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#19触れる理由

※理解できない相手と、離れられない話です。


次の日。


窓から差し込む光で自然に目が覚めた。


隣を見ると、ハルモンはまだ眠っており、規則正しい寝息を立てている。




「………」




そのまましばらく、ハルモンの顔を眺めていた。


手を伸ばし、乱れて顔にかかった金髪を除けてやる。


さらりと、手に感触が残る。


整えると、朝日を反射して光って見えた。




……指先に、まだ残っている。


触れた感触が、消えない。




(……………今、何をした)


(……なんで、触った)


ハルモンは、安心して隣で寝ているのに。


少しいたたまれない気持ちになり、ベッドの上で寝返りを打って、ハルモンに背中を向けた。






しばらくすると、隣で身じろぎをする感覚があった。


目を覚ましたらしい。


俺はゆっくりと体を起こした。




「……おはよー」


「…………おはよう」




ハルモンも体を起こしたが、眠いらしい。


少しぼーっとしている。




そして、唐突に口を開いた。


「変な夢見たな。誰かに頭触られててさ」


「……」


「ああいうの、精神安定に効果あるのかも」




それ以上は、何も言わなかった。












朝の食堂は、いつもより少しだけゆったりとした空気が流れていた。


パンを切りながら、ミアはふと顔を上げる。


(……今日は静かだな)


普段なら、もう少し早い時間から人の出入りがあるけど、今日はどこか落ち着いている。


休日だからだろうか。


そんなことを考えていると、階段の方から足音が聞こえてきた。


ミアは手を止め、そちらを見る。


(……来た!)


先に降りてきたのはライ様。


相変わらず無駄のない動きで、そのまま食堂へ入ってくる。


その少し後ろから、ハルモン様が続いた。


金髪はまとめられているが、どこかまだ眠たげで、少しだけぼんやりしている。


「おはようございます!」


ミアはぱっと笑顔になって声をかけた。


「……おはよう」


「おはよー」


二人はいつもの席に並んで座る。


(……隣)


ミアの目がきらりと光る。


(今日も隣……!)


朝食を運びながら、ちらちらと様子を伺う。


特に変わった様子はない。


いつも通りだ。


でも――


(なんか、ちょっとだけ空気がやわらかい気がする……?)


気のせいかもしれない。


でも、なんとなく、そんな気がした。


ミアはパンの籠を置きながら、さりげなく話しかける。


「今日はお二人ともお休みなんですか?」


「うん。だからこれから買い物に行こうと思って」


その言葉を聞いた瞬間、ミアの手が止まった。


(買い物……)


(……二人で?)


(……これって)


ゆっくりと顔を上げる。


「……お二人で、ですか?」


「うん。材料とかいろいろ足りなくてさ」


あまりにも自然な返答だった。


だが、もはや建前にしか聞こえない。


ミアの中ではもう確定していた。


(デートだ……!!)


思わず口元が緩む。


慌てて咳払いをしてごまかした。


「い、いいですね! 王都はいろんなお店がありますし!」


「新しい店もできてたよね」


「はい! 最近は甘いもののお店も増えてきてて……あ、あの、もしよかったらおすすめも――」


言いかけて、はっとする。


(落ち着け私。押しすぎると引かれる……!)


ミアは一歩引いて、にこりと微笑んだ。


「……楽しんできてくださいね」


「うん、ありがとう」


ハルモン様が素直にそう返す。


ライ様は何も言わないが、特に否定もしない。


(これは完全に……)


ミアはくるりと背を向けて厨房に戻ると、ぎゅっと拳を握った。


(進展してる……!)


胸の前で小さくガッツポーズ。


皿を並べながら、にやにやが止まらない。


(今日は絶対、何か起きる……!)


そう確信していた。














食事の後、身支度を済ませて出かける。


今日のハルモンの服装は、いつもとは少し雰囲気が違っていた。


淡い色の布地が光を受けて柔らかく揺れ、無造作にまとめられた髪もどこか軽やかに見える。


特別なことは何もしていないはずなのに、妙に、目が離せなかった。




その姿を半歩後ろから眺めていると、ハルモンがこちらを振り向き、目が合った。


「……ライ君ってさ、服それしかないの?」


「ある」


「それ昨日も着てたよね」


「……問題はない」


ハルモンは顎に手を当てて少し考えた後、顔を上げてこちらを見た。


「せっかく買い物に来たし、君の服も買おう」


「いらん」


「遠慮しなくていいって」


「いや、遠慮してるわけじゃ」


「行こう。こっちだよ」


ハルモンはそう言うと、スタスタ歩いて行ってしまう。


俺は慌ててその後を追いかけた。


……置いていかれる気がして。





















ここまで読んでいただきありがとうございます。


この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。


次回、『似合う』。

ライ君着せ替え回ですね。


明日の午前中に更新予定です。


よければブクマや評価、コメントなどいただけると励みになります。

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