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#17父

※理解できない相手と、離れられない話です。

次の日の朝。


ハルモンと一緒に食堂に向かい、扉を開けると、見知らぬ男が食卓にいた。


俺は面くらい、その場に立ち尽くす。


ハルモンが気にせず部屋へ入っていくので、慌てて後に続いた。




「おはよう父さん。帰ってたんだ」


「ああ、おはようハルモン。以前の研究資料が必要になって探しにな。……そちらは?」


「ライ君。帰ってくる時に護衛してもらって、そのまま住んでるよ」


「そうなのか。それは、息子が世話になった。……部屋は余っているし、好きに過ごしてくれ」


一瞬だけ、視線がこちらに留まる。




(……いや……もうかなり好き勝手に過ごしている……。それも一緒の部屋で……)


俺は言葉に詰まったが、ようやく絞り出すように、「はい……」と返事をした。


同時に、ハルモンが「実は一緒に寝てる」などと余計なことを言わないことを心から祈った。




食卓に付くと、ハルモンとハルモンの父が話し始める。


「昨日、呼び出されて星読やらされた。専門の部門あるのに。……なんで僕?」


「当たるからだろうな」


「……あれ、嫌い」


「仕方ないな」


少し間。


「……お前は、理解できないものが嫌いだからな」




話を聞き流しながら、俺はハルモンの父をちらりと見る。


見た目は、ハルモンとあまり似ていない。


髪も、目の色も違う。


だが、話し方や考える間など、どこか似ている気がした。


「……おっと。もうこんな時間か。……ハルモン、あまり熱中して寝食をおろそかにするんじゃないぞ」


「はーい。気をつけまーす」


「ライ君も、気にせずゆっくりしていってくれ」


そう言い残すと、ハルモンの父は食堂を出て行った。




俺は息を吐き、胸を撫で下ろした。


何も起こらなくてよかった。




「父さん、急に帰ってきてびっくりしたね」


「……ああ」


「でもよかった。君のことも紹介できたし」




「…………は?」




言葉の意味が、一瞬理解できなかった。




「ん? ライ君、どうかした?」


ハルモンは、そう言って首を傾げる。




俺を何と紹介したつもりだったのだろう。


ハルモンの考えていることが全く理解できず、深いため息が出た。








食堂の扉が閉まると、ミアは思わずその場でくるりと振り返った。


(……今の、見た!?)


もちろん誰もいない。


でも、言わずにはいられない。


だって――


旦那様と、ハルモン様と、ライ様。


男三人で食卓を囲んでいる光景なんて、初めて見たのだから。


しかも、ライ様のあの顔。


さっきから、なんだかすごく緊張していた。


(あれ絶対、ハルモン様のお父上に挨拶する恋人の顔じゃない……?)


ミアは、思わず口元を押さえた。


いやいやいや。


まだ決まったわけじゃない。


でも。


でも――


(だって一緒に住んでるし!)


朝も一緒。


夜も一緒。


帰ってきたら真っ先にハルモン様の部屋に行くし、ハルモン様も当たり前みたいに受け入れてる。


それに何より。


ハルモン様、ライ様がいるとちゃんとご飯食べる。


ちゃんと寝る。


髪もきれい。


肌もつやつや。


(完全に健康管理されてる……!)


ミアは思わず笑いそうになる。


しかもさっき。


「君のことも紹介できたし」


って言ったあとの、ライ様の顔。


(あれはもう、完全に動揺してたよね)


ミアはにやにやしながら皿を持ち上げた。


ハルモン様は、きっと何も考えてない。


あの方は本当にそういう人だ。


でも、ライ様は違う。絶対。


(これは……)


ミアは胸の前で手をぎゅっと握った。


(絶対面白くなるやつだわ。見逃すわけにはいかない)


そして小さく呟く。


「ミア、全力で応援します……!」








食事を終えると、ハルモンは立ち上がった。


「じゃ、行こっか」


「今日も研究所か」


「うん」






屋敷を出ると、王都の朝はもう動き始めていた。


石畳の道を、人の流れが行き交っている。




荷車を押す商人、店を開ける職人、買い物に向かう人々。




この街は基本、歩きだ。


馬車はめったに見ない。


貴族か、大きな荷を運ぶ時くらいだ。




しばらく歩くと、海が見えた。


王都は海沿いの街だから、少し道を外れるだけで水面が見える。


朝の光を受けて、白くきらめいていた。


吹き抜けていく風が心地いい。




「そういえばさ」


隣を歩いていたハルモンが、ふと思い出したように言う。


「バル=ロス倒したんでしょ?」


「……ああ」


「ルーカスの言ったこと、本当だったんだ」


少し嬉しそうに笑う。


「君、ほんとにとんでもないよね」


「大したことはしてない」


「いやいや」


ハルモンは首を振った。


「普通、そんな危険な魔物倒せないよ。しかも単独ででしょ? 君ってほんと規格外だよね」


「……そういうお前も、そうなんじゃないか」


「え? そうかなぁ。そんなことないと思うけど」


そう言うと、ハルモンはしばらく歩きながら考え込んでいた。


「……もっと早くに知っていたらなぁ」


ぽつりと呟く。


「……何が」


「素材だよ」


「……素材?」


ハルモンは小さくため息をつく。


「牙とか爪とか、残ってたんじゃない?」


そう言って、こちらを向く。

完全に研究者の目をしていた。


「薬に使えたかもしれないしさ」


俺はため息をつく。


「お前な……」


「だって、そんな素材滅多に手に入らないよ?」


「知らん」


「もったいないなぁ」


(……やっぱり、分からん)



































ここまで読んでいただきありがとうございます。


この関係がどう転ぶのか、見守っていただけると嬉しいです。


次回、『違和』。


明日の午前中に更新予定です。


よければブクマや評価、コメントなどいただけると励みになります。

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