終わったので、デザートまで作っちゃいました」
「へぇ! それはすごいな」
「ふふっ。食後にお持ちしますね」
椅子を引き、ハルモンを座らせる。
その隣に、自分も座った。
(……いつも通りだ)
ナギは、俺とハルモンの向かいに座った。
並べられた食事に手をつける。
少しして、ハルモンが口を開いた。
「ナギちゃんって、ライ君とどこで会ったの?」
「えっと……西の方の山に近い村で。山賊に襲われてたところを、助けてもらったんです」
「……そうだったんだ。今、地方は領主の手が回っていないからな。……大変だったね」
ナギは、小さく頷いた。
「……じゃあ、その後から一緒に?」
「はい。戦い方とか教えてもらってて……」
「……なるほどね」
少し間。
「ライ君らしいね」
俺は答えない。
無言で口の中のものを飲み込んだ。
食べ終わると、ミアが皿を運んできた。
……林檎を煮た料理のようだ。
甘い香りが立ち上る。
「コンポートか! いいねー、これ好き」
ハルモンは早速口に運び、満足げに頷いている。
ナギも一口食べて、笑顔を浮かべた。
……口にする。
……甘い。
「師匠って、甘いものお好きなんですか?」
「…………」
「あんまり好きじゃないみたいだよ」
ハルモンが、顔を覗き込んでくる。
「ライ君、それ僕にちょうだい」
俺は、皿をハルモンの方へ無言で寄せた。
「ありがと。……うん、おいしい」
ハルモンは食べながらにっこり笑った。
ナギは驚いたようにハルモンを見つめている。
ミアは、何故かパンの籠を持ったまま食堂を出て行った。
パンの籠は、まだ半分ほど残っていた。
食事の後、一旦ハルモンの部屋に戻る。
研究所へ向かうため、荷物を準備した。
部屋を出て一階に降りると、ナギとミアが玄関で待っていた。
「それじゃ。ミア、留守番よろしくね」
「はい!」
ミアはにっこり笑った。
「ナギちゃんも、好きに過ごしてね」
「は、はい! ありがとうございます」
「ハルモン様、ライ様、行ってらっしゃいませ!」
ミアが軽く一礼する。
横でナギも、少し慌てながらお辞儀した。
家を後にして、二人で並んで歩く。
「ナギちゃん、いい子だね」
「……ああ」
少し間。
「でもさ」
トーンが変わる。
「ライ君もそうだったけど、服あれしかないの?」
「…………」
「ライ君はそういうの気にしなそうだしねー。自分のことも放置してたくらいだし」
少しだけ考えて。
「……ミアと仲良さそうだし、今度買いに行かせるか」
……何も言えない。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。
次回、『結合』。
来週月曜日の夜8時に更新予定です。
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